一瞬の風に秋の気配を感じる

 一瞬の風に秋の気配を感じる。北国の山裾では、アキアカネが飛び始める頃だろうか▼この気配を俳諧では「秋隣」という。〈あきどなり〉と読み、夏の季語である。本来は、立秋に入る前までの言葉だが、温暖化の影響か、葉月の暑い最中に時折吹く涼風が、最初に秋を感じさせるようになった。〈松が根に小草花さく秋隣〉(子規)▼「秋」の意味にうなる。元は、「禾」と「亀」と「火」を組み合わせた。「禾」は稲を表し、「亀」は虫を表す。秋になって大発生するイナゴを火で焼き殺して豊作を祈る儀礼を指す(白川静著『常用漢字』)。後に「亀」は省略され、今の字となった。害虫に食われないで豊かに実ることへの農民の思いがこもる▼焼き殺したい大発生のバッタである。アフリカと南西アジアでは、サバクトビバッタが暴れまくる。風に乗って150キロも移動し、農作物を食い荒らす。「4200万人が食料危機にひんしている」(FAO)という。南米ではミナミアメリカバッタがトウモロコシを襲い、中国はクルマバッタモドキ類の食害に苦慮する。先月末、本紙が報じていた▼異常気象、新型コロナ、バッタの大発生と、世界農業に試練が相次ぐ。食べられるのに捨てる「食品ロス」は、もってのほか。今更に食の大切さを思う。

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