応援消費 国産愛用運動の契機に

 新型コロナウイルスの感染拡大で農畜産物の販売が苦戦する中、窮状にある農家や産地を支援する「応援消費」が盛り上がってきた。生産サイドに寄り添う消費行動を国産ファン拡大の契機と捉え、多様な手法の活用と現場の思いの発信で、長期的な国産愛用運動につなげよう。

 新型コロナウイルス禍による学校給食の停止や式典・イベントの中止、外出自粛で、牛肉や牛乳、切り花など農畜産物の需要に影響が広がる。家で過ごす時間が長くなり、家庭向けの精米やパスタ、冷凍食品などで買いだめがあったが一時的だ。むしろ飲食店など業務向けの販売低迷が長期化し、打撃が大きい。学校給食の再開の見通しも不透明だ。産地の不安は募る。

 期待されるのは、人や地域を応援するためにお金を使う応援消費だ。発端は東日本大震災とされる。ボランティアなど人的支援だけでなく、甚大な被災や風評被害に見舞われた地域の産品を買って応援する行動が生まれた。以後、度重なる気象災害や地震を受けて広がった。

 多彩なツールが盛り上がりを後押しする。代表格はふるさと納税。出身地や応援したい自治体への寄付が税額控除の対象となり、各地の産品を返礼品で受け取れ、市場は2018年度に5000億円を突破した。新型コロナウイルス禍では産地や事業者の支援に活用されている。

 新たな事業や活動を始めるためインターネットを通じて資金を集めるクラウドファンディングや、消費者と生産者がインターネット上で直接取引するプラットフォームサイトも続々と誕生するなど、新たな商流として勢いづく。

 応援消費は利用者の満足感が支える。「自分の活力になる」「誰かの役に立っている実感を得られる」と9割以上が評価しているとの調査結果がある。価格面のお得感だけでは消費は一時的だ。農家の思いや農業・農村の魅力、生産現場の課題などの情報を発信し共感してもらうことが、地域を訪れる人の増加にもつがなる。新たな経済効果が生まれ、継続的に地方を支える好循環を呼ぶ。大手ふるさと納税サイト運営企業の代表は「返礼品で人気が出たことをきっかけに販路獲得や後継者の確保ができたなど、良い例が全国で出てきている」と指摘する。

 世界は食料争奪の時代に入り、日本が買い負ける場面も増えた。中国での爆発的な感染拡大で同国からの輸入が野菜を中心に停滞した。当たり前のように食料を調達できるといった時代ではない。食料の安定供給は消費者にとって重要な課題だ。

 政府は、今後10年間の農政の方向性を示す新たな食料・農業・農村基本計画に、生産基盤の強化と併せて、消費者に国産を積極的に選んでもらう国民運動の展開を盛り込んだ。この運動につないでいくことを視野に、国産農畜産物と現場の情報に消費者が接する機会を増やそう。行政の後押しも必要だ。
 

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