小田安珠さん(2020年ミス日本グランプリ) 人情と美食…地元に感謝

小田安珠さん

 私は東京の日本橋人形町という街で育ちました。小学校は中央区立日本橋小学校。家までの間に、食べ物屋さんがたくさん並んでいます。お店から立ち上る匂いを嗅ぎながらの帰り道が大好きでした。

 私の王道コースというのがありまして、まず魚久さんというお魚屋さんの前で、銀ダラのかす漬けの匂いを嗅ぎます。私はこれが夕飯の食卓に上るとガッツポーズを取って喜ぶくらい好きなんですけど、しょっちゅう食べられるわけではありません。毎日、匂いを嗅ぐことで満足していました。

 もう少し進みますと、玉ひでさんという親子丼の名店が。お昼時はたくさんの方が並んでいます。その列をかき分けるようにして裏の厨房(ちゅうぼう)の方に回ると、甘い鳥の匂いがするんです。

 甘酒横丁に入ると卵焼きの鳥忠さんがあって、玉ひでさんの親子丼とは違う卵焼きの匂いがします。作っている様子をガラス越しにジーッと見ていました。その先の柳屋さんでもたい焼きを作る様子が見えるので、そこでも匂いを楽しみながら見たものです。
 

帰り道のおやつ


 大通りの道端で、干し芋とアンズを売っている人たちがいたんですね。毎日通るものだから、そのおじちゃんと仲良くなって。「食べてもいいよ」と勧められたので「アンズがいい」と言ったら、「さすがにそれは高いから駄目」と断られ、干し芋をもらいました。食べながらお茶屋さんの前に行って、香り高いほうじ茶をもらって。子どもだからできたことですね。家に帰る前におやつは完結。

 日本橋小学校は、1学年が40人くらいの小さな学校でした。同級生には近くのおすし屋さんの息子とか洋食屋さんの息子とか、ずっとこの街で仕事をされてきた家の子が多かったです。隣の席の子は酒屋さんで、その子の家に遊びに行くと瓶のオレンジジュースを出してもらいました。

 うちでは、お祝い事があると必ずすき焼きを食べました。同級生の家でもそうだったようです。街の中に、すき焼きの老舗・今半さんや、すき焼きコロッケのおいしい肉屋の日山さんがあるからなのかもしれません。

 中学、高校、大学の入学祝いは、すき焼きでした。母が作る割り下は少し甘めです。母は宮崎出身なので、甘いしょうゆで育ったからなのかもしれません。お肉、たっぷりのネギ、シュンギク、豆腐、しらたき、シイタケ。火を通して甘くなったネギは、大好きです。肉厚のシイタケをかんで出る汁もたまりません。すき焼きと白米! このセット、最高に幸せですよね。
 

都心でも農体験


 野菜とお米といえば、都心にもかかわらず小学校で農作業の実習をやりました。日本橋小学校は、十思小学校と京華小学校という二つが統合してできました。旧十思小学校の校舎は中央区の施設になり、そこに畑と田んぼが作られました。私たちは2年生で野菜作り、5年生でお米作りをしたんです。

 自分の街で自分たちで野菜やお米を育てたんです。それをみんなで収穫して、調理していただきました。調理実習で教えてくださったのは、地元の料亭の方々。考えてみればすごくぜいたくですよね。

 都心は冷たい環境だと思われがちですけど、日本橋は実はとても人情味のあふれる街なんです。子どもの頃に地域の大人の方と触れ合うことができたことは、大切な思い出ですし、今の生活に役立つ貴重な経験です。私を育ててくれた街に貢献したいと思っています。(聞き手・写真=菊地武顕)

 おだ・あんじゅ 1998年東京都生まれ。慶応義塾大学文学部3年生で考古学を専攻。埴輪(はにわ)の研究をしている。ニュースに、学生キャスターとして出演した経験もある。「外見よりも内面に重きを置いた審査や、プログラムに魅力を感じて」ミス日本に応募した。身長170センチ。将来の夢はアナウンサー。
 

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