米概算金大幅下げ 稲作経営維持へ対策を
JA全農県本部や経済連がJAに示した21年産の概算金は前年産から2、3割下げた。主要銘柄は1等60キロ当たり1万円前後が中心だ。業務用銘柄はさらに低い。JAの経費などを控除して農家に支払われる金額は、多くがもう一段低くなる。大規模農家でも、経営を維持できるぎりぎりの水準との指摘がある。
減収の9割を補填(ほてん)する収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)に加入していると、一定カバーされる。ただ農家負担があり、実質補填は7割弱。また対応できるのは20%までの減収で、それを超えると補填しきれない。加入率は生産量換算で5割程度。収入保険を合わせても6割(19年産)にとどまる。両者とも加入対象に要件がある。
ナラシ対策の補填金の交付は来年6月ごろになる。資材費や人件費などの支払いで資金繰りを懸念する声が、大規模農家らから上がっている。
21年産は過去最大規模の転作拡大に産地が取り組み、需給均衡に必要とされる6・7万ヘクタールをほぼ達成する見込みだ。それでも概算金を下げざるを得ないのは、人口減などによる消費の減少に加え、新型コロナウイルス禍による業務需要の低迷で、国の見通しを超えて需要が減ったことが要因だ。今年6月までの2年間で20万トン程度下振れした。
結果、6月末の民間在庫量は219万トンと、適正水準(180万~200万トン)を大きく超過。20年産の持ち越し在庫の多さから余剰感が強まり、概算金を慎重に設定する産地が相次いだ。追加払いの可能性を探る産地もあるが、販売環境の好転が必要だ。
しかし国の対策は不十分だ。農水省は、長期計画的に販売する際に保管経費などを助成する米穀周年供給・需要拡大支援事業を拡充したが、消費が増えないと効果は出にくい。産地や与野党国会議員からは市場隔離を求める声が上がる。21年産の販売シーズンで余剰感が解消するかも見通せない。22年産でも、在庫を減らすための転作拡大が必要になる可能性がある。一方、農家には限界感も見られる。
過去最大規模の転作拡大に取り組んでも米価が下落し、22年産でも強化されるとなると、稲作経営への影響だけでなく米政策への信頼も揺らぎかねない。低米価が定着する前に政府・与党は、需給の改善策を取るべきだ。また現行米政策は、生産調整の実効性や、予期せぬ需給緩和への対応力が不十分だ。見直しに向けた検証を求める。