温室効果ガス削減 農業も脱炭素化めざせ

 政府が、化石燃料への依存度を下げる取り組みをようやく本格化させる。温室効果ガスの農業からの排出量は国全体から見れば数パーセント。しかし農業には排出量を減らす潜在能力がある。地球温暖化の影響をまともに受ける産業でもある。農家ら農業関係者も、温室効果ガスの排出削減に正面から向き合うべきだ。

 地球温暖化対策には世界各国が本腰を入れている。欧州連合(EU)諸国は石炭火力発電を中止にする方針を示した。世界最大の温室効果ガス排出国の中国も、太陽光発電への転換を進めている。排出量2位の米国はトランプ大統領が地球の温暖化自体を否定し、温暖化対策の国際的な枠組みを定めたパリ協定から離脱した。しかし、次期大統領に当選確実となったバイデン氏は、温暖化対策を強化する方針を表明している。

 日本はどうか。スペインで昨年12月に開かれた気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)では、化石燃料からの離脱に消極的だとして環境団体から2度にわたり「化石賞」を贈られた。小泉進次郎環境相らが石炭火力発電からの脱却を明言しなかったことで、日本の姿勢が世界から問われた形だ。それがここに来て、菅義偉首相が初の所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と述べ、「脱炭素社会」の方向を明確にした。

 政府は、地球温暖化対策を新たな成長戦略と位置付けた。産業構造を変え、経済と環境の好循環を生み出す考えだ。農業は自然と共存しているイメージを持たれているが、実際は化石燃料を使って農機を動かし、園芸施設を加温する。牛のげっぷや水田からは温室効果ガスが空気中に出ている。温暖化は農業への影響が大きいだけに、温室効果ガスの削減に農業関係者は率先して取り組む必要がある。

 水田から発生するメタンガスの削減技術や、牛の胃からの発酵ガスを減らすための微生物の研究などは進んでいるが、農業関係者は、農村ならではの資源を利用した温室効果ガス削減策にも注目すべきだ。小水力発電や太陽光発電、バイオ燃料など、化石燃料に頼らなくても、エネルギーを生産できる可能性が農村には潜んでいる。食の地産地消だけでなく、エネルギーの地産地消を目指したい。

 地域でクリーンなエネルギーを自給しているとなれば、生産される農産物のイメージアップにもつながる。地産地消の発電体制が整っていれば、災害時の停電にも対応できる。

 自動車では、ハイブリッド、さらには電気自動車、水素電池車へと開発が進んでいる。農業用トラクターの電化にはまだ時間がかかるとしても、刈り払い機などの農機具では電動機種がそろってきた。園芸施設の加温にも、燃油の代わりにヒートポンプを使う方法がある。温室効果ガス削減に向け、農村ならではのエネルギーの生産と消費の方策へと転換していきたい。

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