[論説]24年JAの展望 協同の力発揮する時だ
JA全国大会は3年に1回開き、中長期的なJAグループの方針、目標を決議し、採択する。JA全中の山野徹会長は年頭のあいさつで、「JA経営・組織基盤、食料安全保障、地域社会の将来などの課題が山積する中、重要な大会になる」と強調した。全国大会議案の策定作業は既に本格化しており、論点整理を経て方針や目標を具体化し、今夏にも組織協議に入る。
JAの経営基盤の強化は待ったなしの課題だ。自己改革の加速で経済事業の収益力は強化されたが、信用・共済事業の環境の厳しさは増している。各事業の専門性が増す一方で、縦割りの組織運営では課題を解決できない。総合事業の強みを生かした事業間連携の加速・拡大を強く打ち出すべきだ。
組織基盤の強化へ、准組合員・地域住民との接点を増やし、多様なニーズを事業運営に生かすことも必要だ。JAが地域住民の暮らしに欠かせない存在であることを改めて示し、住民の信頼だけでなく、JAで働く人たちのやりがいにつなげたい。
食料安全保障の強化を主導することも、JAグループの使命となる。食料・農業・農村基本法は今月召集の通常国会で改正が見込まれる。輸入依存からの脱却や耕畜連携、多様な農業人材の確保など改正法が目指す姿を具現化するのは、地域に根差し、全国的なネットワークを持つJAグループの役割だ。担い手や農地など、地域農業の将来を支える「次世代総点検」も継続すべきだ。
全国大会決議の実践期間は2025~27年度の3年間となる。初年度は国連の国際協同組合年に当たる。新型コロナ禍では分断や孤立、格差の拡大を招いた。持続可能な開発目標(SDGs)への関心の高まりを受けて、相互扶助を理念とする協同組合の価値の再認識につなげたい。
協同の力は、有事にこそ強く発揮される。地震や台風、豪雨などに伴う被災地の復旧・復興に向け、地域だけでは解決し切れない課題を全国の協同組合が連携し、克服してきた経験がある。
元日に発生した能登半島地震では、被災地域の農業、農村を全国の協同組合としてどう支えるか、喫緊の課題に直面している。
「一人は万人のために、万人は一人のために」。協同組合の真価が試されている。