シイタケ原木高騰 地場産の安定確保へ奮闘 植林、“所有者マップ”作成 鳥取県

 2011年の東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所事故を機に、シイタケ原木の価格高騰が続く中、鳥取県は県産原木の安定確保に取り組んでいる。大規模な植林に加え、早期伐採が見込める果樹園跡地の利用や、土地所有者と生産者をマッチングする市町村単位の原木林マップ作成を進める。自伐可能な原木林を整備することで、購入に頼る新規就農者らの経営維持につなげる。(鈴木薫子)
 

自伐支援へ環境整備


 原木の確保は、自分で山林から調達する自伐型と購入に分かれる。農水省の特用林産基礎資料によると、所有林による自伐型は4割で、残り6割は中・小規模産地や新規就農者を中心に立ち木や原木を購入している。

 

 19年のナラの原木価格は1本330円で、統計がある1980年以降では最高値。クヌギは323円で、2009年に比べると、共に4割高だ。原発事故以前は比較的安定していたが、東日本の原木主産県だった福島からの供給が滞ったことで、西日本からの移送に運賃がかかり、価格高騰につながった。

 19年の干しシイタケ国内価格は1キロ3571円で、原発事故後では最高値だった16年に比べ3割安い。鳥取県で栽培指導・研究活動をする日本きのこセンター菌蕈(きんじん)研究所の長谷部公三郎所長は「干しシイタケの需要の落ち込みで、価格が低迷している。購入したほだ木では採算が合わない」と指摘する。

 同センターなどのグループは、原木林の造成が急務だと考え、19年に植林を始めた。鳥取市の5ヘクタールに1万5000本のクヌギ苗を植林。15年後に長さ1メートルの原木を12万本確保できる計画だ。将来的に20ヘクタールに広げる。

 県は果樹園跡地の活用を後押しする。県と市町村が、土地所有者に園地の鉄線や棚などの撤去費用の9割を助成。植林は国の造林事業を使う。果樹園跡地は土地が肥沃(ひよく)で「木の成長が早く、伐採時期が5年ほど早まる」(県産材・林産振興課)ため、早期伐採が期待できる。

 事業は16年度に始まり、これまで6件1・5ヘクタール分を造成。21年度も数件の利用を見込む。

 生産者が自力で原木林を探す仕組みづくりも進める。同グループと県は今年、自治体やJA鳥取いなばと連携し、市町村単位の「新・原木林マップ」作りに着手した。森林所有者へ更新された情報を聞き取る際、森林利用の意向を調査する。所有者の許可を得て、インターネットのマップ上で名前や連絡先を閲覧可能にし、生産者と所有者のマッチングに役立てる。既に鳥取市と八頭町が参加。21年1月以降、所有者の意向をマップに反映させていく予定だ。
 

ナラ枯れ SNSで情報共有


 原木シイタケで使うコナラやミズナラが枯れる「ナラ枯れ」の被害が全国規模で深刻化する中、生産者が対策に乗り出した。インターネット交流サイト(SNS)内にネットワークを立ち上げ、生産者同士で情報をリアルタイムに共有。被害状況や拡大防止策を持ち寄り、対処方法を探る。

 ナラ枯れは、カシノナガキクイムシ(カシナガ)が運ぶナラ菌という病原菌が木の中で繁殖することで通水が阻害され、木が枯死する伝染病。原木として使うミズナラやコナラ、クヌギの他、栗やカシワなど広葉樹に伝染し、特に高樹齢の木が被害を受けやすい。全国規模で広がりを見せている。

 

カシナガのせん入孔を測る定規で被害を調べる廣瀬さん(鳥取県日野町で)
 熊本県人吉市で、年間10万本の原木シイタケを生産する浅香康昌さん(61)は7月、シイタケを発生させるほだ場の雑木林のシイなど20本以上が枯れているのを発見した。県の調査でナラ枯れだと分かった。祖父の代から100年続く農家だが「初めての被害で対処方法が分からなかった」という。

 対策の情報が少なく、自らSNSのフェイスブック上に「椎茸(しいたけ)栽培におけるナラ枯れネットワーク」を立ち上げた。全国のシイタケ生産者や専門家ら88人が参加。各県の被害状況や伐採・移動時の注意点などを投稿し、情報を共有する。

 鳥取県日野町の廣瀬俊介さん(34)は、原木を確保する山林でコナラが枯れる被害に遭った。対策を探るうちにネットワークに参加。県林業試験場が作ったカシナガのせん入孔のサイズ(約1・4~1・9ミリ)が目盛りで分かる定規「カシナガスケールMiK2」を紹介した。

 林野庁によると、2019年度のナラ枯れ被害量は前年度比35%増の6万500立方メートル。20年度の被害をまとめている同庁森林保護対策室は「今年はさらに増えている」とみる。廣瀬さんは「急激な広がりに情報が追い付いていない」として、積極的に情報交換をする考えだ。
 

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