加工・業務用野菜 シェア奪還へ対応急務
農林水産政策研究所の試算では、30年ほど前は5割だった加工・業務用需要の割合は増加傾向が続き、全体の6割を占めるまでになった。このうち国産の割合は7割で、100%近い家庭消費に比べてシェア拡大の余地は大きい。残り3割をどう国産に切り替えるかが課題だ。
政府は、農業生産基盤強化プログラムで、2030年までに加工・業務用野菜の出荷量(直接取引分)を145万トン(18年98万トン)に拡大するとの目標を定め、生産体制の強化に取り組んでいる。
その一環で農水省は、輸入の割合が高いタマネギの国産化を20年度から推進。国内で流通するタマネギの輸入品の割合を、18年度の22%から24年度までに11%に半減させるとの目標を設定した。
達成には約3100ヘクタールの面積拡大が必要だとして、50ヘクタール級20産地と20ヘクタール級107産地の育成を目指す。水田地帯を中心に新産地を掘り起こし、低コスト生産化や加工・乾燥などの施設整備を支援。特に北海道、東北・北陸で、大規模を含む産地創出を見込む。
また野菜・施設園芸支援対策事業で、水田を活用した新たな園芸産地の育成や、まとまった面積での機械化一貫体系の導入、端境期の野菜の生産拡大などを推進する。
JAグループも対応に力を入れる。JA全農は、加工時の歩留まりが良い通常の2倍の重さのブロッコリーの産地づくりと販路拡大を進める。全農直営による国産青果物冷凍工場の設置(24年度下期めど)を検討するなど、冷凍事業も構想。同事業を含めた加工・業務用の産地づくりを進め、「輸入青果物からのシェア奪還」を目指す。
加工・業務用野菜の実需者に、国産利用の意向はある。また、食品表示法の改正で22年4月には、全ての加工食品に原料原産地の表示が義務化される。国産ニーズが高まるのは必至で、国産の需要を拡大するチャンスだ。
加工・業務用野菜の取引は定時・定量・定品質・定価格の「4定」が重要とされる。野菜の作付面積は微減が続く。天候不順の影響も受けやすい。「4定」の履行には産地の努力だけでなく、卸売会社など流通業者の協力が必要だ。専用品種や栽培技術の開発、調整施設の整備などソフト、ハードの両面で行政の支援も欠かせない。官民一体で「4定」に挑戦し、成果を早期に上げることが求められる。