[農政の憲法検証へ](1)総論(上)食料安保強化が焦点
同法は1961年制定の農業基本法(旧基本法)に代わり、99年に制定された。旧基本法が「農業」に焦点を絞り、その産業としての発展を目指したのに対し、現行法は「食料」と「農村」の概念も包摂し、国民全体の生活安定や経済発展を目的とした。基本理念には①食料の安定供給の確保②農業の多面的機能の発揮③農業の持続的な発展④農村の振興――の四つを掲げた。
制定から20年以上がたち、「制度疲労を起こしている」(政府関係者)との指摘もある中、新型コロナウイルス禍やウクライナ危機で食料安保が課題に急浮上したことが、検証の引き金となった。
同法は「食料の安定供給の確保」へ、国内の農業生産の増大を基本に据える。だが、食料生産に不可欠な生産資材などが「安定的に輸入できることを前提に作られている」(自民党食料安全保障検討委員会の森山裕委員長)と、不備を指摘する声が上がる。
「担い手」以外の人材の位置付けも議論になりそうだ。同法は92年決定の「新しい食料・農業・農村政策の方向」や93年創設の認定農業者制度を踏まえ、「効率的かつ安定的な農業経営」を重視。一方、農家の減少で、こうした「担い手」だけでは農業を維持できないとの声が強まる。
この他、農産物の価格決定の在り方や経営安定対策、環境、農村政策なども議論が求められる。
議論をけん引する森山氏は、24年の通常国会での同法改正が望ましいとの考えも示す。