[参院選]問われる米政策 水田農業 長期展望描け
日本農業新聞が6月に実施した農政モニター調査によると、岸田政権の農業政策を6割が評価していなかった。評価しない理由の過半を占めたのが「米政策」だ。全国農政連が水田・畑作農業対策について各党に質問したところ、「水田から畑地への円滑移行を支援」(自民)、「水田活用・畑作物の直接支払交付金など(中略)予算確保」(公明)、「水田活用直接支払交付金の法制化」(立民)、「水田や農地などの転用規制を厳格化」(維新)、「品目支援の充実」(国民)、「政府による米の緊急買い入れを実施」(共産)など“対症療法”的な回答が目立った。
政府は「米需給は市場に委ねて政府の関与を弱める」「飼料用米に転作する財源が厳しい」など消極的な姿勢に終始する。だが、主食の米を安定供給できることこそ、食料安保そのものではないか。
ウクライナ危機で食を巡る状況は一変した。輸入穀物は高騰し、輸出規制に踏み切る国が相次ぐ中、米を再評価すべきだ。災害などの非常時に米が品薄になっても、すぐに流通が回復できるのは、必要量を国内で賄えるからだ。
米を取り巻く環境は厳しい。生産者に支払われた2021年産米の概算金は前年から2、3割下げ、主要銘柄は1等60キロで1万円前後。肥料などの資材高でコスト削減は進まず、20年産米の担い手の生産費は前年より0・4%増の同1万895円。今後、生産資材が一層高騰すれば、農業経営は立ちゆかなくなる。
基幹的農業従事者は減少が続く。米を作る49歳以下の後継者は5・5%しかいない。高齢農家の大量リタイアで供給が弱まる日が迫る。
食品メーカーや外食産業などは、食料安保の重要性に気付き、輸入小麦から国産米や国産米粉に切り替える動きが出てきた。パルシステム生協連は、飼料用米を与えて生産した豚の肉や卵などに飼料米比率を表示して販売する。輸入への依存を減らし、国産飼料を積極的に活用することで自給率の向上を目指す。
「米が余っているから生産を減らせばいい」という近視眼的な考えでは、生産基盤の弱体化は進む一方だ。風土に合った水田をどう維持し、農業者を確保するのか。各党は水田農業の長期ビジョンを有権者に示すべきだ。大規模にとどまらず、中小の家族経営農家が生き残れる論戦を期待したい。