二地域居住推進へ全国協 600自治体 事例共有 国交省
2021年02月23日
国土交通省は、地方と都市に二つ以上の生活拠点を持つ「二地域居住」を全国規模で推進するため、自治体や関係団体などが参加する協議会を3月に設立する。601の自治体と29の関係団体・業者が既に参加を決めている。農村を含め地方の人口減少に歯止めがかからない中、有効な施策の検討やノウハウの共有を進め、新たな人口を呼び込む契機を各地で作りたい考えだ。
「全国二地域居住等促進協議会」として発足する。36都道府県と565市区町村に加えて、移住推進や空き家バンクの運営組織など29団体が参加を決めている。会長に長野県の阿部守一知事、副会長に和歌山県田辺市の真砂充敏市長と栃木県那須町の平山幸宏町長が就く予定だ。
「二地域居住」を通じ、地方移住や関係人口増加を促す。居住者には農村の伝統行事や、地域の清掃活動などにも参加を促し、地域コミュニティーの活性化につなげたい方針だ。
協議会ではまず、先行して二地域居住が増えている自治体のノウハウ共有を進める。具体的には3月中にホームページを立ち上げ、関連施策や先進事例を紹介する。二地域居住を望む人が住宅を確保できるよう、空き家バンクの有効な活用方法などを発信する。
意見交換の場としても活用する。地域外からの居住者と地元住民がどう関係を深めていくかなど、二地域居住を推進・拡大していく上での課題と対応方法などを参加自治体、組織が話し合うことも想定する。
新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入する企業が増え、都市部に拠点を置きながら地方暮らしを検討する人が多くなっている点に着目。同省は、「二地域居住の潜在的な需要は高い」(地方振興課)とみている。
「全国二地域居住等促進協議会」として発足する。36都道府県と565市区町村に加えて、移住推進や空き家バンクの運営組織など29団体が参加を決めている。会長に長野県の阿部守一知事、副会長に和歌山県田辺市の真砂充敏市長と栃木県那須町の平山幸宏町長が就く予定だ。
「二地域居住」を通じ、地方移住や関係人口増加を促す。居住者には農村の伝統行事や、地域の清掃活動などにも参加を促し、地域コミュニティーの活性化につなげたい方針だ。
協議会ではまず、先行して二地域居住が増えている自治体のノウハウ共有を進める。具体的には3月中にホームページを立ち上げ、関連施策や先進事例を紹介する。二地域居住を望む人が住宅を確保できるよう、空き家バンクの有効な活用方法などを発信する。
意見交換の場としても活用する。地域外からの居住者と地元住民がどう関係を深めていくかなど、二地域居住を推進・拡大していく上での課題と対応方法などを参加自治体、組織が話し合うことも想定する。
新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入する企業が増え、都市部に拠点を置きながら地方暮らしを検討する人が多くなっている点に着目。同省は、「二地域居住の潜在的な需要は高い」(地方振興課)とみている。
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100歳プロジェクト 支え合う地域づくりを
JA全中は、健康寿命100歳プロジェクトの一層の推進に向けて報告書をまとめた。健康を軸に、組合員・地域住民・JAのつながりを深める。誰もが住み慣れた場所で、できるだけ長く、生き生きと暮らせる地域づくりに生かしたい。JAの組織基盤強化にも結び付けよう。
プロジェクトは、2020年度で開始から10年。健康寿命を伸ばすため「健診・介護」「運動」「食事」を3本柱に、JA介護予防運動やウオーキング、乳和食などさまざまなメニューを提供してきた。今回、内容を改善し、地域活性化に貢献する具体策を検討、報告書をまとめた。
健康の概念を身体中心から精神的なものにまで広げ、3本柱を「からだ」「こころ」「つながり」に再編。体と心の健康と、社会とつながる活動に取り組む。対象も高齢者というイメージが先行していたため、改めて「全世代」を提示した。プロジェクトによって、世代を超えた組合員・住民の仲間意識を醸成する。JAとの接点も増やし、信頼感を高めることで、アクティブメンバーシップを拡大、組織基盤の強化にもつなげる。
10年間を振り返ると、①取り組みにJA間、県間の格差がある②活動が助けあい組織や女性組織、担当部署にとどまっている③行政との連携が不足している――といった課題も見えてきた。健康を軸に地域づくりを進めるには、事業や部署の枠を超え、JAが一丸となる必要がある。
報告書では、農を軸とした健康に結び付く取り組み(アグリ・サイズ)を新たなメニューとして開発、農作業の準備運動、整理運動やフレイル(虚弱)対策となる料理レシピ紹介などを提案する。いずれも共済連や厚生連などの事業連との連携が期待できる。
団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢化が加速する「2040年問題」も見据える。国の推計では、40年時点で65歳の人のうち、男性は4割が90歳まで、女性は2割が100歳まで生きるとされ、“人生100年時代”が視野に入る。一方で、少子化などで現役世代は急減する。
プロジェクトが掲げる「つながり」が、同問題への対策の鍵の一つだ。JAが起点となり、健康を軸に、組合員・住民同士のつながりをつくる。例えば体の健康には健診や運動を、心の健康には社会参加など生きがいを得られる活動をJAが働き掛け、それぞれの取り組みの場所や場面でつながりを生み出す。それを網の目のように張り巡らせ、老若男女問わず支え合う地域づくりにつなげる。
組合員・住民の健康を守り、誰もが安心して長く暮らせる地域づくりはJAの役割である。行政などと連携し、推進しよう。
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2021年04月10日
〈女性の力の及ぶところ はじめて平和の光あらん〉
〈女性の力の及ぶところ はじめて平和の光あらん〉。女性参政権の必要性を訴える「婦選の歌」の一節である。与謝野晶子が作詞し、1930年に発表された▼女性を含む普通選挙の実施はその16年後、敗戦翌年4月10日の衆院選である。きょうで75周年。39人の女性議員が誕生した。紅露みつもその一人。学徒出陣で息子を失い、反戦への強い思いで立候補した。『新しき明日の来るを信ず―はじめての女性代議士たち』(岩尾光代著)で知る。「あとにつづくお母さんたちにこの悲しみをさせてはならない」。紅露の言葉だ▼榊原千代は女性差別に憤り「政界と家庭の浄化」を訴えた。暴力で家庭に君臨したり、愛人を妻と同居させたりする男性も少なくない状況に我慢ならなかった。同書にそうある。人口の半分は女性。その意見を政治に反映させる一歩だった▼その後の歩みは遅い。国会議員に占める女性の割合は、今年1月が日本は9・9%(衆院)で190カ国中166位。候補者男女均等法が3年前に施行され、男女数の「できる限り均等」を目指す▼「婦選の歌」には〈男子に偏る国の政治 久しき不正を洗い去らん〉との歌詞も。秋までに衆院選がある。「政治を洗濯」できるか。各党が問われる。
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2021年04月10日
干し芋 うま~い アイデア 販売方法で“巣ごもり”消費者つかめ
サツマイモを蒸して乾燥させた干し芋が、新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要で売り上げを伸ばす。干し芋を手掛ける茨城や栃木の農家は、新たに接触を避ける消費者に向けて自動販売機を活用したり、筋トレ愛好者向けの独自商品を開発したりするなどして消費者の心をつかんでいる。(木村泰之)
自販機設置 売り上げ増 接触少ない買い物
飲み物と干し芋が買える自動販売機。黒澤さんが商品を整理していた(茨城県ひたちなか市で)
農水省によると、2019年産の茨城県の干し芋の生産量は3万2118トンで、全国の87%を占める。中でも400戸以上の干し芋農家がいるひたちなか市でサツマイモ「べにはるか」を約5ヘクタール作る黒澤太加志さん(43)は、国道245号沿いに1月から自動販売機で干し芋を売る。黒澤さんは「干し芋と飲み物が一緒に買える自動販売機は他にないだろう」と胸を張る。飲み物の缶やペットボトルの他、平干しと丸干しの2種類が選べる。透明なカップや箱に入った140グラム入りと170グラム入りが、1個650円で購入できる。
自販機を置いた国道沿いは、観光地の国営ひたち海浜公園に近い。黒澤さんは、店舗の営業時間外でも往来客が買うと見込んだ。赤と黒に塗られた目を引く自販機で売る干し芋は売り上げを伸ばし、観光客だけでなくコロナ禍で、人との接触を減らした買い物を望む客などが訪れる。3月中旬の時点で約90個売れて、1日に2回補充することもあった。
自販機設置を機に観光客が買うようになり、リピーターとなって通販でも購入したことで、20年は前年比1・5倍の3000万円を売り上げた。「茨城の人にとって干し芋は冬の食べ物。だが、全国では年中食べるものになってきた。以前は5月で加工を終えていたが、あまりの売れ行きに周年で加工したい」と話す。
筋トレの“相棒” 購買層絞り商品開発
購買層を限定した干し芋も生まれた。栃木県壬生町の約4ヘクタールで「べにはるか」を有機栽培する戸崎農園は、トレーニングをする人向けの干し芋「フィジーモ」を2月から販売する。農園の戸崎泰秀さん(46)は「干し芋フェアを開いた時、筋肉質な人が続々と買っていった。そんな人向けに売れるのでは」と企画の経緯を話す。干し芋は、糖の吸収が穏やかで血糖値の急上昇を抑えられるといわれる。
ダンベルを上げながら干し芋を口にする中川さん。「かみ応えがある干し芋はトレーニングに最高でもはや主食」と語る(栃木県壬生町で)
1袋50グラム入りを6袋1400円で販売する「フィジーモ」は、鍛えた肉体のバランスの美しさを競う競技のフィジークに由来する。購入した栃木市の中川博登さん(46)は「干し芋を筋トレの相棒にしてから便通が良くなり、100キロあった体重が78キロになった。糖質制限をしながら固形物が食べたいときに干し芋はぴったり」と勧める。
筋トレに励む人の声を踏まえたフィジーモは、かむ回数を増やそうと乾燥時間を長くした。カロリーコントロールや保存のしやすさを考え、チャック付きの小分け包装にした。
戸崎さんは、コロナ太りの解消でスイーツを自粛する層に受け入れられてきたとして、「20年は干し芋だけで年間2000万円を売り、昨年の2倍増だった。売り方を工夫すれば干し芋は挑戦しがいある品目だ」と力を込める。
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2021年04月08日
満蒙開拓と感染症 災禍の中教訓考えよう
国策で農業移民として旧満州(中国東北部)に送られ、多くの犠牲者を出した満蒙(まんもう)開拓団。テレビの取材を通し、ソ連侵攻後の避難先の大都市で18万人が飢えや寒さ、感染症で亡くなった事実に光が当たった。新型コロナウイルス禍の中、今につながる教訓を考えたい。
18万人は、満州最大の都市・奉天(現瀋陽)などの大都市で亡くなった。ソ連侵攻による満州での日本人死者は6万人で、その3倍に当たる。
日本農業新聞は、3月27日掲載の「都市で死者18万人なぜ 満蒙開拓団『見過ごされた事実』から迫る」で、番組を企画したディレクター矢島良彰さんの取材の内容や視点を紹介した。日本社会の今の問題につながると考えたからだ。番組は翌日、NHK―BS1「満州 難民感染都市」のタイトルで放送された。
記事掲載と番組放送の後に読者から声が寄せられた。その中から、今の問題との類似性への指摘に着目したい。
番組では、国に見放され命からがら避難した開拓団員が「避難先の奉天でぜいたくをしている」とデマを流された事実を紹介した。東日本大震災の被災地支援を続ける人は「真っ先に思い出したのは、東京電力福島第1原子力発電所の事故で避難した人が『賠償金でぜいたくをしている』と誹謗(ひぼう)中傷された事実。お互い犠牲者なのに差別が起きてしまう構図がまったく同じだ」とみる。
難民収容所で発疹チフス、ペスト、コレラといった感染症が拡大、都市居留民は避難民を差別し、避難民には不信が募った。それが助け合いを阻む「見えない壁」となり、結果、居留民も感染者になった。新型コロナの感染者や医療従事者への差別と重なる。
こうした事実を矢島さんが知ったきっかけは、奉天で日本人居留民会が発行した難民救済事業要覧。大量死の直接の要因を「資金難による3カ月の救済遅れ」と記す。
「国民の命を守る」という責務を国が放棄した後、取り残され、苦難を強いられた人々。今に目を移せば、コロナ禍の中での解雇・雇い止めの拡大、貧困の深刻化、自殺者の増加……。国は責務を十分果たしていると言えるのか。国民は注視し、問題があれば声を上げなければならない。
矢島さんは日中両国の20人ほどから証言を得た。そこから、厳しい暮らしの中で現地の人が、日本人が帰国できるよう寄付を集めたり、孤児を育てたりするなど国を超えた助け合いの事実も分かった。
「さまざまな立場の人の話を突き合わせ、悲劇性だけに目を奪われないように」と矢島さん。今起こっていることを一人一人が冷静に、多角的に見る目を養おう。それが、助け合える社会につながる。
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2021年04月11日

[コロナが変えた日常] マスク越し、希望の香り
新型コロナウイルス禍でも前を向こう──。群馬県藤岡市にある農業高校、県立藤岡北高校で8日、同校フローラルライフコースの生徒の手による、花で彩られた入学式が行われた。式は保護者の数を制限し、マスク姿で開いた。
新入生120人は、カーネーションやトルコギキョウなど100本の切り花でアレンジしたアーチをくぐって体育館に入場した。ステージにも、生徒が種から育てたキンギョソウとペチュニアのプランター70鉢が並び、マスク越しでも分かる花の香りが新入生を包み込んだ。
花の装飾は、コロナ禍で行事がほとんどできなかった3年生を明るく送り出そうと、3月の卒業式から在校生が始め、今回の入学式でも取り入れた。
新入生代表として宣誓した秋山美智さん(15)は、花であふれた農業高校らしいステージを見上げ「花が大好き。見ただけで花の名前が言えるようになりたい」と期待に胸を膨らませていた。(染谷臨太郎)
コロナ禍による最初の緊急事態宣言から1年。未曽有の感染症が変えた食や農、暮らしの日常を写真で紹介する。
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2021年04月09日
地域の新着記事
3都府県「まん延防止」 コロナ禍出口どこに
政府は9日、新型コロナウイルス対策として緊急事態宣言に準じた対応が可能となる「まん延防止等重点措置」を東京、京都、沖縄の3都府県に適用することを決めた。対象区域の飲食店は、営業時間の午後8時までの短縮を求められる。影響を受ける外食産業や農家などの関係者からは、コロナの終息に向けた出口が全く見えない状況に「かなり厳しい」「これ以上は限界」といった声が相次いだ。
また時短、限界 消費しぼむ
外食
外食業界団体の日本フードサービス協会は「飲食店は『時短営業対応をいつまで繰り返すのか。いい加減にしてほしい』というのが本音だ」と明かす。感染防止対策でできることは既にやってきたが、これ以上は限界と受け止める。
時短の長期化で、銀行が追加融資を渋る事例が増えており、雇用調整助成金が当初予定の4月末で切れてしまえば、「飲食店が生き延びることはできない」と苦境を訴えた。
野菜仲卸
まん延防止等重点措置の東京都適用を受け、野菜の仲卸業者は「特に酒類を提供する飲食店からの注文は落ち込みが大きくなっている」と明かす。緊急事態宣言の解除後、注文は3割増と回復したが、「感染増加に伴い今週は再び落ち込んだ。大型連休の書き入れ時に重なるのは痛い」と漏らす。
卸売業者も「飲食店向けだった野菜が振り向け先に困り、葉物など足が早い商材は取引価格を大きく下げている」と話す。
酒造組合
度重なる飲食店への時短要請で、需要が大きく減る酒の業界は悲鳴を上げる。日本酒造組合中央会は「飲食店や旅行での消費が減り、酒造メーカーの経営はかなり厳しい。その状況が続く」と話す。高級日本酒を販売する東京都内の酒店は「昨年の春ごろは、自宅消費でインターネット販売が盛り上がったが、その勢いも収まった」と課題をみる。自宅向けの消費挽回に期待するものの、苦戦している状況だ。
作付けどうなる 策尽きた
生産者
東京都あきる野市の長屋太幹さん(39)は、約1ヘクタールでケールやリーキ、ビーツなどを生産し、都内のレストランに出荷している。時短営業の影響を受け、飲食店との昨年の取引額は例年の3分の1程度に落ち込んだという。
都がまん延防止等重点措置の対象となることを受けて「春から飲食店が復活することを期待して、頑張って作付けをしたが、なかなか厳しい」と声を落とす。
飲食店
買い物客がまばらな商店街(9日、那覇市で)
沖縄県では、今月1日から独自で飲食店への時短要請を実施している。JAおきなわの直売所で食材を毎日仕入れる糸満市の飲食店「味どころ田舎家」の高田見発店長は「要請が出た時点で店内での飲食自体を控える動きが増え、夜に加えて昼の客足も落ち込んでいる」と窮状を話す。昼は弁当販売に切り替えたが、1日20~30個ほどの売れ行きで、売り上げの減少をカバーできない。「できる限り経費を削減しているが、1年近く同じような状況が続き、もう手の打ちようがない」と語る。
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2021年04月10日

地域と移住者を橋渡し 各地で協力隊“卒業生”の組織設立
元・地域おこし協力隊員の組織化の動きが、各地で広がっている。地方への移住希望者と受け入れ側とのミスマッチ予防に活躍する。元隊員は、隊員の募集要項の見直しを助言し初の採用に貢献、また経験を生かして移住希望者の不安に寄り添うなどの活動を展開。政府が2024年度までに隊員数を8000人にする目標を掲げる中、“先輩移住者”として隊員の受け入れや定着を後押ししている。(丸草慶人)
「隊員」初採用導く 募集要項の見直しも
総務省によると元隊員らの組織数は、15年度の1団体から、20年度末までに19団体に増えている。隊員数が増える中、身近な相談窓口として同省は19年度、組織化を後押しする事業をスタート。都道府県単位の組織を設ける場合、150万円を上限に助成する。20年度までに10団体を採択。21年度も事業は継続する。
「自治体は隊員にあれもこれも多くを求めがち。隊員はスーパーマンではない」。佐賀県地域おこし協力隊ネットワーク代表の門脇恵さん(35)はこう指摘する。佐賀県で19年11月、元隊員らが同ネットワークを設立した。20年度、4市町の募集要項や活動内容の見直しを手伝った。
門脇さんの助言で神埼市は、活動項目を7から1に絞り込んだ。「イベントの開催と誘致」に限定し、仕事内容をイメージしやすくした。このことで、隊員の募集開始から4年目で初の採用につなげることができた。同市初の隊員となった福岡県出身の吉富友梨奈さん(31)は「移住希望者にとって、活動内容の分かりやすさは重要。サポートが充実していて安心できた」と話す。
悩みに共感心ケア 相談窓口を担当
元隊員は、移住希望者の不安にしっかり寄り添えることも強みだ。19年度の移住者が1909人と過去最高を記録した愛媛県。移住相談窓口を「えひめ暮らしネットワーク」が担う。
ここでは8人の元隊員が松山市の事務所に常駐。移住希望者が現地を視察する場合、ネットワークの元隊員が現地隊員の同行を手配している。
元隊員の組織化によって、隊員や自治体の情報が集まりやすくなった。このことを生かし移住希望者に適した地域や活動内容を助言し、ミスマッチの防止を目指す。不定期で訪れる移住相談にも臨機に対応でき、着実な移住につなげている。代表の板垣義男さん(46)は「希望者の悩みに共感して、視察先のありのままを答えることができる」と胸を張る。
持続可能な地域社会総合研究所・藤山浩所長の話
地方回帰を進める上で、地域おこし協力隊は重要な存在だ。地域実態に合った活性化の戦略を練り上げるには、隊員としての経験と知見が頼りになる。元隊員らが組織化することで、ノウハウを共有して学び合える。地域の意見と移住者のやりたいことを調整して導くことができ、受け皿となることにも期待できる。
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2021年04月09日

[コロナが変えた日常] マスク越し、希望の香り
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2021年04月09日

巧みに牛をさばく「技」絶やさず継承 マイスター制度設立 兵庫県食肉卸事業協同組合
和牛の流通を陰で支える「食肉処理技術」の継承に、兵庫県の業界団体が乗りだした。県食肉卸事業協同組合は、枝肉を各部位に切り分けるこの技術で特に優れた“職人”を認定する「兵庫県牛肉マイスター」制度を設立。高齢化などで人材不足が全国的な課題となる中“職人技”を次代につなぐ中核的人材を育てる。組合によると、食肉処理技術者の認定制度を都道府県単位で設けるのは全国で初めて。(北坂公紀)
中核人材の確保・育成へ
牛肉は、大きく分けて3段階で切り分けられる。まず、卸売市場で枝肉に加工。その後、食肉卸などに販売され、食肉処理技術者がヒレやモモなどの各部位に切り分ける。最終的には薄切り肉やブロック肉に加工され、スーパーや飲食店で提供される。
組合によると、県内の食肉処理技術者の数は長らく減少傾向にあり、高齢化も進んでいる。中尾徳弘理事長は「食肉処理技術の継承が危ぶまれた。いくら農家が高品質な牛を育てても、牛肉が食卓に並ばなくなる恐れがあった」と振り返る。
そこで組合は2018年度、県内の食肉処理技術者を対象に同制度を創設した。マイスターを若手の指導に当たる中核的人材に位置付け、業界の技術の底上げにつなげたい考えだ。
認定を受けるには、技術と知識が必要となる。食肉産業に携わる人材を育成する全国食肉学校の実技・筆記試験や県が実施する「神戸ビーフ」「但馬牛」に関する筆記試験に合格する必要がある。
この他、指導方法を学ぶため、同学校の講師を招いた3日間の講習を受ける必要がある。実技指導を交えて枝肉のさばき方をどう教えると分かりやすいのかを学ぶ。
20年度までの3年間で計9人が認定された。今年3月に認定された食肉卸・エスフーズ(西宮市)の高島和也さん(34)は「どう教えたらうまく伝わるのかを学べた。後輩の指導に生かしたい」と意欲的だ。
組合は、マイスターが持つ技術の継承に向けた取り組みも進める。マイスターを講師に招いたセミナーを定期的に開き、県内の食肉処理技術者が“職人技”を学べる機会を設けている。
中尾理事長は「食肉処理技術者は和牛流通を支える“縁の下の力持ち”だ。これからも技術を継承していきたい」と語る。
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2021年04月07日

業務需要低迷 コロナ克服へ品目転換 価格安定リスクを分散
新型コロナウイルス禍が2年目に突入した2021年、産地で生産品目を転換する動きが出てきた。飲食店向けから契約栽培の家庭向け品目に切り替えたり、販路が期待できる季節物野菜を取り入れたりと工夫。相場変動の少ない品目でリスクを分散し、コロナ禍を乗り越えようと奮闘している。(鈴木薫子)
高級野菜→加工キャベツ、花→新ショウガ
岡山市の山下和磨さん(37)は、首都圏で高級野菜として定着したエンダイブの栽培を減らし、JA全農おかやまと契約栽培する加工用キャベツの面積を拡大した。21年産のエンダイブは前年比15アール減の10アールとし、周年出荷をやめた。
家庭向けのカット野菜となる加工用キャベツは、前年比10アール増の35アール。引き合いが強まり高単価が見込める5月中・下旬の出荷を計画する。
サラダなどに使うエンダイブは、これまで出荷の9割が首都圏の飲食店向けだった。高級野菜として販売は安定していたが、コロナ禍で飲食店需要が激減。一時は出荷制限がかかり、山下さんは3600株を廃棄した。20年産の販売単価は例年の半値以下で、今も回復が鈍い。
全農おかやまによると、主にスーパーにカット野菜として並ぶキャベツは、コロナ下でも家庭消費が好調で、大きな影響は受けていないという。生鮮品の端境期である5月の出荷を計画する山下さんは「契約取引は、全量を買い取ってもらえ、単価が安定している。栽培計画を立てやすい」と期待する。
グロリオサで全国1位の出荷量を誇る高知市。西森茂人さん(35)は、20年産(19年9月~20年8月)のグロリオサをハウス約40アールで栽培したが、21年産はその3分の1を新ショウガに転換した。加温栽培は5月中旬、無加温栽培は7月末に出荷する計画だ。
西森さんら33戸が所属するJA高知市三里園芸部花卉(かき)部会はグロリオサを15ヘクタールで栽培。業務用で全国に周年出荷するが、昨春からイベントの中止が相次ぎ、同部会の20年産の売り上げは前年比で3割落ちた。
「花だけでは生活が苦しい」。前年から収入が4割近く減った西森さんは新ショウガ栽培を決めた。「旬の新ショウガは需要が旺盛で相場が変動しにくい」(JA担当者)ことが決め手だった。花きと同じ施設を使え、管理の手間も少ない。
JAは、新ショウガやピーマン栽培が盛んで、共選共販で販路が確立されている。同部会は、JAのサポートも受けやすいとして、西森さんを含む5戸がピーマンや新ショウガ栽培を新規で導入した。栽培指導するJA担当者は「安定単価の品目の導入でリスク分散を検討してほしい」と提案する。
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2021年04月05日
認定農業者が地域を守る 連携システム発足 新潟県佐渡市
新潟県の佐渡市認定農業者連絡協議会畑野支部は、農業者間で連携する「絆」システムの発足を総会で決めた。昨年の総会で予備提起をして、1年間検討を重ねてきた。農業経営者の死亡、病気、事故、災害など不測の事態の発生に対応し、農業者が互いに次年度以降の経営をサポートするのが目的だ。営農を継続することで地域農業を守る。
同支部には認定農業者が84人いる。……
2021年04月05日

熊本県ブランド和牛「くまもとあか牛」 子牛価格 前年3割高 赤身人気追い風も 頭数減少で不足感
熊本県のブランド和牛「くまもとあか牛」のもと牛となる褐毛和種の子牛価格が高騰している。直近3月の取引価格は前年比3割高の1頭約77万円と、高値が続く黒毛和種とほぼ同水準だ。健康志向や赤身人気で需要が高まり、子牛に不足感が出ている。「販売はまだ伸ばす余地がある」(食肉卸)との声もあり、増頭に向けた対応が求められている。(斯波希)
和牛の一種の褐毛和種は、国内で2万3300頭(2020年2月現在)が飼養され、その7割を熊本県が占める。特に「くまもとあか牛」は、赤身と適度なさしが特徴。消費者の健康志向の高まりとともに人気を伸ばし「新規の問い合わせも多く、需要期には数が足りない状況」(流通業者)という。
需要が高まる一方、生産者や飼養頭数は減少傾向で、子牛に不足感が出ている。19年の繁殖農家戸数は820戸で、この10年で4割減少。繁殖牛頭数は同1割減の1万1059頭となった。
JA全農によると、熊本県内で取引される子牛価格は16、17年にかけても70、80万円台の高値となったが、18年以降は60万円前後で推移。その後、新型コロナウイルス下でも比較的枝肉の販売が堅調で、20年12月以降は、再び80万円近い高値が続いている。
3月の平均価格は1頭約77万円と前年比32%、同月の過去5年平均比でも21%高い。19年度の平均価格は黒毛和種を2割下回っていたが、21年3月は黒毛和種の価格(同79万3362円)に迫る水準となっている。
肥育牛の産地関係者は「80万円で導入した子牛は120万円前後で販売するのが採算ライン」と指摘。「ただ最終的な肉の販売価格が高くなり過ぎると、黒毛とのすみ分けが難しくなってしまう」と懸念する。
「くまもとあか牛」を扱う九州の食肉卸は「今後も赤身人気のトレンドは続く。頭数が減少傾向にあることに販売側も危機感を持っている」と話す。県は「引き続き、優良雌牛の導入を後押しする事業などを通じ、生産基盤を強化していく」(畜産課)としている。
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2021年04月03日

中古ノリ網 鳥獣対策でリサイクル 田畑への侵入防止に農家が活用 兵庫のJA直売所でヒット
漁業用の網がJA直売所でヒット──。兵庫県三田市にあるJA兵庫六甲の直売所「パスカルさんだ一番館」では、ノリの養殖に使う「ノリ網」が農家から人気を集めている。この網は漁業現場で使い古されて本来なら処分される中古品だ。農家からは、鳥獣害対策に使える低コストな資材として人気を集めている。JA直売所を舞台に農業界と漁業界が結び付いて、資源の有効利用に向けた好循環が生まれている。(北坂公紀)
同直売所では2016年、兵庫県漁業協同組合連合会(JF兵庫漁連)が直営の鮮魚店をオープン。一つの直売所のなかに“農協系”と“漁協系”が同居していることが特徴だ。
ノリ網を販売するのは、JF兵庫漁連だ。農家の利用が多いJA直売所内に出店する立地条件に着目した。廃棄せずに農業現場で有効活用できないかと考えて、中古のノリ網の販売に乗り出した。
ノリ網の網目は、およそ15センチ四方。田畑の周囲に張って、鹿やイノシシの侵入を防ぐことに使われる。直売所での販売に当たっては、塩分が残っていると鳥獣を引き寄せてしまうため、念入りに洗浄している他、破れた箇所の修繕も行っている。
価格は1枚(幅1・6メートル、長さ20メートル)720円と安価だ。野生鳥獣による農作物被害が増える秋ごろには、月40枚ほど売れるという。JF兵庫漁連で同直売所を担当する荒巻伸一さん(44)は「直売所が立地している地域は、農作物で鳥獣被害が多い。リピーターや問い合わせが相次ぐなど、ノリ網は農家から好評だ」と手応えを見せる。
JF兵庫漁連によると、兵庫県のノリの生産量は全国2位。瀬戸内海沿岸で生産が盛んだ。生産の鍵を握るのがノリ網で、種を付着させた網を海に設置してノリを育てる。ノリ網は平均2、3年で更新され、使い終わった網は廃棄されている。
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2021年04月03日

農作業、地域振興… 地方公務員副業の波 ミカン収穫支援 コロナ禍、貴重な人手 和歌山県有田市が解禁
政府が副業を推進する中、地方公務員にも農業や地域活性化にまつわる副業解禁が広がっている。和歌山県有田市では特産のミカンの収穫を支援、神戸市も地域貢献応援制度を設けている。人口が減少し、新型コロナウイルス禍で外部からも人を呼び込めない中、地元で活躍する地方公務員に期待が高まる。(本田恵梨)
地方公務員の副業は法律で原則禁止されているが、首長らが認めれば可能になる。総務省によると、副業を許可する基準を設定している自治体は、2019年4月時点で全体の39%に当たる703団体。多様な働き方を求める声や民間での副業の広がりを受け、総務省は1月に具体的な許可基準を設定するよう通知を出した。……
2021年04月02日

[活写] 移ろう時 映す水面 小湊鉄道飯給駅
一足早く水を張った田んぼに、満開の桜と列車が映る──。千葉県市原市の小湊鉄道飯給(いたぶ)駅周辺では、花いかだが田植えの準備が始まる春本番を告げている。
駅は1926年開業し、現在は無人。周辺には約20本の桜があり、平時の乗降客は1日6、7人ほどだが、桜の季節には大勢の見物客が訪れる。横浜市から来た女性(76)は「趣味の水彩画の参考にしたい」と、盛んに写真に収めていた。
市観光協会によると「飯給の桜」が、知られるようになったのはこの十数年ほど。地元有志が菜の花を植えたり、草刈りをしたりして美化に取り組んだ。田んぼの水は、所有する農家がこの時季に合わせて張っている。(仙波理)
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2021年04月01日