地方創生とJA 人口減対策に役割発揮

 「静かなる危機」と呼ばれる人口減少は、わが国が直面する最大の脅威だ。特効薬はないが、活力に富み、子育てしやすい環境を地方で整えることは重要な処方箋になる。JAもこの国家的な課題に対して行動し、地域に根差す協同組合の存在感を発揮すべきだ。

 厚生労働省の人口動態統計によると、昨年1年間で生まれた子どもの数は推計で86万4000人、1899年の統計開始以来初めて90万人を割り込んだ。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が2017年に行った予想より2年早い。一方で、死亡数は高齢化の進展で戦後最大の137万人。この結果、人口の自然減は約51万人で初めて50万人の大台を超えた。

 これはまだ序の口にすぎない。社人研の推計人口(出生中位推計)によると、減少スピードは40年代には90万人に加速する。60年の人口は9284万人、2100年には5972万人に減る。人口減は地方の郡部から始まって地方の中核都市に波及。今後、地方から大都市への人材供給が枯渇すると大都市を巻き込んで国全体に広がる。

 人口減少は経済規模の縮小や地域社会の活力低下を招き、生活サービスの維持が難しくなるなど経済・地域・暮らし全般に悪影響が及ぶ。究極的には国としての持続性すら危ぶまれる事態になる。当然ながら、食料生産基盤も大きく弱体化する。国境維持や国土保全、防災にも著しい支障が出る。日本は衰退国家の一途をたどることになる。

 悲劇的シナリオを回避する対策に政府は全力で取り組まなければならない。まず地方の衰退に歯止めをかけることだ。ここの火事を放置し国の危機克服はない。そのために地方に所得と雇用をどう創出するか、その戦略が安倍政権に問われている。

 政府が昨年12月に閣議決定した地方創生第2期総合戦略では、地方と何らかの形で関わりを持つ「関係人口」を拡大し、地方への新しい人の流れをつくることに力点を置いた。結婚・出産・子育てしやすい環境づくりや、多様な人材が活躍できる場づくりも柱に据えた。「田園回帰」や農山漁村との関わりに価値を見いだす若者の動きを踏まえたものだ。今後の施策の具体化に政権の本気度を見たい。

 地方創生でJAの参画を記述した点に注目する。例えば、住民が主体的に地域課題の解決に当たる「地域運営組織」や、集落機能などを集約する「小さな拠点」の形成といった面でJAの役割発揮を求めた。人材育成や障害者の就労支援(農福連携)でも期待を寄せる。

 こうしたJAへの姿勢は、農協改革で“むち”を振るった安倍政権の記憶が消えないJA関係者には違和感もあろうが、本来の評価に回帰してきたとみることもできる。JAは地域なくして存在できない。積極的な取り組みが重要だ。「地域になくてはならないJA」の力を発揮すべき時である。

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