止まらぬ飼料高騰 自給体制の構築を急げ
配合飼料供給安定機構によると、1月の配合飼料価格(全畜種平均)は1トン当たり8万3381円で過去最高を記録した。わずか1年で18%も上昇。JA全農が発表した4~6月期の供給価格は1~3月期比で同4350円上げ過去最高を更新する。他の飼料供給業者も同様の状況だ。
高騰の要因は複合的で、早期に価格が落ち着くような状況ではない。トウモロコシは南米の作柄悪化の懸念や米国の経済回復に伴うバイオエタノール需要に加え、ウクライナ危機が相場を押し上げる。大豆かすも、中国の旺盛な需要や南米の生産量見通しの下方修正で急騰。原油高騰で海上運賃は上昇し、急激な円安も輸入にはマイナスに働く。
いずれも海外の情勢に左右され、国内の農家にはどうしようもない。粗飼料の輸入乾牧草をはじめ他の生産資材も軒並み高騰し、ウクライナ情勢によって一層の悪化も予想される。配合飼料価格安定制度などの公的な支援策が農業経営への打撃をしっかり緩和できているか、財源が万全かも含めて検証が必要だろう。
同時に飼料の輸入依存からの脱却も求められる。今後、人口増や途上国の経済成長で世界の食肉市場は拡大。一方、食糧であり飼料原料ともなる穀物生産の伸びには限りがある。温暖化で異常気象が頻発し、日本の経済力低下も懸念される中、海外から高騰前のような価格で安定的に確保できる保証はない。
2020年度の飼料自給率は25%にとどまる。子実用トウモロコシや飼料用米などの濃厚飼料、牧草や青刈りトウモロコシ、稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ=WCS)用稲といった粗飼料ともに国内で増産が不可欠だ。粗放的な管理で育つ品目もあり、条件不利地で栽培し耕作放棄地となるのを防ぐ役割も期待できる。機械導入から耕種・畜産農家のマッチングまで、中長期にわたる幅広い支援が必要となる。
主食用米の需要が長期減少傾向の中、転作品目としても飼料作物の重要性は増す。だが農水省は22年産から子実用トウモロコシへの助成を拡充する一方、飼料用米の複数年契約加算は減額した。主食用米への回帰を防ぐ狙いや財政負担の増大への懸念が背景にあるが、産地には戸惑いが広がる。飼料自給率の向上を通じた食料安全保障強化の観点から改めて評価し、継続的に生産を支援するべきだ。