どんな町?どんな人? 「地域おこし協力隊」“お試し” 理解深め末長く 北海道ニセコ町
2021年01月27日

奥芝店長(中)や奥田さん(左)に地域農業や直売所の魅力を教わる和田さん(北海道ニセコ町で)
条件不利地などに原則1~3年赴任して農山村の活性化を目指す「地域おこし協力隊」の「お試し」が、各地で広がってきた。これまで任期途中で辞める人も多かったことから、長期赴任前に数日間地域に滞在することで、受け入れ側とのミスマッチを少しでもなくすのが目的だ。導入する農山村は「地域をPRする契機とすることで関係人口の増加にもつながる」と効果を感じている。(尾原浩子)
1月中旬、豪雪地域の北海道ニセコ町で広島市から来た会社員の和田健斗さん(23)が、直売所「ニセコビュープラザ直売会協同組合」の奥芝利弘店長から町の農業について聞いていた。「来ないと分からないが、観光だけじゃなく農業が盛んなんだ。冬でも野菜は豊富。夢を応援するし、相談にも乗るよ」と笑顔で話す奥芝店長の言葉に、和田さんは安心した様子だ。
1月から2泊3日程度で協力隊希望者の「お試し」を受け入れ始めた同町。和田さんはその1期生だ。3日間の体験移住を通じ「雪の多さには驚いたが、やっていける。この町の協力隊になりたい」と思いを確かなものにした。自然の中で暮らしたくて協力隊を志望したが、まだ現在の仕事を辞めておらず「お試しなら気軽に参加できる」と考えて応募した。
同町では10年前から協力隊員らと地域づくりを進めており、現在は隊員23人が活躍。任期を終えた21人のうち7割が定住するなど成果を上げている。しかし中には、仕事を辞めるなど退路を断って赴任したにもかかわらず、受け入れ側と双方で意識の齟齬(そご)が生まれる状況もあった。
同町で協力隊を担当する川埜満寿夫さん(42)は移住コーディネーターや野菜ソムリエ、地域の拠点づくりなどさまざまな仕事で生計を立てる奥田啓太さん(35)に相談。1次産業に携わる人や現役隊員との交流、直売所訪問などを企画した。
奥田さんは「ハードルを下げてさまざまな人に来てほしいが、どんな人が来るのか少しでも分かっておけば、受け入れる側の安心感につながる」と実感。川埜さんは「協力隊の希望者は道外出身者が多く、ニセコ町をイメージしにくい人もいる。隊員にならなくても、町の魅力を知るきっかけにしたい」と期待する。
現状では新型コロナウイルス禍で緊急事態宣言が再発令された地域の希望者は参加できないものの、2021年度も感染対策を徹底した上で希望者を受け入れる考えだ。
総務省によると、19年度の地域おこし協力隊員は5503人。全国1071の自治体が受け入れている。同省は同年度に「おためし地域おこし協力隊」制度を始めた。実施する自治体には特別交付税措置で支援する。
同省によると、初年度は36自治体が「おためし協力隊」を導入。お試し期間を経て採用に結び付かなかったケースもあるが、新潟県柏崎市は「集落の世話人と話し、雰囲気を確認できる意味は大きい。2泊3日なので会社員でも気軽に参加できる」と効果を感じている。
21年度からは新たに、協力隊に関心を持つ人に2週間~3カ月の任期で活動を体験してもらう「インターン制度」も設ける。お試し、インターンとも自治体や希望者の希望に沿って導入でき、両制度で行政、住民、協力隊のミスマッチを防ぎたい考えだ。
ミスマッチ防ぎ関係人口増期待
1月中旬、豪雪地域の北海道ニセコ町で広島市から来た会社員の和田健斗さん(23)が、直売所「ニセコビュープラザ直売会協同組合」の奥芝利弘店長から町の農業について聞いていた。「来ないと分からないが、観光だけじゃなく農業が盛んなんだ。冬でも野菜は豊富。夢を応援するし、相談にも乗るよ」と笑顔で話す奥芝店長の言葉に、和田さんは安心した様子だ。
1月から2泊3日程度で協力隊希望者の「お試し」を受け入れ始めた同町。和田さんはその1期生だ。3日間の体験移住を通じ「雪の多さには驚いたが、やっていける。この町の協力隊になりたい」と思いを確かなものにした。自然の中で暮らしたくて協力隊を志望したが、まだ現在の仕事を辞めておらず「お試しなら気軽に参加できる」と考えて応募した。
同町では10年前から協力隊員らと地域づくりを進めており、現在は隊員23人が活躍。任期を終えた21人のうち7割が定住するなど成果を上げている。しかし中には、仕事を辞めるなど退路を断って赴任したにもかかわらず、受け入れ側と双方で意識の齟齬(そご)が生まれる状況もあった。
同町で協力隊を担当する川埜満寿夫さん(42)は移住コーディネーターや野菜ソムリエ、地域の拠点づくりなどさまざまな仕事で生計を立てる奥田啓太さん(35)に相談。1次産業に携わる人や現役隊員との交流、直売所訪問などを企画した。
奥田さんは「ハードルを下げてさまざまな人に来てほしいが、どんな人が来るのか少しでも分かっておけば、受け入れる側の安心感につながる」と実感。川埜さんは「協力隊の希望者は道外出身者が多く、ニセコ町をイメージしにくい人もいる。隊員にならなくても、町の魅力を知るきっかけにしたい」と期待する。
現状では新型コロナウイルス禍で緊急事態宣言が再発令された地域の希望者は参加できないものの、2021年度も感染対策を徹底した上で希望者を受け入れる考えだ。
インターン制新設 総務省
総務省によると、19年度の地域おこし協力隊員は5503人。全国1071の自治体が受け入れている。同省は同年度に「おためし地域おこし協力隊」制度を始めた。実施する自治体には特別交付税措置で支援する。
同省によると、初年度は36自治体が「おためし協力隊」を導入。お試し期間を経て採用に結び付かなかったケースもあるが、新潟県柏崎市は「集落の世話人と話し、雰囲気を確認できる意味は大きい。2泊3日なので会社員でも気軽に参加できる」と効果を感じている。
21年度からは新たに、協力隊に関心を持つ人に2週間~3カ月の任期で活動を体験してもらう「インターン制度」も設ける。お試し、インターンとも自治体や希望者の希望に沿って導入でき、両制度で行政、住民、協力隊のミスマッチを防ぎたい考えだ。
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1月農産物輸出40%増 家庭向け好調 過去10年で最高
2021年の農林水産物・食品の輸出は好調な滑り出しとなった。農水省がまとめた1月の輸出額は前年同月より40%増の758億円で、1月としては過去10年で最高だった。新型コロナウイルス下、牛肉やリンゴ、緑茶などの引き合いが家庭向けで強まった。飲食店の規制が続く地域もあり、輸出拡大には家庭用需要の開拓が重要になっている。
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2021年03月03日
さだまさしさんに「おもひで泥棒」という歌がある
さだまさしさんに「おもひで泥棒」という歌がある▼認知症とおぼしき祖母を案じる孫を「心配しなくていいよ おもひで泥棒なんていない」と優しく語り掛ける。コロナ世代の小中高校生たちはさしずめ〈思い出ドロ〉の最大の被害者だろう。入学式、運動会、文化祭、修学旅行、部活動、みんな自粛の人も少なくない▼子ども時分の思い出は大体、学校行事からしみ出てくる。いいことも恥ずかしいことも。勉強した中身は簡単に忘れるが、思い出は年老いてもなお残る。おばあさんの脳裏にも。各地から卒業式の便り。卒業アルバムは埋まったのか、いささか心配になる。オンラインで授業はできても思い出はつくれない。心の空洞ができていないことを願う▼大作『カラマーゾフの兄弟』は、薄幸の少年の葬儀の後、主人公の青年、アリョーシャが子どもたちに訴え掛ける場面で終わる。きょうこの瞬間、君たちが心を一つにして弔ったことを決して忘れないでほしいと。ドストエフスキーは〈救いとしての思い出〉を信じた人である。子どもの時の美しい思い出は永遠であり、大人になって時に試練を支える力となり、悪の誘惑から守ってくれる。そう、この若者に語らせた▼コロナ禍の中だが、最後はきちんと送り出してあげたいものである。
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2021年03月06日

日本型アニマルウェルフェア開発へ 集まれ“応援団” 鶏肉販売始める 信州大農学部
信州大学農学部(長野県南箕輪村)は3日、アニマルウェルフェア(快適性に配慮した家畜の飼育管理)の飼育施設で育てた鶏肉の販売を始めた。研究の一環で飼育した肉用鶏を販売することで、消費者へのアニマルウェルフェアの認知度向上につなげる考えだ。
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今回販売する鶏肉は、昨年12月下旬にひなから育て、2月上旬に山梨県笛吹市の加工業者に出荷した310羽分。
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キャンパス内の直売所で発売。モモ肉1袋(2キロ)2000円、ムネ肉1袋(同)1500円、手羽元1袋(同)1300円。
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2021年03月04日
有機農業 50年に100万ヘクタール 新戦略中間案 環境負荷軽減へ 農水省
農水省は5日、環境負荷の軽減と農業生産力向上の両立を目指す中長期的な政策方針「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめ案を公表した。2050年までに①化学農薬の使用量半減②化学肥料の使用量3割減③有機農業を全農地の25%に拡大──といった意欲的な数値目標を提示。技術革新や農家・消費者らの理解などを前提とし、生産体系を大きく転換する方針を打ち出した。
次ページに新戦略のポイントの表があります
2021年03月06日
「ありがたい」は、「有り難し」に由来する
「ありがたい」は、「有り難し」に由来する。漢字が示す通りあり得ないほど貴重なこと。転じて感謝を表す言葉に▼『枕草子』では、「有り難きもの」つまりめったにないことの例に「しゅうとにほめられる婿」と「しゅうとめに思われる嫁」を挙げた。平安の世から今に続くバトルの歴史を思う。ほかに「主人のことを悪く言わない従者」。上司の悪口は世の常▼今日は「サンキューの日」。感謝の気持ちを伝えるのは難しい。仕事上、言われて一番うれしい言葉は、男女とも「ありがとう」(日本能率協会調べ)。ただ夫が妻に取ってつけたように「いつもありがとう」なんて言おうものなら「何か隠し事でも」と勘繰られるのがオチ▼タレントのゴルゴ松本さんは、漢字や言葉の成り立ちを通して生き方を伝える「命の授業」を行う。例えば「あいうえお」で始まる日本語は、「あい(愛)」に始まり「をん(恩)」で終わると。「始」という字は、「女」が土「台」となって「始」まりとなる。明日は「農山漁村女性の日」。命を産み育む女性は大地の母。「だから俺ら男は、女の人を尊敬しなきゃだめなんだ」とゴルゴ松本さん▼そして続ける。「無難な人生」より、苦難、困難、災難など「難が有る」人生を有り難いと受け止め、乗り越えようと。
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2021年03月09日
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熊本 新阿蘇大橋が開通 観光客増に期待 「おいしいイチゴ食べに来て」 地震で被災の木之内農園
2016年4月の熊本地震で崩落した熊本県南阿蘇村の阿蘇大橋に替わる、国道325号新阿蘇大橋が7日、開通した。“大動脈”の復活に、地元では経済振興などへの期待が高まる。
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2021年03月09日

[思いを結ぶ それぞれの震災10年](上) “食”を通じ風化防ぐ
被災地食材 復興考える きっかけ食堂代表 原田奈実さん
東北の農畜産物などを食べて復興について考える“きっかけ”にしようと、東日本大震災の月命日となる毎月11日だけ開く食堂がある。その名は「きっかけ食堂」。食を通じ記憶の風化を防ぐ取り組みだ。京都市で2014年5月から始まった。
「俺たちが悪いんだ」。東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力発電所事故による風評被害で野菜が売れず、自暴自棄になる生産者の悲痛な叫びは、きっかけ食堂代表の原田奈実さん(26)にとって衝撃だった。……
2021年03月09日

[東日本大震災 あなたの分も生きた10年](1) 面影胸に今日も耕す 荒れ地芽吹いたヒマワリ
少し冷たい風が潮の香りを運ぶ夕暮れ、あの人を思い出す──。
宮城県東松島市の阿部ちよ子さん(76)はハウス4棟と露地20アールで、トマトなど年間20種類の野菜を1人で作っている。残された畑を守るのが私の使命。その思いで10年を過ごしてきた。
午後6時から1時間。震災前、ちよ子さんが一日のうちで最も好きな時間だった。故・勲さん=享年72=とのウオーキングの時間だ。「今年はどんな野菜を作ろうかね」「そろそろ田植えの準備しねどな」。勲さんが話すのは農業のことばかり。その横顔が好きだった。雨や雪が降っても外に出た。ちよ子さんが雪に足を取られて派手に転び、2人でげらげら笑ったこともある。夫が差し伸べる大きく日焼けした手。「幸せな時間だった」(ちよ子さん)
薬届けねど
10年前のあの日、勲さんの薬を取りに病院に行った。……
2021年03月08日
経営継承希望DB化 全国から新規就農募る 熊本県が支援機構
熊本県は2021年度、担い手農家を長期的に確保するため、くまもと農業経営継承支援機構を設立する。高齢などを理由に、農地や農業施設といった経営資産を譲ろうと考えている農家の情報をデータベース(DB)化。将来的にはデータをホームページで公開し、全国から新規就農者を募る考えだ。
機構は県や市町村、JA、県農業会議などで構成。……
2021年03月08日
農高では基礎固め 農大校で課題研究 即戦力を育成 5年一貫教育へ 和歌山県
和歌山県は、農業系高校と農林大学校で5年間の一貫教育に乗り出す。2022年度の高校入学生から開始。高校のうちに栽培などの基礎知識や技能を身に付けてもらうことで、大学校では果樹などについての課題研究に力を入れられるカリキュラムを検討する。担い手の減少が進む中で、即戦力となる人材の育成を急ぐ。
県によると、こうした一貫教育は全国でも珍しい。……
2021年03月08日

[震災10年 復興の先へ] 東北被災地は今…イノシシ増殖 営農再開も被害拡大に不安 帰還へ懸念材料
東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う帰還困難区域のうち、福島県内5町村(富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村)でのイノシシ捕獲頭数が2年連続で2000頭を超えたことが環境省の調べで分かった。人がいない状況のため繁殖が止まらず、営農を再開した農地で被害も発生。宅地に侵入するケースもあり、避難した住民が今後、帰還する上での支障になる恐れがある。(柘植昌行、中川桜)
福島5町村捕獲数 2年連続で2000頭超
水田と山林の境目にイノシシ向けの電気柵が走る。富岡町の稲作農家、渡邉伸さん(60)は「ここを突破することもある」と打ち明ける。地元の帰宅困難区域指定が解除された2017年以降、営農を再開。水田5ヘクタールを手掛けるが、イノシシに稲を踏み倒されることもあり、食害にも悩まされ続けている。
渡邉さんは家族と住むいわき市から通い、農作業を続ける。片道1時間かけて水田に到着し、被害が出ているのを見つけると、「本当に気落ちする」と話す。生息数も増えていると感じ「今後、水稲の収量に大きな影響を与えるのではないか」と不安だ。
日中にもかかわらず、宅地を歩き回るイノシシ――。大熊町の根本友子さん(73)は一時帰宅が可能になって以降、そんな光景を何度も見た。町農業委員会の会長として、営農再開に向けた水稲の実証栽培に関わり、イノシシの食害を目の当たりにした。
避難の長期化で、大熊町は「イノシシが増える環境が整ってしまった」(産業建設課)とみる。今後、町民に帰還を促すに当たり、イノシシの頭数減を課題に挙げる。町内には約150台のわなを設置。1台当たりの捕獲数を増やすため、最適な設置場所の把握などを進める方針だ。
環境省は福島県内5町村の帰宅困難区域で、13年度からイノシシの捕獲事業を開始。19年度の合計捕獲頭数は2136頭に上った。20年度も1月末時点で2128頭。2年連続で2000頭台で推移する。
農地だけでなく住宅の庭地を掘って荒らす被害も後を絶たない。環境省は18年度から捕獲体制を強化。わなを増設、捕獲期間も延長し、捕獲頭数の増加につながった。同省は「帰還する住民が安心して暮らせるよう引き続き捕獲を進める」(鳥獣保護管理室)と話す。
イノシシの生態に詳しく、富岡町で実態調査にも携わる東京農工大学の金子弥生准教授は「体格の大きさなどから考えると、餌を十分に取れている。今後も増える余地がある」と見込む。
金子准教授の試算では東日本のイノシシ生息密度は1平方キロ当たり5頭程度。一方、富岡町の調査地区は38頭と、8倍近い。そこで「帰還困難区域や周辺地域の生息密度を減らすことが重要」と強調。行政主導の狩猟人材の確保、フェンス設置による生活圏のすみ分けなどを指摘する。
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2021年03月07日

歌い奏で 農家にエール 活躍する北海道のミュージシャン
新型コロナウイルス禍で農産物の販売が苦境に立つ中、歌の力で農作物や農山村、JAを応援しようという機運が、北海道で高まっている。「北海道米」を題材に歌う音楽家、オホーツク発の音楽を奏でる“半農半ミュージシャン”、観光応援大使として市町村の楽曲を作るグループ――“道産”の音楽が地域を盛り上げている。(坂本俊二、関山大樹、望月悠希)
米の魅力ボサノバで 木村ゆうさん 札幌市
ボサノバ調の「お米のボッサ」で北海道米をPRするのは、札幌市の木村ゆうさん(30)。5歳の頃からピアノを習い、市内の大学で音楽を学んだ後、会社員との兼業で作詞作曲や演奏活動をしている。
2020年8月、食育イベントに参加した時に米の消費が落ちている現状を知った。ご飯が大好きで演奏前に欠かさず食べるという木村さんは、もっとお米を食べてもらおうと、歌を作ることにした。
歌では「指を立ててやさしく 何度も何度も何回も研いできれいにするの」と米のとぎ方を描写。「おいしいご飯をあの人と食べたいな 炊き立てを準備して帰りを待つの」とまとめた。
こだわったのが、品種名を盛り込むこと。「ななつぼし」は北斗七星、「おぼろづき」「ほしのゆめ」はきれいな風景をイメージ。「ゆめぴりか」の「ぴりか」はアイヌ語で「美しい」という意味だった。名前の由来について調べると、ますます愛着が湧いた。
単純に並べるのではなく、意味を持たせて「北に光るななつぼし ほしのゆめを見る 夜を照らすおぼろづき きらら397」と流れるように仕上げた。
各種音楽配信サイトで発表して以来、歌は好評で、演奏会でもリクエストがあるという。木村さんは「歌を通して多くの品種を知って、北海道米をたくさん食べてほしい」と願っている。
麦育てつつライブ 遠藤正人さん 北見市
「音農家」の遠藤さん(遠藤さん提供)
北見市の遠藤正人さん(40)は小麦などを35ヘクタールで栽培する傍ら、ギタリストとして精力的に活動する。自ら「音農家(おんのうか)」と名乗り、東京でもライブをして、オホーツク地方や農業の魅力を発信している。
2008年にメジャーデビューしてCD2枚、DVD4枚を発売。東京で10年間、ライブ活動やバックバンドなどをした後、32歳で畑作農家の後継者としてUターンした。今は高齢者施設や教育施設での演奏など、農作業の合間に音楽活動を展開。スタジオミュージシャンとして録音にも携わる。遠藤さんは「“音農家”として、農業の魅力や格好良さを広げていきたい」と語る。
JAとMVを制作 ハンバーガーボーイズ 札幌市
北海道観光応援大使を務めるハンバーガーボーイズ
2012年に結成された札幌市の3人組ユニット「ハンバーガーボーイズ」は、道内の各市町村と連携した楽曲を作り、地域や農家、JAを応援する。
北海道観光応援大使も務めており昨年はJAそらち南のイメージソング「NOU NOU NOUKA(ノウノウノウカ)」を制作した。ミュージックビデオ(MV)にはJAの役員や農家らが出演。新しいJAの魅力を幅広い層に発信することに大きく貢献している。
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2021年03月06日
[新型コロナ] 4都県の緊急事態宣言再延長 落胆… でも感染心配
新型コロナウイルスの感染対策として4都県に出されていた緊急事態宣言が、再延長される。経済活動の自粛・縮小で影響を受けてきた花生産者や観光農園は解除を期待していただけに、落胆の色を隠せない。一方で、東京都などの新規感染者数の下げ止まりで「延期はやむを得ない」との声も上がる。
千葉県県花き園芸組合連合会会長の朝生尅巳さん(84)は「解除になることを心待ちにしていた。残念だ」と肩を落とす。
自らも千葉県君津市のハウス2棟でカラーを生産しており「花は、卒業式や入学式、歓送迎会など今が一番の需要期だから、早く解除になってもらいたい」と早期の解除を願う。ただ「名目だけ解除となって、(感染拡大などで)後から苦しむようでは仕方がない。早く安全な時が来てほしい」と憂慮する。
埼玉県三郷市でイチゴ狩り園や農家カフェを経営する農家は「緊急事態宣言下では、1日30~40人いたイチゴ狩りの客を半分程度にした。早く解除してほしい」と話す。宣言延長については「コロナ対策も大事。仕方ないことだと思っている」。
農家カフェでは感染防止対策を徹底。そのかいあって「感染対策をしっかりしている店だと口コミで広がり、来てくれる人もいる」という。「しっかりとした対策がないまま宣言が解除されることで、お客さんが密集して感染が発生してしまうことが正直言って一番怖い」とこぼす。
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2021年03月06日

福島県産リンゴ 東峰村産ユズ グラノーラ発売 復興応援へコラボ 福岡・エフコープ生協
福岡県のエフコープ生協(篠栗町)は8日、東峰村産ユズと福島県産リンゴのコラボレーション商品「柚子(ゆず)ピールとりんごのフルーツグラノーラ」を発売する。東日本大震災から10年がたつのに合わせ、同震災と九州北部豪雨からの復興に向けた絆でつながる、両県の特産物を使った企画。同生協は「復興応援活動の象徴にしたい」と期待を込める。……
2021年03月06日

記録的な大雪 ハウス279棟が損壊 北海道・JAふらの管内
記録的な大雪となっている北海道のJAふらの管内で、4日までに118戸・279棟のビニールハウスが損壊する被害が出ている。JAは「作付けを諦める人が出る可能性もある」と危惧。修繕に向けて、資材の確保などの対応を進める。
前線を伴う低気圧が発達し、北海道を通過した。札幌管区気象台によると、富良野市の2日の最深積雪は119センチで、1979年の統計開始以降、最も大きかった。農家はハウスがつぶれないよう懸命に除雪し、ハウス内に支柱を立てるなど対策を講じたが、降雪量が多過ぎたという。
JA職員が目視で確認した管内3市町(富良野市、中富良野町、上富良野町)の被害件数は3日午後4時時点で、全壊が279棟。農家への調査も進めており、被害はさらに広がる可能性がある。被災したのは、ハウスの苗床を確保する時期を迎えていたメロン農家が最も多かった。アスパラガスや水稲の農家も被害を受けた。
JAの武田達樹常務は「作付けの維持に向けて、実態を把握し修繕に向けた資材の確保を進めたい」と強調する。
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