[未来人材] 35歳。乳牛育成牧場引き継ぎ 農業体験施設を運営 牛から癒やし感じて 千葉市 川上鉄太郎さん

市の乳牛育成牧場を引き継ぎ、観光牧場に再生させた川上さん(千葉市で)

 千葉市が若葉区で52年間運営してきた乳牛育成牧場を引き継ぎ、観光牧場として10月下旬に生まれ変わらせたのが、千葉牧場の社長、川上鉄太郎さん(35)だ。子牛を預かって乳牛に育てる機能は残しつつ、地域農家と連携した収穫体験などを加え、都市住民が気軽に農業に触れられる施設に再生する。

 横浜市で生まれ、東京都内で育った川上さんは、これまで農業とは無縁だった。英国のビジネススクールでの3年間の留学を経て、2011年から4年間、経営コンサルタントとして、主に飲食店やJAなど第1次産業に関わる企業の相談業務に携わった。

 起業後、いくつもの業務をこなす中で、東京の一極集中に疑問を抱くようになった。

 東京はビジネスには便利だが、行き過ぎた競争・消費社会が生まれていると感じた。そうした企業の競争原理に合わずに苦しむ人を何人も見てきた。「東京に住む人が“心のスイッチ”をオフにできる場所をつくりたい」と思っていた時、千葉市が乳牛育成牧場を民営化し、観光牧場として運営する業者を公募しているのを知った。

 知らせてくれたのは、今は牧場の共同出資者となっている「成田ゆめ牧場」(成田市)の秋葉秀威代表だ。秋葉代表とは、英国のビジネススクールで学んでいた時に同じ寮で暮らし、ほぼ同じ授業に出席していた。帰国後は別々の道を進んだが、連絡は取り合っていた。

 秋葉代表は牧場の情報だけでなく、酪農のことを何も知らなかった川上さんに、ノウハウを伝授してくれた。川上さんは「偶然出会った2人が、まさか同じ仕事をするとは」と驚く。

 新たな牛舎は神社の境内をイメージした。参道から本殿を見上げるような形で運動場と牛舎を配置した。新しい牧場は、キャンプやバーベキューなどが楽しめる観光エリアのほぼ全ての場所で、牛を眺められる。近隣農家と連携した収穫体験も視野に入れる。

 「東京から車で1時間で来られるなら、週末に牧場に来て牛を眺めて、また明日から頑張ろう、と日常に戻れる。乳牛の育成機能は続けながら、都市に住む人の考えが変わる場所にもしていきたい」と展望する。
 

農のひととき


 牧場を始めてから、牛が同じ場所でのんびり過ごしていることに気付いた。競争社会の東京の暮らしとはまるで反対だ。神社の社殿をイメージして建てた牛舎では、牛が「神様」のような存在に感じられる。

 老朽化した牛舎にはおがくずもなかった。おがくずを敷いた新しい牛舎で牛が穏やかな表情をしているのを見ると、農業に関わっていることに喜びを感じる。心がオフになる瞬間だ。
 

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