[論説]能登半島地震2週間 姉妹提携で常に備えを
スムーズな支援につながる有効な手立ては、平時から姉妹都市や姉妹JAなどの提携を結んでおくことだ。今回の地震も、こうした提携が奏功し、迅速な物資や人的支援につながった。
山梨県南アルプス市は5日、姉妹都市の石川県穴水町に食料や水、毛布、ブルーシートを送った。JA南アルプス市はトラックへの積み込み作業用にフォークリフト1台を貸し出し、運転者兼作業員として職員2人を派遣した。両市町の姉妹都市提携に、地元JAが協力した。
姉妹都市提携のきっかけは、山梨県八田村(現・南アルプス市)が全国で最も「穴水」姓が多かったため。協定は1993年に締結し、今も続いている。南アルプス市で穴水町特産のカキを販売する催しを定期的に開くなど、特産物の販売を通じ、交流を深めてきた。
茨城県龍ケ崎市も、被災した富山県高岡市の給水所に市職員4人を派遣し、給水支援を始めた。縁を結んだのは両市が力を入れるコロッケ。2008年から交流を開始し、東日本大震災で龍ケ崎市が断水した際には、高岡市が給水車を派遣して支えた。
被災地からの距離は遠くても、姉妹都市提携で連絡を取り合ってきた関係だからこそ、必要な支援を迅速にできた。日頃からトップや担当者間で親交を深めておくことが有事への備えとなる。
東日本大震災の時も、JA横浜が姉妹提携を結んだJAいわて花巻に義援金と生活物資を送った。JA横浜は震災前から米やリンゴ、加工品を農産物直売所で販売。特設コーナーを設置して取り組みをアピールし、組合員にも浸透していた。提携するJAが被災したことで「いてもたってもいられない」と、数百万円を募金した組合員もいた。
JAの姉妹提携は、平時は農産物の販売や情報交換が主だが、人材交流や商品開発、施設の共同利用、催しの共同開催など多くの事業で連携が可能だ。地震や気象災害はいつ、どこで起きてもおかしくない。地域の内外と幅広くつながることは、災害に遭っても復旧する力が違う。
早期の復旧・復興には自助、共助、公助が欠かせない。自治体やJAの姉妹提携は互いの事業伸長に加え、有事の際のセーフティーネット構築も期待できる。できるところから提携しよう。