[論説]能登半島地震から半年 災害関連死 繰り返すな
内閣府によると、災害関連死とは、地震や豪雨など自然災害による直接死とは別に、けがの悪化や避難中の疾病等で亡くなることを指す。災害弔慰金の支給等に関する法律に基づく認定が必要で、認められれば遺族に対して弔慰金が支払われる。ただ、審査基準は自治体ごとにばらつきがあり、誰もが分かりやすい基準作りが必要だ。
石川県は5月23日以降、3回開いた審査会で70、80代を中心とした計70人の認定を答申され、うち52人を正式決定した。死者は熊本地震を超える281人となり、後の18人も決定される見通しだ。他にも100件以上の申請があり、最終的に災害関連死だけで200人を超える恐れも出てきた。
さらに懸念されるのは、依然として学校などの1次避難所で1038人、ホテルや旅館など2次避難所で1222人が避難生活を送っていることだ。関連死に認定された人の理由は「避難所生活による生活環境の激変で心身の負荷が生じた」「避難所で転倒して自力で動けなくなった」「避難所で感染症にかかった」など避難所の課題が並んだ。
内閣府の集計によると、熊本地震では災害から死亡まで半年以上に及んだ災害関連死者は全体の1割を占めた。これ以上の犠牲は何としても食い止めなければならない。
神戸を拠点に避難所支援を続ける一般社団法人「日本避難所支援機構」は、阪神大震災以降「避難所の設備や態勢が進んだ」と評価する一方、「禁止事項が増えるなど管理が強化されている」と批判する。能登の被災地でも、小学校の避難所に給食調理室があるのに火災を懸念して使用を禁じたり、食中毒を防ぐためとして地域の畑で取れた野菜などの持ち込みを制限したりした避難所が目立ったという。
同機構事務局長の金田真須美さんは「住民の自由度が奪われた避難所ではストレスがたまって無用ないさかいも起きる。けがにつながったり、持病が悪化したりする要因として見過ごせない」と語る。
一方で、自由度の高い避難所は「住民同士がお互いに助け合い、高齢者も元気に暮らしている」と指摘。避難所の設備や運営の在り方についても、被災者の心と体をケアできているのか、検証する必要がある。能登半島地震を教訓に、負の連鎖を断ち切らねばならない。