令和の農業像 先端技術 用途広げよ 北海道大学農学部教授 野口伸

野口伸氏

 コロナ禍で農業の抱える問題としてよく取り上げられることに、外国人技能実習生の入国制限措置により労働力が確保できないことがある。農業における外国人労働者のうち、9割の約2万8000人が「技能実習生」であり、その数は年々増加し、日本農業にとって欠かせない労働力となっている。
 

コロナ禍教訓に


 農水省は、その代替人材の雇用を確保する上での支援事業を緊急的に実施しているが、今回のパンデミック(世界的大流行)は、日本農業が技能実習生に大きく依存し、その依存率が増え続けることに対する警鐘と言える。その点で、省力化・省人化に威力を発揮するスマート農業には期待大であろう。

 トラクターや田植え機が無人で作業を行い、ドローン(小型無人飛行機)が農薬散布・肥料散布を効率的に行う。畦畔(けいはん)の草刈りも自動化し、これら先端技術をうまく使いこなせば労働力削減効果と収益増が可能になる。
 

耕種では限定的


 他方、現在のスマート農業に戸惑いや落胆の声も耳にする。「高価だ」「中山間地向けの機械・システムが少ない」「作業の種類が少ない」「使える作目が少ない」「さまざまな機械・サービスはあるが、どれが良いか分からない」などである。

 スマート農業を専門としている私も、これら意見に同感するところは多々ある。現在のスマート農業の主要技術は、内閣府が実施した研究開発プログラムSIP「次世代農林水産業創造技術」(2014~18年度)がけん引・社会実装したと言っても過言でない。

 SIPで開発した技術は「スマート水田農業」とトマトを対象にした「スマート施設園芸」である。要するに、水田農業はスマート農業技術がラインアップされているものの、畑作、野菜、果樹についてはまだこれからである。

 すなわち、耕種農業のスマート化は限定的と言わざるを得ない。特に野菜・果樹の収穫・運搬作業はいまだ人手に頼っている。現在、キャベツ、タマネギの加工・業務用の収穫・集荷作業の自動化技術の開発が取り組まれているが、生鮮用はハウス内トマト、アスパラガス、ピーマンが実用化の緒に就いたところで、露地野菜はほとんどない。果樹はさらに遅れており、このコロナ禍を教訓に今後の進展に期待したい。

 スマート農業は技術開発と普及が同時に急速な勢いで進んでいる。昭和30年代は機械化が食料増産に大いに貢献したが、令和時代はスマート化が日本農業に大きな変革をもたらすことになる。スマート農業が本格的に農村に入ってまだ5年に満たない。農家の方々の上述の厳しいコメントは必ず克服されるが、これからもユーザーの立場から地域の普及センター、JA、農機ディーラーなどに意見・要望することが地域に適合したスマート農業を創り上げる上で重要なことである。

 のぐち・のぼる 1990年北海道大学大学院博士課程修了。農学博士。同年同大学農学部助手、97年助教授、2004年より現職。19年3月まで内閣府SIP「次世代農林水産業創造技術」プログラムディレクター。スマート農業研究に従事。

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