三つの信じる力 「正気の島」へこぎ出せ

 JAグループの一員になった君へ──。新型コロナウイルス禍が門出に水を差したね。それでなくても職場の将来は重苦しい。でも傷んだ経済や社会の仕組みを作り直すのに協同組合ほど有効なものはない。農業や農村がずっと続くために、何ができるのか。何をすべきか。一緒に考えていこう。

 「極めて厳しい事業環境にある」。何回もそんな訓示を聞いたことだろう。枕言葉のように「厳しい」を連呼され、気持ちまで縮こまっていないだろうか。大事なのは、現実から目をそらさず、課題解決に立ち向かっていく決意と覚悟だ。

 そのために「三つの信じる力」を持ってほしい。最初は、協同組合の持つ力だ。〈仕事を聞かれて、会社名で答えるような奴(やつ)には、負けない〉。そんな広告コピーがあった。大事なのは仕事の中身。誰かの役に立ち、より良い社会づくりに貢献する。協同組合は、君にそんな舞台を用意している。

 世界は今、グローバル経済が招いた格差と分断の中にいる。そこに新型コロナウイルスの感染拡大で、社会的弱者や家族農家を追い詰める。人間疎外の「狂気の時代」を軌道修正し、「正気の島」へ戻すのは協同組合だと先人は教えた。

 国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」が目指すのも「誰一人取り残さない社会」。国連は、同じ理念を掲げる協同組合を重要なパートナーに位置付けた。その礎を築いた賀川豊彦は「協同組合経済こそ平和への道」とし、総合事業の展開を説いた。ある監査法人は「JA総合事業は最強のビジネスモデル」だという。その強みを最大限発揮するのが創造的自己改革。組合員の要望や社会の変化に対応するため、君の若い感性や斬新な発想力が必要だ。

 次に仲間を信じる力。仕事はチームワークで成り立つ。JA役職員と農家組合員もワンチームだ。農家の営農と暮らしを守るため何ができるか。解は現場にある。でも戦力になるには時間がかかる。元東レ経営研究所社長の佐々木常夫さんは「良い習慣は才能を超える」と教える。他人の意見をよく聴く。整理整頓する。資料や会話は簡潔に。業務を点検し次の改善につなげる。日々の習慣が成長へと導いてくれるという。

 最後は、農業・農村の持つ力を信じること。食料・農業・農村政策審議会の初代会長、故今村奈良臣さんは「農業は生命総合産業であり、農村はその創造の場である」が持論だった。人口減に地方衰退。逆風下だからこそ、食と農の裾野を広げ、新たな価値を創造する仕事はやりがいがあるはずだ。

 「早く行きたければ、一人で行け。遠くまで行きたければ、みんなで行け」。アフリカに伝わることわざである。協同組合の理念がここにある。理想は高く、足元は着実に一歩ずつ。助け合い、力を合わせ、はるかな高みを目指していこう。

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