[米需要の危機](中) 減らない作付け 潜在的な課題 表面化

20年産米を整理する小野さん(秋田県男鹿市で)

 米主力地帯の秋田県は、2020年産の主食用米の作付面積(7万5300ヘクタール)が、県農業再生協議会の設ける生産目安を5000ヘクタール近く上回った。県の担当者は「主食用米は事前契約の割合が9割と高く、需要に応じた生産を進めた結果だ」と説明する。
 

需要ありきで


 18年産から国が生産数量目標の配分を廃止し、産地主体の需要に応じた生産へと政策が転換した。全体需給の均衡を優先していた現場は「売れる分だけ作ってよい」との受け止めも一部見られ、揺らぎが生じた。作付けの調整は難しくなり、県内の飼料用米や加工用米、備蓄米などの転作は縮小した。

 政策が変わる前の17年産まで、目標以上に削減する深掘りに取り組んでいた。県は野菜を大規模に生産する園芸メガ団地を造り“米偏重”からの脱却も掲げたが、結果だけを見れば、20年産の主食用米は増えた。

 同県男鹿市で主食用米を中心に水稲10ヘクタールを栽培する小野一義さん(71)は「売り上げと労働力のバランスを考えると主食用米を作る判断になる」と話す。小野さんが暮らす約80戸の集落で40代以下の農家はいない。高齢化が進む中で、少ない労働力でも安定して生産できる稲作に頼っている。一方、飼料用米や加工用米は助成金を考慮しても主食用米より手取りが減ることを敬遠し、積極的ではないという。

 新型コロナウイルス禍に伴う全国的な米の需要減少から、順調に進んでいると思われた県産米の販売環境に、逆風が吹いたとも感じている。小野さんは「地域の米作りを改めて考える時なのか」と自らに問い掛ける。
 

人気銘柄ゆえ


 米の生産量が国内最大の新潟県は、新型コロナ禍で需給緩和への懸念が高まった7月、県とJAグループが生産者に、「田んぼ一枚転換運動」を呼び掛けた。しかし、20年産で備蓄用や米粉用、輸出用などへの転換面積は約900ヘクタールと、目標には届かなかった。9月時点の主食用生産量は60万トンに迫る。県の目安を6、7万トン上回る見込みだ。

 全国トップ銘柄の県産「コシヒカリ」は販売価格が高く、非主食用米への切り替えが難しい。「全国区の銘柄産地は作れば売れるとの思い込みが少なからずある」(大手米卸幹部)との見方もある。

 県は21年産の生産目標を例年より前倒して示し、地域で作付けの検討を促す方針だ。今年度の9月補正予算で、非主食用米への転換に10アール当たり5000円の支援策を打ち出した。「稲作県では米価下落は所得に直接響く」と警戒する。

 生産目安を上回るのは東北や関東などの多くの県が該当する。目安に沿った生産が、うまく機能しているとは言い難い。これまでも需給緩和が叫ばれていたが、作柄低迷で回避されてきた。それが「コロナ禍や主産県の豊作傾向が重なり潜在的にあった課題が表面化した」(東北の産地関係者)。

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