鳥インフル福岡で 香川以外は今季初 兵庫も疑い
2020年11月26日

鳥インフルエンザウイルスの検出を受けて防疫活動が進む発生農場(福岡県提供)
農水省と福岡県は25日、同県宗像市の肉用鶏の農場で鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。今季9例目で、福岡県では初めての発生となる。県は同日早朝から、この農場が飼育する約9万3500羽の殺処分を開始。移動制限区域などを設置し、周辺では車両消毒などの防疫措置を始めた。また農水省は同日、兵庫県淡路島内の養鶏場で簡易検査陽性の鶏を確認したとして、ウイルスの遺伝子検査を進めていることを明らかにした。
福岡県によると、24日午後1時40分、発生農場が死んだ鶏の増加を県中央家畜保健衛生所に通報。農場には12棟の開放鶏舎があり、死亡鶏が見つかったのはこのうち1棟だった。農場での簡易検査で午後4時30分に10羽中9羽が陽性と判明。同衛生所で25日、高病原性の疑いがあるH5亜型の疑似患畜と確認した。
この農場の半径3キロ圏内の移動制限区域には、養鶏農家1戸が1万7000羽を飼育。半径3~10キロ圏内の搬出制限区域内では、6戸が計12万4000羽を飼う。
農水省は25日、鳥インフルエンザ防疫対策本部を開催。野上浩太郎農相は「既に発生した県だけでなく、全都道府県を通じて飼養衛生管理基準の順守を指導していきたい」と強調した。
今季の高病原性鳥インフルエンザはこれまで、香川県内の養鶏場で1~8例目が発生している。
感染が確定すれば福岡県では初、九州全体では約4年ぶりの発生となる。関係団体やJAグループは感染拡大を防ごうと、緊張感を高めている。
JAグループ福岡は25日、家畜伝染病対策本部幹事会を開いた。委員ら5人が集まって発生状況や経過を共有。十分な情報収集や、県から人的支援の要請があった場合の対応などを確認した。
発生農場で飼う鶏の一部は、トリゼンフーズ(福岡市)の銘柄鶏「華味鳥(はなみどり)」として、出回る予定だった。
福岡県養鶏協会の深町敏生常務は、県内で高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜が見つかったことを受け、「(香川県の事例があり)気を引き締めていた直後の発生だ。正直言って驚いた」と漏らす。
会員の農家らは「覚悟はしていた。自分たちでできる対策を徹底していく」と受け止めているといい、深町常務は「冷静に対応するように農家に伝えている」と話す。
同協会は、福岡県の農家28戸や飼料メーカーなど養鶏関係者が加盟する。鶏舎敷地内への石灰散布や、防鳥ネットに破れがないかの確認をするよう会員に通知。「緊張感を持ちながら予防対応してほしい」としている。
農研機構は25日、今月5日に香川県三豊市、8日に東かがわ市で発生を確認した今季1、2例目の高病原性鳥インフルエンザウイルスが、昨年冬に欧州連合(EU)で流行したウイルスとほぼ同じであることをに明らかにした。10月に北海道紋別市で野鳥のふんから見つかったウイルスともほぼ同じだったことから、渡り鳥が海外から持ち込んだとの推測を強める結果が出た。
今季1、2例目の農場の死亡鶏から分離した鳥インフルエンザウイルスは、H5N8亜型の高病原性と確認。両ウイルスは99・5%以上同じ遺伝子だった。2019年冬にEUの家禽(かきん)や野鳥から分離したウイルスとは、香川県の2農場のウイルスを比べたところ、98・4%以上の高い相同性があったという。
動物衛生研究部門は、渡り鳥がEUからウイルスを運んできたと推定する。香川県の2農場のウイルスと、北海道紋別市で10月に見つかったウイルスを比べたところ、99・1%合致した。そのため、ウイルスはEUから渡り鳥の営巣地であるシベリアに運ばれて、渡り鳥の間で拡散された後、日本に運ばれたとみている。
H5N8亜型のウイルスは今季世界的に拡大しており、今月だけでも10カ国で確認されている。こうした状況ついて、同部門越境性感染症研究領域では「マガモなどの渡り鳥は鶏と違って、感染してもすぐに死ぬわけではない。野鳥が感染した状態で排せつを続けるなどして、ウイルスが拡散しているのではないか」と推測する。
今回解読した遺伝子情報は、近日中に公共遺伝子データベースで公開する。同部門は今後、ウイルスの家禽への感染性や、ウイルス排せつなどを精査していく予定だ。
インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3型があるが、鳥インフルエンザはA型インフルエンザウイルスが引き起こす疾病だ。日本では高病原性鳥インフルエンザと低病原性鳥インフルエンザ、鳥インフルエンザの三つに分類している。
発生が疑われる養鶏場を調べる場合、簡易検査でA型インフルエンザウイルスかどうかを判定する。A型の場合、その後の家畜保健衛生所などによる遺伝子検査で、H5亜型、H7亜型など高病原性が疑われれば、疑似患畜として殺処分を始める。その後、詳細な遺伝子分析により、さらに詳しくウイルスの型が確定する。
福岡県によると、24日午後1時40分、発生農場が死んだ鶏の増加を県中央家畜保健衛生所に通報。農場には12棟の開放鶏舎があり、死亡鶏が見つかったのはこのうち1棟だった。農場での簡易検査で午後4時30分に10羽中9羽が陽性と判明。同衛生所で25日、高病原性の疑いがあるH5亜型の疑似患畜と確認した。
この農場の半径3キロ圏内の移動制限区域には、養鶏農家1戸が1万7000羽を飼育。半径3~10キロ圏内の搬出制限区域内では、6戸が計12万4000羽を飼う。
農水省は25日、鳥インフルエンザ防疫対策本部を開催。野上浩太郎農相は「既に発生した県だけでなく、全都道府県を通じて飼養衛生管理基準の順守を指導していきたい」と強調した。
今季の高病原性鳥インフルエンザはこれまで、香川県内の養鶏場で1~8例目が発生している。
「冷静に…」防疫を徹底 福岡
感染が確定すれば福岡県では初、九州全体では約4年ぶりの発生となる。関係団体やJAグループは感染拡大を防ごうと、緊張感を高めている。
JAグループ福岡は25日、家畜伝染病対策本部幹事会を開いた。委員ら5人が集まって発生状況や経過を共有。十分な情報収集や、県から人的支援の要請があった場合の対応などを確認した。
発生農場で飼う鶏の一部は、トリゼンフーズ(福岡市)の銘柄鶏「華味鳥(はなみどり)」として、出回る予定だった。
福岡県養鶏協会の深町敏生常務は、県内で高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜が見つかったことを受け、「(香川県の事例があり)気を引き締めていた直後の発生だ。正直言って驚いた」と漏らす。
会員の農家らは「覚悟はしていた。自分たちでできる対策を徹底していく」と受け止めているといい、深町常務は「冷静に対応するように農家に伝えている」と話す。
同協会は、福岡県の農家28戸や飼料メーカーなど養鶏関係者が加盟する。鶏舎敷地内への石灰散布や、防鳥ネットに破れがないかの確認をするよう会員に通知。「緊張感を持ちながら予防対応してほしい」としている。
ウイルス渡り鳥拡散か 欧州由来と酷似 農研機構
農研機構は25日、今月5日に香川県三豊市、8日に東かがわ市で発生を確認した今季1、2例目の高病原性鳥インフルエンザウイルスが、昨年冬に欧州連合(EU)で流行したウイルスとほぼ同じであることをに明らかにした。10月に北海道紋別市で野鳥のふんから見つかったウイルスともほぼ同じだったことから、渡り鳥が海外から持ち込んだとの推測を強める結果が出た。

動物衛生研究部門は、渡り鳥がEUからウイルスを運んできたと推定する。香川県の2農場のウイルスと、北海道紋別市で10月に見つかったウイルスを比べたところ、99・1%合致した。そのため、ウイルスはEUから渡り鳥の営巣地であるシベリアに運ばれて、渡り鳥の間で拡散された後、日本に運ばれたとみている。
H5N8亜型のウイルスは今季世界的に拡大しており、今月だけでも10カ国で確認されている。こうした状況ついて、同部門越境性感染症研究領域では「マガモなどの渡り鳥は鶏と違って、感染してもすぐに死ぬわけではない。野鳥が感染した状態で排せつを続けるなどして、ウイルスが拡散しているのではないか」と推測する。

ウイルス型 三つに分類
インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3型があるが、鳥インフルエンザはA型インフルエンザウイルスが引き起こす疾病だ。日本では高病原性鳥インフルエンザと低病原性鳥インフルエンザ、鳥インフルエンザの三つに分類している。
発生が疑われる養鶏場を調べる場合、簡易検査でA型インフルエンザウイルスかどうかを判定する。A型の場合、その後の家畜保健衛生所などによる遺伝子検査で、H5亜型、H7亜型など高病原性が疑われれば、疑似患畜として殺処分を始める。その後、詳細な遺伝子分析により、さらに詳しくウイルスの型が確定する。
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コロナ特措法改正 補償が実効確保の鍵に
政府は、新型コロナウイルス対策の特別措置法改正案を18日召集の通常国会に提出し、早期成立を目指す。休業と財政支援、罰則のセットが柱で、実効性が鍵を握る。農家を含め幅広で十分な補償の明確化が必要だ。罰則は私権制限との兼ね合いで慎重を期すべきだ。国民の命を守る視点で徹底審議を求める。
特措法改正論議に際し、現行法の問題点と、この間の拙劣な政府対応を指摘しておきたい。
日本で最初の新型コロナ感染者が確認されてから15日で1年。政府の後手後手の対策やGoToキャンペーンなどちぐはぐな対応も重なり、感染終息どころか2度目の緊急事態宣言発令に追い込まれた。昨年11月ごろから続く第3波は、全国的に医療体制の逼迫(ひっぱく)を招き、失業や自殺者の増加など負の連鎖も止まらない。感染拡大をここで止めることができなければ、暮らしと雇用・事業の破壊、医療崩壊、経済の失速へと一直線に向かいかねない。
現行法では、飲食店などへの営業時間短縮や休業、外出自粛などは要請で、強制力を持たない。経済的補償も措置されていない。特措法の対象にならない遊興施設などへは協力依頼しかできない。国民の自覚と協力に頼らざるを得ないのが実情だ。
国と自治体の役割分担や司令塔機能のあいまいさも混乱に拍車を掛けた。法律の立て付けでは、都道府県知事に感染防止策の権限を持たせ、政府は総合調整をすることになっているが、危機感の共有や連携が十分だったとは言い難い。緊急事態宣言を発令するのは首相だが、専門家の調査・分析に基づく丁寧な説明が尽くされたか疑問だ。発信力も弱い。経済回復や東京五輪・パラリンピックなど国家的行事を優先し、判断の遅れや対策の不備はなかったか。
さらに公立病院に偏重した感染者の受け入れ態勢、広がらないPCR検査など、浮き彫りになった感染防止策の問題点も洗い出し、検証した上で特措法改正論議を深めるべきだ。
検討されている改正案では、緊急事態宣言下で知事は店舗に休業を「命令」できるようにし、違反すれば過料を科す。宣言発令前の予防的措置も設ける。時短営業や休業に応じた事業者への財政支援の規定も書き込む考えだ。補償することを明確化し、休業店舗などへの直接補償にとどまらず、食材納入業者や農家など関係者に広く補償すべきだ。感染防止の実効確保は、事業継続可能な補償が前提である。営業の自由など私権制限に踏み込む内容なだけに、罰則の必要性や補償とのバランスを含め慎重な議論を求める。
政府は通常国会に感染症法改正案も提出し、入院を拒否した感染者への罰則規定を盛り込む方向だ。コロナ対策に名を借りた厳罰化が進めば、新たな偏見や差別につながりかねない。
なにより、政治に信がなければ、どんな法改正をしても国民の理解は得られない。
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2021年01月16日

「BUZZ MAFF」 Jリーグとコラボ動画 若者に農業PR 農水省
農水省は15日、公式ユーチューブチャンネル「BUZZ MAFF(ばずまふ)」で、サッカーJリーグと連携した動画の投稿を始めた。地域の農業への理解や関心を深めてもらうため、Jリーグチームの行う農林水産業の取り組みを同省職員の「ユーチューバー」が発信する。第1弾としてJ2の松本山雅FC(長野県)、J3の福島ユナイテッドFC、ガイナーレ鳥取との動画を投稿した。
「ばずまふ」は、職員の個性や発想を生かした動画を投稿し、農業への関心が薄い若者を含めて広く情報を発信している。 現在、動画の総再生回数は620万回以上。スポーツチームと連携してPRに取り組むのは初めて。
松本山雅FCと連携した動画では、黒ずくめのばずまふユーチューバーが登場。休耕地で地域の住民と連携して1トンの青大豆を生産する取り組みを紹介し、青大豆を使った新しいスイーツの開発に挑戦する。
選手が生産した農産物を販売する「農業部」がある福島ユナイテッドFCとの動画では、選手が自ら作った米をPRする。東北農政局の職員が米を食べ、自作の応援ソングも披露する。ガイナーレ鳥取と連携した動画では、中国四国農政局の職員が、チームの職員と地域の休耕地を利用して芝生を生産・販売する取り組みについて語り合う。
今後も、全国のチームと連携した動画を配信していく。同省は「農業に取り組むクラブは他にもある。地域の農業への理解が深まれば」(広報評価課)と期待を寄せる。
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2021年01月16日
〈百日の説法屁(へ)一つ〉
〈百日の説法屁(へ)一つ〉。菅首相が昨年12月14日の夜、8人で会食したとの報に接し頭に浮かんだことわざである▼100日にわたり仏の教えを説いた坊さんがうっかりおならをしたことで、ありがたみが台無しになったという話。長い間の努力もわずかな失敗で無駄になることの例えである▼首相はこの日「GoToトラベル」の全国一斉停止を発表した。遅きに失したとはいえ、コロナ感染防止優先へとかじを切る姿勢を示したように見えた。その直後の会食。政府が「原則4人以下で」と呼び掛けているのを尻目に、である▼今、国会議員の会食が問われている。首相が批判された後も大人数でのそれが相次いで発覚。各党は飲食を伴う会合の自粛などを呼び掛けている。きょう召集の国会に政府は、コロナ特措法などの改正案を提出する。時短営業の要請に応じない事業者などへの罰則を設けるという。〈身をもって範を示す〉。松下幸之助の言葉である。「(そういう)気概のない指導者には、人びとは決して心からは従わない」(『松下幸之助一日一話』)▼感染対策に強制力を持たせる決定を国会が下すのであれば、自らを厳しく律していると分かる形で示すことが肝要である。そうでなければ立法府への国民の信頼が揺らぎ、法案への支持は得られまい。
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2021年01月18日

ゴロゴロ具材のどさんこ餃子 北海道岩見沢市
北海道岩見沢市の「ゴロゴロふぁーむ」が製造・販売する冷凍ギョーザ。原料は北海道産にこだわった。
皮は岩見沢産小麦「キタノカオリ」を中心に、道産小麦をブレンド。香り豊かでもちもちした食感が特徴だ。道内のブランド豚「留寿都豚」を大きめに切った粗びき肉を使い、野菜も大きく切ってゴロゴロ感を出している。
味は少し甘めで塩味とのバランスが良く「一度食べたら病みつきになる」と評判だ。ニンニクを使っていないため、人と会う前に食べても気にならない。
1袋(15個、375グラム)780円。同社の他、岩見沢観光物産拠点センターiWAFO(イワホ)で販売。問い合わせはゴロゴロふぁーむ、(電)0126(22)5666。
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2021年01月13日
[新型コロナ] 緊急事態追加発令 7府県、栃木・福岡も 政府決定
政府は13日、新型コロナウイルス感染症対策本部を首相官邸で開き、コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象に栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県を追加することを決めた。発令済みの首都圏4都県と合わせ11都府県に拡大。発令地域の人口は7000万人超で、飲食店への営業時間短縮要請による農産物の需要減少などの影響が広がる可能性がある。
全国拡大には慎重
首都圏4都県以外の都市部でも感染拡大が止まらないことを踏まえた。……
2021年01月14日
農政の新着記事

20年産米販売 家庭向けもブレーキ 10、11月支出額 過去20年で最低
2020年産米の販売が低迷している。新型コロナウイルス下で業務用需要の苦戦が続き、頼みの家庭用需要も勢いを失っている。10、11月の米の家計支出額は過去20年で最低水準だった。緊急事態宣言の再発令で、販売環境は不透明さが強まる。需給の均衡に向けて、需要に応じた生産だけでなく消費喚起対策が求められる。(玉井理美)
総務省の家計調査によると、2人以上世帯の米の支出額は10月が前年比10・8%減の2604円、11月が同4・7%減の1847円。ともに過去20年の同じ月と比べて最も少なかった。内食傾向が高まり、9月までは連続で前年を上回っていたが、10月に減少に転じた。
20年産の米価は6年ぶりに下落したが、消費の刺激にはつながらず、購入数量も10、11月ともに過去20年で最低水準に落ち込んだ。主食で競合する麺類は支出額の前年超えが続いており、対照的な動きだ。消費者の米離れが背景にある。
農水省がまとめた主要米卸の11月の販売数量は、同3・5%減と8カ月連続で前年を下回り、家庭用の販売が業務用の低迷を補い切れていない。
消費低迷で、産地の販売も遅れている。農水省によると、産地から卸に引き取られた全国の販売量は、11月末時点で38万5000トン。前年同月より13%少ない。集荷量に占める販売比率は16%で、進捗(しんちょく)は例年よりも遅れている。
業務用需要の低迷で持ち越し在庫の消化が遅れていることに加え、家庭用米販売の鈍化も影響している。北陸地方のJA関係者は「家庭用定番銘柄でも販売に勢いがない。コロナの影響で試食などの販促活動がしづらい」と頭を悩ます。
消費低迷が続けば、今後の取引価格や需給にも影響を及ぼす。20年産の持ち越し在庫が多くなれば、需給を均衡させるために、21年産ではさらに転作の拡大が必要になる。
東北地方のJA関係者は「適正量の生産だけでなく、消費拡大も両輪で取り組む必要がある。事前契約を積極的に進めて販売先を確保しても、実際の販売が遅れれば厳しいことに変わりない」と指摘する。
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2021年01月18日

通常国会きょう召集 コロナ対策 最重点
第204通常国会が18日、召集される。新型コロナウイルス対策が最大の焦点で、政府・与党は対策を盛り込む2020年度第3次補正予算と21年度当初予算の成立を急ぐ。緊急事態宣言を受けた農業への影響を巡っても論戦が繰り広げられる見通しだ。政府は農水省の4法案の他、企業による農地所有特例の延長を盛り込む国家戦略特区法改正案、地域的な包括的経済連携(RCEP)の承認案などを提出する。
農林関係法案審議 予算成立後に本格化
会期は6月16日までの150日で、18日は菅義偉首相の施政方針演説などを行う。20~22日には衆参両院の本会議で各党が代表質問する。
政府・与党は補正予算の月内成立、当初予算の年度内成立を目指す。補正予算は農林水産関係で1兆519億円を計上。園芸農家向けの「高収益作物次期作支援交付金」や感染防止への投資を支援する「経営継続補助金」など、コロナ対策を盛り込んだ。当初予算の農林水産関係は前年並みの2兆3050億円とした。
農林関係の法案審議は予算成立後に本格化する見通しだ。農水省は畜舎の建築基準の特例措置を盛り込む新法案や、輸出促進に向けた事業者の投資を支援する「農業法人投資円滑化特別措置法」の改正案など4法案を提出、早期成立を目指す。
国家戦略特区法改正案は、特区の兵庫県養父市で認めている一般企業の農地所有特例を2年延長するのが柱だ。同特区諮問会議の民間議員らが求めていた特例の全国展開は見送った。審議では、農地取得の必要性の他、諮問会議の在り方も議論になる可能性がある。
RCEPは昨年、日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN、10カ国)など15カ国で署名。農産物の重要5品目は関税削減・撤廃の対象から除外したが、中韓とは初めての経済連携協定(EPA)となるため、影響の検証が課題になる。
議員立法では、狩猟者の技能講習の免除措置の延長などを盛り込む鳥獣被害防止特措法改正案や、過疎地域を財政支援する過疎地域自立促進特措法が3月末に期限を迎えることを受けた新法案が提出される予定だ。
7月には東京都議会議員の任期満了、7月23日には東京五輪の開幕を迎えるため、会期の延長は難しい見通し。政府・与党は提出法案の会期内成立を目指す。
衆院議員の任期満了が10月に迫る中、衆院解散の時期も焦点になる。4月25日には、吉川貴盛元農相の議員辞職と羽田雄一郎元国土交通相の死去に伴う衆参の補欠選挙が行われる。こうした政治日程も絡むとみられるが、コロナの収束は不透明で、菅首相の解散戦略は依然見通せない。
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2021年01月18日
鳥インフル 移動制限全て解除 厳重警戒続く 香川県三豊市
香川県は16日、三豊市で集中発生した今季12事例の高病原性鳥インフルエンザについて、発生農場から半径3キロ圏内で設けた鶏などの移動制限を全て解除した。通常は防疫措置完了後、最短21日の経過で解除できるが、狭い範囲で続発して埋却などの作業も難航。制限解除は昨年11月5日の初発生から約2カ月ぶりになる。今後は感染防止とともに、養鶏場の経営再建が課題となる。
今季の高病原性鳥インフルエンザは発生が15県に広がり、殺処分の羽数は36事例(48農場)で約600万羽となった。1シーズンの被害としては過去に例がない事態。直近でも全国屈指の養鶏産地、千葉県や鹿児島県で発生している。
香川県内の制限区域の解消により、今季発生した36事例のうち31例目まで(全体の86%)は鶏などの移動制限が全て解除された。現時点で制限区域が残るのは32~36事例の発生農場がある千葉、岐阜、宮崎、鹿児島の4県となる。
三豊市内では、県によると、12事例で約179万羽を殺処分した。鶏などの移動が制限された半径3キロ圏内では今も33農場が、約129万羽を飼養。制限が長期化したことで、県は「一部の農場では、ブロイラーが出荷できる日齢を超えたため処分された」と説明する。
移動制限の解除を受け県養鶏協会の志渡節雄会長は「(感染源とみられる)渡り鳥は、まだ周辺にいる。気を緩めず、感染防止に取り組む」と強調。その上で、「発生農場は、経営再開のめどが全く立っていない。国や県には支援や補償を早く示し、農家の不安を払拭(ふっしょく)してもらいたい」と要望している。
ため池が多い香川県では、渡り鳥が飛来する時季に発生が集中した。今後は春に渡り鳥が北へ移動する時季にウイルスが拡散する可能性がある。
北海道大学大学院獣医学研究院の迫田義博教授は「渡り鳥がシベリアに帰っていく、5月の大型連休ごろまでは厳重な警戒が必要。人、物の消毒や野鳥、野生動物の侵入防止など飼養衛生管理を徹底すべきだ」と話す。
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2021年01月17日

本紙モニター調査 米需給対策=4割「課題あり」 輸出5兆円=「対策次第」3割
日本農業新聞が12月中下旬に行った農政モニター調査で、主食用米の需給均衡に向けた農水省の対策について「課題がある」との回答が39%に達した。米政策の改善には「転作メリットの拡充」が必要との声が最多だった。農林水産物・食品の輸出額を2030年に5兆円にする政府目標の達成の成否は「対策次第」とみる回答が33%で最も多かった。
農水省は昨年12月、輸出・加工用米や麦・大豆などへの転換に10アール当たり4万円を助成する「水田リノベーション事業」をはじめ、転作支援の拡充や米の需要喚起に向けた対策を発表。調査では「評価している」は12%にとどまり、「課題があり見直しが必要」が39%、「どちらともいえない」が47%だった。
「米政策を改善するとしたら、どういった視点が必要になるか」との質問には、回答を二つまで選んでもらった。最も多かったのは「転作推進のメリット拡充」で36%、「生産費を補う所得政策の確立」が35%で続いた。「資材価格の引き下げ」と「米の消費喚起」も30%の人が選んだ。
売上高が最も多い品目に「水田農業」を選んだ人に限ると、米対策については「評価」が14%、「課題がある」が44%、「どちらともいえない」が42%だった。米政策の改善については、「所得政策」が42%、「転作メリット」が36%、「資材価格」が35%の順だった。
農水省は21年産の米生産を「正念場」(野上浩太郎農相)とし、需給均衡には過去最大規模となる前年産比6・7万ヘクタールの作付け転換が必要とみる。対策の実効性確保には、こうした農家の意見も踏まえ、理解を求める必要がありそうだ。
輸出5兆円目標の達成については「対策次第」が33%だった一方、「達成できない」が27%、「過大だ」が16%で、「達成できる」の6%を上回った。経営品目別に見ると、「達成できる」と考える割合が最も高かったのは肉用牛肥育で14%、低かったのは畑作物と養鶏でゼロだった。水田農業や花きは5%、施設園芸は3%にとどまった。
政府は昨年11月、輸出目標達成に向けた実行戦略を策定したが、輸出の拡大には同戦略に沿った十分な支援策とともに、農家の意欲喚起も求められそうだ。
調査は、農業者を中心とした本紙の農政モニター1133人を対象に昨年12月中下旬、郵送で実施。756人から回答を得た。
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2021年01月17日
豪州と米国 市民農園ブーム コロナ禍契機に 食材自給 注目集める
新型コロナウイルス禍を契機に、海外で市民農園が注目されている。物流が混乱しても自給自足をすれば食材調達が可能だからだ。政府支援が加わり、今後はさらに拡大しそうだ。オーストラリアと米国の事例を紹介する。
オーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州。広さ5000ヘクタールに上る自然保護地区ウエスタンシドニーパークランズで、市民農園が徐々に増えている。州の委託で保護地区を管理するウエスタンシドニーパークランズ財団がコロナ禍対策として推し進めていることが背景にある。
同財団は、2006年に地区内の13・2ヘクタールを農地に転用し始めた。16都市から訪れた市民がキュウリなどを栽培し、同州シドニー市内の直売所などで販売。コロナ禍の拡大以降はスーパーの品ぞろえが悪かったことがあり、近隣の消費者が直売所に殺到。売り上げは通常の20倍に増えた。同財団は今後、さらに52ヘクタール分を拡大する予定だ。
食品システムに詳しい同国メルボルン大学のレイチェル・キャリー教授は「自然災害や供給チェーンの混乱に備え、都市は保険政策として都市農業能力を高めるべきだ」と指摘する。
米国東部のシアトル市では、主に黒人と先住民族の間で都市農業が流行。失業者や生活困窮者にとっての自給自足手段として広がっている。
きっかけは、黒人差別抗議運動(ブラック・ライブズ・マター=BLM)を主導する社会活動家のマーカス・ヘンダーソン氏が、小さな野菜畑を作ったことだ。畑は、20年6月に機動隊とデモ隊の衝突が頻発していたキャピトルヒル自治区(デモ隊が自治を宣言した地域)の公園内にある。同氏はBLM問題を巡り警察や機動隊と激しくぶつかり合う暴力的な日々を問題視し「殴り合いよりも、差別や失業で苦しむ黒人を助けるのが優先だ」と行動を起こした。
同氏に賛同する黒人農家らが「本格的に都市住民のための農業を興そう」と集まり、シアトル市からキング牧師記念センター敷地内の空き地を正式に借り入れた。農機具や資材はインターネットで市民から寄付を募って購入。「自分の食料を自分の手で作ろう」をスローガンに、人種差別やコロナ禍で失業した生活困窮者の参加を呼び掛けた。現在、約1ヘクタールの作業に430人以上が参加しているという。
収穫する農産物は、参加者の家族に加え、市内の生活困窮者にも配る予定だ。同氏は「シアトル市内では9人に1人が生活に困窮している。まず畑の周辺7000戸の困窮家庭のうち約半数の3500戸に提供できる量は収穫できるはずだ」とみている。
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2021年01月17日
農地特区 特例2年延長決定 「全国展開前提でない」 担当相
政府は15日の国家戦略特区諮問会議で、兵庫県養父市で認めている企業による農地取得の特例について、8月末の期限を2年間延長する方針を決めた。2021年度中に特例のニーズや問題点を調査し、全国展開の可否について調整する。坂本哲志地方創生担当相は同日の閣議後記者会見で、調査は「全国展開を前提にしたものではない」と述べた。期限の延長を盛り込んだ同特区法改正案は、18日召集の通常国会に提出する。
書面開催した同特区諮問会議で政府は、同市の特例措置について、「ニーズと問題点の調査を特区区域以外においても来年度中に実施し、その結果に基づいて全国への適用拡大について調整し、早期に必要な法案の提出を行う」との方針を提示した。……
2021年01月16日
農業分野の技能実習生 1~3月2000人予定 人手不足を懸念 入国停止で農相
野上浩太郎農相は15日の閣議後記者会見で、1~3月に来日を予定していた農業分野の外国人技能実習生らが約2000人に上ると明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、技能実習生を含む外国人の新規入国は停止中で、生産現場の人手不足が問題となる可能性がある。野上農相は影響を注視しつつ、代替人材の確保を後押しする考えを示した。
昨年12月末時点で今年1~3月に来日予定だった技能実習生らの数を、都道府県やJAなどに聞き取ってまとめた。昨年もコロナ禍による入国制限で3~9月に技能実習生ら約2900人が来日できず、人手不足となる農業経営が出ている。
野上農相は会見で「今後、日本にいる技能実習生らの在留延長や他産業からの雇用などによる代替人材の確保が必要になっていく」と指摘。代わりの人材の確保に必要な経費を支援する「農業労働力確保緊急支援事業」を通じて、生産現場を支える考えを示した。
政府は14日から緊急事態宣言の解除まで、例外的に認めていた技能実習生らビジネス関係者も含めて外国人の新規入国を一時停止している。
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2021年01月16日

「BUZZ MAFF」 Jリーグとコラボ動画 若者に農業PR 農水省
農水省は15日、公式ユーチューブチャンネル「BUZZ MAFF(ばずまふ)」で、サッカーJリーグと連携した動画の投稿を始めた。地域の農業への理解や関心を深めてもらうため、Jリーグチームの行う農林水産業の取り組みを同省職員の「ユーチューバー」が発信する。第1弾としてJ2の松本山雅FC(長野県)、J3の福島ユナイテッドFC、ガイナーレ鳥取との動画を投稿した。
「ばずまふ」は、職員の個性や発想を生かした動画を投稿し、農業への関心が薄い若者を含めて広く情報を発信している。 現在、動画の総再生回数は620万回以上。スポーツチームと連携してPRに取り組むのは初めて。
松本山雅FCと連携した動画では、黒ずくめのばずまふユーチューバーが登場。休耕地で地域の住民と連携して1トンの青大豆を生産する取り組みを紹介し、青大豆を使った新しいスイーツの開発に挑戦する。
選手が生産した農産物を販売する「農業部」がある福島ユナイテッドFCとの動画では、選手が自ら作った米をPRする。東北農政局の職員が米を食べ、自作の応援ソングも披露する。ガイナーレ鳥取と連携した動画では、中国四国農政局の職員が、チームの職員と地域の休耕地を利用して芝生を生産・販売する取り組みについて語り合う。
今後も、全国のチームと連携した動画を配信していく。同省は「農業に取り組むクラブは他にもある。地域の農業への理解が深まれば」(広報評価課)と期待を寄せる。
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2021年01月16日
作業安全週間を設定 2月16日から11日間 農水省
農水省は15日、2月16日から26日までを「農林水産業・食品産業 作業安全推進Week」にすると発表した。期間中に安全対策に関するシンポジウムや情報交換の会議などを集中して企画。農業者らに、作業の安全対策は人ごとではなく自分事と捉え、安全・人命が全てに優先することを認識してもらう。同省が短期間に作業安全に関するイベントを集中させて続けるのは初めて。
農林水産業と食品産業の業界全体で安全対策を進めてもらう狙い。……
2021年01月16日
雪被害、20道府県6766件 支援「適切に対応」 農相
野上浩太郎農相は15日の閣議後記者会見で、大雪によって岩手、秋田、新潟など20道府県から、農業用ハウスなどの施設6766件の被害報告を受けていると明らかにした。農相は「引き続き現地との連絡を密にしながら被害状況を把握し、農林水産業への影響を最小限にするよう、適切に対応したい」と述べた。
農水省によると、15日午前7時半現在で、ハウス6359件、農業用倉庫215件、畜産用施設192件の被害報告を受けた。……
2021年01月16日