野上農相が就任会見 基盤強化、輸出に意欲 規制改革「具体的指示なし」

就任会見に臨む野上農相(17日、東京・霞が関で)

 野上浩太郎農相は17日、就任会見に臨み、自らの農政運営方針について「産業政策と地域政策を車の両輪とし、食料自給率の向上と食料安全保障の確保を図っていきたい」と述べた。農林水産物・食品の輸出促進を「最重要課題」と位置付けると同時に、生産基盤の強化を進める方針も強調。菅義偉首相が意欲を示す規制改革を巡っては、首相から農業分野で具体的な指示は受けていないことを明らかにした。

 農相は、力を入れたい政策として、産業政策で農地中間管理機構(農地集積バンク)による農地集積・集約化やスマート農業の推進、地域政策で農福連携などを示した。「農林水産業の成長産業化と地域の活性化をさらに進める」とも述べた。

 菅首相も地方活性化策の柱に位置付ける輸出の促進は、2030年に5兆円とした目標の達成に向けて「あらゆる手段を講じる」と表明。新型コロナウイルス禍で輸出額は伸び悩むが、収束後を見据えた商談などに引き続き力を注ぐという。主力の牛肉では、輸出向けの処理施設を整備しつつ、海外でも進む「内食化」に対応した販売促進を進める意向を示した。

 農相は「食料の安定供給は国家の最も基本的な責務」との考えも強調した。カロリーベースで19年度に38%と低迷する自給率を高めるため、新たな食料・農業・農村基本計画に基づき、麦・大豆の増産や、国産消費拡大運動などを推進する方針を提示。経営規模などにかかわらず生産基盤を強化する考えも表明した。

 菅首相からは輸出促進と農林水産分野の改革を進めるよう指示を受けたと説明した。ただ、「具体的に何かの規制改革という話はなかった」とも述べた。農相自身としては、畜舎に関する規制の見直しなど、政府の規制改革実施計画に盛り込まれた項目について検討していく方針を示した。

 20年産米については、「作柄などによっては需給が緩和する可能性がある」として、国内消費や輸出の拡大に取り組むと表明した。「自らの経営判断で需要に応じた生産販売の着実な推進が米政策の基本」とした上で、「どういう対策ができるかしっかりと検討していきたい」とも述べた。

 当面の重要課題となるコロナ対策では、国産農林水産物の需要喚起に力を注ぐ方針を示した。1次・2次の合計で約6100億円を措置した20年度補正予算の早期執行に努めるとした。
 

若手農家の思い形に JA自己改革「進展」


 野上農相は、30代前半の県議時代の地元若手農家との意見交換を振り返って「熱い思いを聞いた」と述べ、その思いに応える農政を進める考えを提示。「一つ一つ課題を丁寧にやっていきたい」として、農林水産物・食品の輸出拡大や生産基盤の強化などを着実に進める考えを示した。

 農協改革については、「農水省は昨年9月にJAグループの自己改革は進展と評価し、継続を促している」と説明した。来春、農協法改正5年後の見直しや准組合員の事業利用規制の在り方の検討が始まることを巡っては「JAグループや規制改革推進会議とも議論し、検討を進めていきたい」と述べた。信用事業などの経営環境が厳しくなっていることを踏まえ、経済事業の収益力向上などによる経営の持続性確保が課題だと指摘した。

 通常国会で審議入りできなかった種苗法改正案については「日本の強みの知的財産を守り、地域ブランドの産地形成を後押しできる」と必要性を指摘。国会審議に向けて準備を進めるとした。

 加工原料乳生産者補給金の交付対象を広げた生乳流通制度改革については、一部の酪農家による“いいとこどり”を問題視した。農水省がルール違反の事例集を作成したことを踏まえ、「制度の適正な運用で酪農家の経営安定を図る」と強調した。

 江藤拓前農相が退任前に提起した同省の組織再編については、野上農相も引き継ぐ方針を示した。①輸出②畜産③耕種農業──を軸に、9月末が締め切りの2021年度組織定員要求に向け、検討していくとした。

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