果実の価格上昇 生産基盤の強化が急務
日本農業新聞が全国の主要7卸の取扱高をまとめる日農平均価格によると、2010年に比べ20年は、普通ミカンが23%、リンゴが25%上昇。サクランボとブドウ「デラウェア」はともに34%、梨と桃は40%以上高い。価格上昇が目立つようになったのは16年ごろからで、年や品目で上げ幅は異なるが取引は堅調だ。
主因は栽培面積の減少による生産減。農水省の調査で20年の結果樹面積は、10年前に比べミカンが18%、リンゴが6%、梨が23%、桃が7%それぞれ減った。一方、産出額は10年前に比べ梨や柿は減ったが、ミカンは2割、リンゴは3割、ブドウは5割それぞれ増加。産出額が増えた品目に共通するのは、良食味品種の導入など高級路線を展開している点だ。生産減を単価高で補う産地づくりが進む。
生産者にとって価格上昇は喜ばしい。ただ高値が続くことで、消費者の果実離れが懸念される。中央果実協会の昨年のアンケートでは、「果物を毎日は食べない理由」として「他の食品に比べて値段が高い」が最も多かった。
健康増進などを目的に政府が策定する食事バランスガイドでは、果実の1日の摂取目標は200グラムだが、現状は半分だ。国民の健康を考える上でも消費拡大が求められる。
一方、存在感を高めているのが輸入品だ。生鮮・乾燥果実の輸入量は15年以降は微増傾向で、20年は186万トン。自給率は4割を下回る。関東のあるスーパーでは、以前は国産がほとんどだったブドウとリンゴの販売割合が変化。輸入品がそれぞれ10年前の5%から25%に、ゼロから6%になった。かんきつ類でも、国産ミカンがない時期を、簡単に手で皮がむける品種の輸入品が埋め、通年販売できる環境が整いつつあるという。
輸入果実から需要を奪い返すには第一に生産拡大が必要だ。昨春決めた果樹農業振興基本方針で政府も、生産抑制から、供給力を回復し生産基盤を強化する施策に転換する考えを表明。食料・農業・農村基本計画で、30年度の果実の生産努力目標を18年度比9%増の308万トンと定めた。
果樹の園地は傾斜が急な所が多く、規模拡大や事業継承、労力確保は容易ではない。成木までに数年かかる品目も多い。生産基盤の強化に向けて政府は、生産現場が活用しやすいことを含め、実効性が高まるように対策を急ぎ拡充・強化すべきだ。