[米需給の危機](下) 56万トン減の衝撃 産地努力だけでは…

例年より早く生産者への呼び掛けが必要と考える市の職員ら(福島県喜多方市で)

 全国で56万トン減──。16日、農水省が示した2021年産主食用米の適正生産量の減少幅に、福島県水田畑作課の担当者は「ショッキングな数字だ」と戸惑いを隠せない。減少率は1割近くで、それに基づき県の生産目安を設定する場合、面積換算で4000ヘクタール強の減産が求められる。
 

呼び掛け急ぐ


 「実際そこまで減らせるのか」。主食用米を大規模に切り替えるには地域・生産者の話し合いの期間が必要となる。早期の計画策定を呼び掛けるため、県は目安の提示を例年より1カ月前倒しする判断をした。

 20年産で県は、新型コロナウイルス対策の地方創生臨時交付金を使って飼料用米の複数年契約に10アール当たり5000円の独自助成を打ち出し、飼料用米を前年より310ヘクタール積み増した。備蓄米も拡大させ、主食用米の作付面積の減少幅は、北海道に次ぐ1200ヘクタール。生産目安に近い水準まで抑えられた。だが21年産はこれ以上の対応が求められる。

 需給緩和の危機感は市町村に広がり始めた。会津「コシヒカリ」の産地の喜多方市は、主食用と飼料用などの米の収入試算を示し、非主食用米への転換を呼び掛けるちらしを作成。11月に生産者に配布する準備を急ぐ。

 課題は農家の手取りだ。国や県などの助成金を最大限活用し、多収品種で大幅な増収を実現すれば、飼料用米の収入は主食用並みになる。だが「コシヒカリ」で切り替えると、10アール2万円程度減収する見込み。市農業振興課は「国の支援策が示されないと転換を呼び掛けづらい」とこぼす。
 

壁は不公平感


 JA主導でこの局面を乗り切ろうとする動きもある。富山県のJAみな穂は、非主食用米の共同計算方式を、目安に沿った作付けの要にする。水田面積が約5000ヘクタールの管内を「1圃場(ほじょう)」と捉え、備蓄米や米粉用米、輸出用米の用途別の生産量をJAが事前に調整して生産者に配分。交付金を踏まえ、いずれを作付けしても手取りが同じ水準になるよう調整する。「転作が進まない理由は不公平感だ。それがなくなれば、需要に基づいて生産できる」(営農部)と考える。

 麦・大豆の作付けは「地域営農とも補償事業」を活用し、水田の円滑な受委託を進めたブロックローテーションで、機械化体系を整える大規模生産者に集約する。生産者からの評価を積み上げ、JAの米集荷率は90%を超える。管内の20年産主食用米の作付けは生産目安以内になった。

 21年産の転作で増加を見込むのが輸出用米だ。販売先の大手米卸・神明から取引ニーズがあると言われ、取り組みを拡大する。ただ「輸出用米などの非主食用米は主食用米より収入が減る課題がある」(同)という。

 米需給の均衡は産地の大幅な作付け抑制が不可欠だが、かつてない10万ヘクタールの規模で主食用米から転換するには、現状、国からの支援は乏しい。稲作経営や地域農業を維持するため、支援の充実を求める声が高まっている。(玉井理美、音道洋範が担当しました)

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