福岡良子さん(気象予報士) 日本の食 世界に伝えたい

福岡良子さん

 出演している「シブ5時」(NHK)という番組に、「りょうこのお天気旅行」というコーナーがあります。天気と暮らしの関係を探るべく、日本各地へ足を運び、その土地の気象を利用して作られる食材などを取材しています。

 一番印象に残っているのは、2017年に行ったかんぴょうの取材。生産が全国の9割を占める栃木県でロケをしました。
 

ロケで知る魅力


 それまで私は、かんぴょうがユウガオの実から作るということも知らなかったんです。あんなにかわいい花がものすごく大きな実を付けることにびっくりしました。

 実の成長は早くて、2週間くらいでできるんですね。その成長に欠かせないのが、雷雨だったんです。栃木県は有数の発生地で、雷銀座と言われるくらいです。長い時間雨が降るとユウガオの根は腐ってしまうので、雷雨のようにザーッと短い時間に降るのが良いそうです。地表を冷ますことで暑さに弱いユウガオの根を守る役割も果たし、まさに恵みの雨となっているのです。地元では雷のことを「らい様」と呼んで恐れ敬うほど。取材した農家の方も作業前に「らい様」と手を合わせていました。

 ユウガオは6月下旬~8月と収穫期間が短く、期間中は大忙し。午前3時から作業を始め、1個7キロくらいの重い実を、毎日200個ほども収穫するという重労働。しかも皮をむく作業は想像通りの難しさで、農家さんの手さばきに目を奪われました。

 料理もいただきましたが、かんぴょうと卵が入った雷汁がおいしかったです。また、癖がないので、揚げ物や煮物などどんな料理にも合う万能食材だということも教えてもらいました。あまり主役になることはないかんぴょうですが、農家の方の苦労や職人芸を目の当たりにし、もっともっとかみ締めていただこうと思うようになりました。
 

わさび丼に感動


 ロケで各地に行かせてもらうようになり、日本の素晴らしさを実感しています。この素晴らしさをもっと知りたい、世界中の方にもっと知ってもらいたい。その思いから、通訳案内士の資格を取ろうと勉強をしているところです。

 勉強中に、日本には世界農業遺産が多い、ということを知りました。世界農業遺産とは、国連食糧農業機関が重要かつ伝統的な農業を行う地域を認定するもので、全世界で59地域のうち、日本は11地域も選ばれているんです。

 そのうちの一つ、静岡県のワサビを栽培する地域にもおととし、ロケでお邪魔しました。

 観光地かと勘違いするほどきれいな場所で、湧き水が本当に涼やかでした。肥料や農薬をほとんど使わず、湧き水に含まれる養分でワサビを栽培しているんです。その水はいろんな植物や動物のすみかにもなっていました。さらに、山間部に造られる棚田は保水能力が高く、川の氾濫や洪水から下流の地域を守る役割も果たしています。全てにおいて理にかなっていることを知り、感動しました。

 そこで食べた人生初のわさび丼のおいしかったこと。ワサビとかつお節を載せてしょうゆを掛けただけなのに、ご飯をいくらでも食べられる。素材のおいしさに勝るものはないんだと実感しました。

 日本各地の豊かな自然と人間の知恵とが合わさって生まれる食材たち。日々そんな食材をいただけて、改めて日本人で良かったと感じています。通訳案内士になり、この日本食の素晴らしさを世界中の方々に伝えていきたいです。(聞き手=菊地武顕)

 ふくおか・りょうこ 1986年兵庫県生まれ。同志社大学在学中に気象予報士の資格を取得し、テレビでの仕事を始める。卒業後、局でのサポート業務や地方局でのお天気キャスターを経験。趣味は旅行、マラソン、マリンスポーツ、スノーボードなど。現在、「ニュース シブ5時」(NHK総合)にレギュラー出演中。

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