菅政権への注文(中) 急進改革の修正 農家目線で成果着実に

 農政で官邸主導を貫くのか、それとも与党・農水省の調整を尊重する穏健路線か。菅義偉首相がどんなカラーを出すか、最初の100日間を注視する。求められるのは、改革パフォーマンスより成果の積み上げだ。

 「官邸農政」とも評された安倍前政権の農政運営を、ベールの向こうから差配したのが官房長官だった菅首相である。その菅首相が既得権益、省庁の縦割り、あしき前例主義の打破と規制改革に強い意欲を示している。人気取りはしないとの決意の表れにも見える。農業関係者のまなざしに警戒感が浮かぶのはむしろ自然であろう。

 規制改革は政権に力がなければ実現できない。菅首相が官邸主導スタイルを継承すると容易に想定される。問題は、その矛先が農業に向かうかどうかだ。前政権は後期に穏やかな農政運営に転じたが、菅首相はどう出るか。農政での立ち位置と要所の人事に注目したい。野上浩太郎農相は官房副長官を経験し堅実な仕事ぶりで首相の信頼が厚いとされる。農家目線を大事にした農政運営に徹するべきだ。

 一方で、農政の路線はすでに定まっている。その枠組みは、前政権が進めた規制改革色の強い一連の農政改革と、今年度から実践が始まった食料・農業・農村基本計画である。同計画は産業政策と地域政策を農政の「車の両輪」に位置付け直し、中山間地域や家族農業にも配慮した。事実上、急進改革を軌道修正した形だ。菅政権が継承すべき農政が、この基本計画路線であることは言うまでもない。

 個別政策では新型コロナウイルス禍への対応が最優先だ。感染対策と経済活動との両立を目指すのに異論はないが、経済回復には相当時間がかかると見込まれる。特に外食産業やインバウンド(訪日外国人)を含む観光は食の巨大な実需を形成し、深刻な打撃が長期化すれば農業にも連鎖する。牛肉や花き、高級果実、茶、鶏卵などの品目や、秋以降、脱脂粉乳の在庫積み増しも心配だ。マーケットに機動的に対応する需要喚起対策と、経営安定対策の両面からの支援を引き続き求める。

 出来秋を迎えた米の需給安定対策も待ったなしだ。民間の取り組みを支援する政府の知恵が必要だ。食料自給率の向上や転作誘導に向けて飼料用米振興財源の確保に万全を期さなければならない。さらに言えば、米どころ秋田出身初の首相、富山選出の農相として、米の輸出拡大にレガシー的成果を期待する。

 農協改革では、准組合員への利用規制の在り方を来年4月以降検討し判断する。昨年9月に農水省が公表した調査結果では、准組利用が正組合員の支障になっている事実はなかった。自民党は昨年の参院選で「組合員の判断に基づく」との公約を掲げ、JAグループの組合員調査結果では9割が利用規制は必要ないと回答した。この経過を踏まえ、政治問題化させることなく粛々と判断すべきである。

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