広がるオンライン コロナ禍克服へ活用を

 新型コロナウイルスの流行を機に農業分野でオンラインの活用が広がっている。感染防止へ移動や行事の自粛が求められる中、利用方法も多様化。農産物の販売や情報発信、交流のツール(道具)として威力を発揮する。知恵と工夫でコロナ禍の中でもできることを増やしたい。

 ネット販売、ウェブ会議、就農セミナー、面接・商談、食農教育……。農業でのオンラインの活用例だ。移動や催しの自粛、3密(密閉・密接・密集)回避などで、顧客や市民らを集めたり、対面したりしにくい。それをカバーする工夫だ。

 神奈川県のJAあつぎは10月から農畜産物の魅力を伝える動画配信を本格化させた。JAのクッキングスタジオでの講習会が難しく、地元産を使ったレシピ動画を毎月公開。1000人超のフォロワーを持つ公式インスタグラムを活用する。JA全農長野は今夏から果実の生育状況の動画を作り、産地を訪問できない流通関係者に発信する。円滑な商談につなげる狙いだ。

 従来にない活用法が、オンライン疑似体験だ。産地に行かなくても、ブドウ狩りなどができる。顧客は、園地の映像を見ながら欲しいものを選べる。蔵元の映像を楽しみながら日本酒を味わう酒蔵巡りもある。その場以外で収穫気分や雰囲気を楽しめる新サービスの誕生といえる。

 国内だけではない。群馬県中之条町は食の国際大会を企画し、世界に情報を発信。同町の農産物を世界の料理人に送って調理・加工してもらい、オンラインで発表する。日本貿易振興機構群馬貿易情報センター(ジェトロ群馬)は「バーチャル視察動画」と銘打ち、農産品とその生産・加工現場を収録し、英語の動画を作成。オンライン商談を効果的に運ぶ作戦だ。

 政府が「新しい生活様式」を提唱してから半年。移動、接触、対面や会話を控えることが求められてきた。オンラインが広がったのは、感染拡大防止と経済活動を両立させるための必然の帰結ともいえる。

 便利なツールだが、制約もある。使いこなすのに情報通信技術(ICT)の知識や技術が要る。動画では視聴者を引き付ける撮影や編集の技術が求められる。ネット販売では、消費者の応対に十分な配慮が欠かせない。苦情への対応を誤ると顧客がネット上に不満を拡散する場合がある。販促をしたいのにマイナス評価が広まっては元も子もない。顧客らの個人情報の管理は特に注意を要する。

 行政は、ICTやマーケティングの専門家の派遣などで農家や組織を支援してほしい。新規取り組みには費用もかかり、導入・運営経費の支援も重要だ。

 オンラインは決して“万能”ではないが、停滞する経済活動を補完できる。ネット上の交流から新たなアイデア、ファン、需要が生まれる期待もある。経営に取り入れ、事業や活動でうまく活用しよう。

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