もやし生産者苦境 適正な価格転嫁が急務
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う輸送費の上昇、ロシアのウクライナ侵攻に伴う燃油や資材の高騰、急激な円安が加わり、あらゆる商品の原料コストが上昇している。大手食品メーカーは、食品の値上げを相次いで打ち出しているが、なかなか価格に転嫁できない商品もある。その代表格がもやしだ。
1袋30円程度。中には20円台の店もある。1995年と比べ原料の緑豆価格は3倍となったが、価格は2割安。もはや「企業努力で持ちこたえられない」と工業組合もやし生産者協会の林正二理事長。
取引先に対し、納入価格の1、2割程度、価格で2~4円分を上乗せしたいという要望も、なかなか応じてもらえないという。「もやしだけは目玉商品として安く売りたい」という流通側の気持ちも分かるが、もやし生産者を圧迫し続け、経営が危ぶまれる状況が続けば、国内でもやしは生産できなくなる。生産者ばかりにしわ寄せがいく取引は見直しが必要だ。
もやしだけではない。巨大スーパーのバイイングパワー(購買力)を背景に、中小企業が多い豆腐や納豆などもなかなか価格転嫁ができない。「水より安い」といわれる牛乳、“物価の優等生”の卵、最安値の米。いずれも、コストの増加分を価格に反映できていない状況が続いている。
「1円でも安いほうが良い」。スーパーのちらしを見比べて安い商品を求める消費者もいるだろう。「目玉商品を1円でも安く提供したい」という姿勢は商売の基本だ。
しかし「国内の農家を支えるためには多少の値上げは受け入れよう」と理解を示す消費者が増えなければ、もやしなどの食品を安定供給できなくなる。実際、1995年に550だったもやし生産者は110まで減った。コスト増に応じた値上げは必要で、スーパーは消費者に対して理解を促すべきだ。
長年のデフレや経済停滞にコロナ禍が追い打ちをかけ、労働者の給与は伸び悩み、職を失うなどして食費を切り詰めざるを得ない状況もある。貧富の差は拡大し、二極化は進む。一方、円安が加速すれば原料高はエスカレートし、生産者の負担はさらに増える。政府は早急に対策を講じる必要がある。
安さの裏で誰かが泣いている事態は、持続可能な経済活動とはいえない。適正価格に改善すべきである。