農畜産物トレンド 持続性を国産の価値に
この調査は「農畜産物トレンド調査」という。今年で15回目。スーパーや生協、外食、卸売業者などの販売担当者を対象に、野菜、果実、米、食肉、牛乳・乳製品、花きの6部門で行い、約150社から回答を得た。
今年の特徴は、新型コロナウイルス関連に加え、「持続可能性」や「地産地消・国産志向」といったより良い社会につながるキーワードに注目が集まった点だ。国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)が浸透し、倫理的な消費行動「エシカル消費」の意識も高まったことが背景にある。こうしたキーワードを商品訴求のポイントとして重視する企業・団体も増えている。
日本生活協同組合連合会は、環境負荷の少ない栽培方法で作った農産物を使った食品などを「コープサステナブル(持続可能性)」としてシリーズ化した。百貨店や大手スーパーも「サステナブル」を特集したフェアの開催や特設サイトでPRする。
国内農業は、化学肥料・農薬を減らした栽培や堆肥の施用などに取り組み、輸送距離が短くて済む直売所での販売も盛んだ。規格外品の加工利用も進む。一方で地球温暖化の抑制や生物多様性の保全には、環境負荷を減らす一層の取り組みが求められる。持続可能性の観点から産地は生産や産地づくりの取り組みを点検、取引先などと連携し、国産の価値を高め、消費者の選択につながるよう生産・販売戦略を組み立てよう。
調査からは部門ごとに重視すべき点も読み取れる。野菜は「糖度」。糖度で訴求できる品目はサツマイモやトマト、カボチャ、トウモロコシなど複数あり、それぞれの特徴を生かした戦略が必要だ。
果実は「多角化」。高価格帯のブドウ「シャインマスカット」やかんきつ「紅まどんな」などの注目度が高いが、「手頃な価格帯の生産拡大」も重視される。高価格帯だけでなく、消費者が買い求めやすい品種の増産も重要だ。
米の消費拡大策は「健康への貢献PR」で、食肉は「プチぜいたく」や簡便調理品など家庭消費を盛り上げる提案が鍵だ。牛乳・乳製品は「機能性」。花きは家庭用の販売と物流の効率化である。
「おいしさ」や「安全・安心」は国産の基本的価値で、そこに「持続可能性」が加わった。その上で、それぞれの部門や品目で何を訴求するかを明確にすべきであろう。