危ない畦畔管理 安全第一の意識持とう
耕地に比べて機械化が進まないとされてきた畦畔は、遠隔で操作できる無線草刈り機やトラクターに装着する草刈り機などが開発され、軽労化、省力化が可能となった。
ただ、米価下落や燃油・資材の高騰で厳しい農業経営を強いられる中、収入にならない畦畔への投資は難しい。特に急な傾斜地が多い中山間地などでは、肩掛け式の従来の刈り払い機に頼る生産者は多い。農地整備により傾斜が急なのり面が増え、事故のリスクも高まっている。
農水省によると、農作業中の事故で20年は270人が亡くなり、うち刈り払い機による事故は7人だった。事故全体に占める割合は3%以下だが、傷害事故や「ヒヤリハット」を含めれば、刈り払い機を使った作業は、かなりの危険が潜んでいる。
農機メーカーなどでつくる日本農業機械工業会は、ホームページで刈り払い機の正しい使い方を紹介する動画とリーフレットを掲載し、安全作業を呼びかける。作業前の点検からヘルメットや防護ゴーグルなど安全装備の着用、作業中、作業後、長期格納時のポイントを説明する。
20年の農作業事故を見ると、熱中症で32人が亡くなった。これから気温は高くなり、安全装備を着用した除草作業は熱中症のリスクを伴う。
自治体などは必ず2人以上で、互いが見える範囲で15メートル以上離れて作業するよう呼びかける。万一を考え、携帯電話で連絡を取れるようにしておく他、作業の終了や帰宅の時間を家族に伝えておくことも習慣づけよう。
来年以降の省力化を見据え、地表を覆うグラウンドカバープランツ(地被植物)や防草シートの導入も考えたい。カバープランツは、植え付けから畦畔全体を覆うまでに数年かかるため、行政などの支援が求められる。
5年間の営農継続を要件に条件不利地での営農継続を支援する中山間地域等直接支払制度では、急傾斜地(傾斜が20分の1以上)の田の20年度の交付面積が、14年度に比べて12%減った。
畦畔が平均で農地の1割を占める広島県では4月、県議会の農林水産委員会で、農事組合法人の代表らが「畦畔を管理しきれない」と窮状を訴えた。国の多面的機能支払交付金など支援策もあるが、農地と共に畦畔管理をどうするか考えるべき時に来ている。
命を守るため、まずは安全対策の徹底から始めよう。