家畜疾病図鑑 INDX
2010年11月24日
宮崎県で2010年春に発生した口蹄疫問題を契機に、家畜伝染病への関心が高まっています。疾病に詳しい研究者に、主な家畜伝染病の特徴と対策を紹介してもらいます。
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写真 | 疾 病 名 | 特徴・対策 |
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牛 疫 | 高死亡率、治療法なし |
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ボツリヌス症 | 飼料適正管理で予防 |
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ニューカッスル病 | ワクチンで予防可能 |
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オーエスキー病 | 同居豚の口から感染 |
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ヨーネ病 | 下痢起こし痩せ細る |
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トキソプラズマ病 | 臓器に寄生して増殖 |
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炭 そ | 死亡畜の適切処理を |
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牛ウイルス性下痢・粘膜病 | 持続感染牛から拡大 |
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豚丹毒 | ワクチン接種で予防を |
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伝達性海綿状脳症 | 感染動物は焼却処分 |
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牛白血病 | 吸血昆虫などが媒介 |
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ダウナー牛症候群 | 乳熱早期発見治療を |
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馬伝染性貧血 | 必ず定期検査受けて |
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豚繁殖・呼吸障害症候群 | ウイルス侵入防げ |
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鳥インフルエンザ | 小動物の侵入防止を |
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ネオスポラ症 | 犬の侵入防ぎ予防を |
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牛乳頭腫症 | ワクチンなく切除で |
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ブルセラ病 | 患畜処分し施設消毒 |
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腐蛆病 | 発生蜂群は焼却処分 |
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野兎病 | 野生動物の侵入防げ |
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マレック病 | ワクチン接種で予防 |
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白筋症 | ビタミンEなど投与 |
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口蹄疫 | 農場の衛生管理を十分に |
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牛カンピロバクター症 | 検査徹底し早期発見 |
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ワラビ中毒 | 飼料への混入を防ぐ |
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日本脳炎 | ワクチン接種で免疫 |
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アカバネ病 | 初夏前 ワクチン接種 |
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破傷風 | ワクチン接種で予防 |
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ウエストナイルウイルス感染症 | 馬ではワクチン使用 |
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狂犬病 | ワクチンで発生予防 |
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牛肺疫 | 感染動物を摘発淘汰 |
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豚赤痢 | 迅速診断、予防が重要 |
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大脳皮質壊死症 | ビタミンB1製剤の投与 |
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結核病 | 定期検査で摘発淘汰 |
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鳥アスペルギルス症 | ほこり吸入を避ける |
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豚インフルエンザ | 消毒、隔離で拡大防止 |
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伝染性ファブリキウス嚢病 | 徹底した衛生管理を |
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萎縮性鼻炎 | 清浄な豚導入し予防 |
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豚コレラ | 管理徹底し侵入防止 |
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馬パラチフス | 隔離し汚染場所消毒 |
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ヘンドラウイルス感染症 | 輸入馬検疫、侵入防ぐ |
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[あんぐる] 湯にもまれ“一人前”に 「大和当帰」加工(奈良県明日香村)
漢方薬に使われる薬用作物「大和当帰(トウキ)」の生産が盛んな奈良県では、トウキを薬に加工するための伝統的な「湯もみ」作業が、真冬の風物詩となっている。約2年間育てたトウキを3カ月ほど乾燥させて湯に浸し、一つ一つ丁寧にもむこの作業は、漢方薬の品質を決める“要”の工程だ。
台の上で転がしながら手でもんで形を整える。加工場には湯気が充満した(奈良県下市町で)
トウキはセリ科の多年草。根は血の循環を活性化し、冷え性や更年期障害などに効果があるとされ、主に婦人薬の原料として利用される。収穫したトウキを薬に加工するために欠かせないのが、「湯もみ」と呼ばれる加工作業だ。
2月下旬の朝、キトラ古墳で有名な明日香村阿部山の集落営農組織「えいのうキトラ」のメンバー10人が生薬卸「前忠」(下市町)の一角にある加工場に集まった。大釜で沸かした約60度の湯をおけに張り、乾燥させたトウキを2分ほど浸すと、加工場内にはセロリのような香りが立ち込めた。特製の湯もみ機にも湯を張り、ローラーで1分優しくもみ洗う。台の上で手のひらを使って転がしながら馬のしっぽのような形に整え、さらに水で何度も洗って付着した泥を丁寧に落とした。県の果樹薬草研究センター指導研究員の米田健一さん(44)は、「湯もみはトウキの味や色、薬効などに影響を与える。品質を高めるための重要な工程だ」と力を込める。
大和当帰は17世紀中ごろからこの地域で薬草として盛んに栽培され、品質の高さで知られる。同地域では県、前忠、えいのうキトラが一体となって栽培と改良を続けてきた。
今季は8アールで栽培し、天候不順の影響で例年より少ない1000本ほどを収穫した。湯もみが終わると明日香村のハウス内の干し場にはさ掛けした。4月末ごろまで乾かした後、等級別に分け、前忠が加工して出荷する。薬の他にも美容液、ハンドクリーム、葉は入浴剤などにも使われ、外国人観光客からも人気を集めている。えいのうキトラ会長の山本雅義さん(73)は「メンバー一丸となっての大和当帰栽培は、地域活性化につながっている。集落を代表する作物として規模を拡大したい」と笑顔を見せる。(釜江紗英)
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2021年03月01日
〈男は黙って…〉。かつてのビールの宣言文句もいまなら物議を醸すかも
〈男は黙って…〉。かつてのビールの宣言文句もいまなら物議を醸すかも。ことさら男を強調するのはいかがなものかと▼おしゃべりな人、口数少ない人。人それぞれ。別段男だから女だからと限定するのはおかしい。もちろん女性だから会議での話が長いわけでもない。ただコロナ禍で会話が減っているのは確か。知人は、長いマスク生活で「声が出にくくなった」とこぼしていた▼会話を極力しないことが良しとされるご時世である。「黙食にご協力ください」と呼び掛ける飲食店も現れた。食事の楽しさは、気心の知れた人との会話も調味料になる。例えば恋人同士が、2重マスクとアクリル板越しに、黙々と箸を運ぶ。時折、スマホのLINEで“筆談”。これではどんなごちそうでも味気ないだろう▼「賢者は黙して語らず」のことわざが示すように、日本では往々にして沈黙は美徳とされる。「沈思黙考」は、黙して熟慮するさま。不平不満を言わず黙々と働く人も好まれる。しかし「沈黙は金」も時と場合による。菅首相のご子息に絡む接待疑惑の渦中にある総務省幹部は当初「黙秘」を決め込み、会話記録が出ると「記憶力不足」と釈明した▼永田町や霞が関の住人たちには、政権を守るため沈黙を守り通せば出世する「黙約」でもあるのだろうか。
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2021年03月02日
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豚赤痢 迅速診断、予防が重要
特 徴
豚赤痢はブラキスピラ・ハイオディセンテリアエというらせん状の細菌が病原で、下痢を特徴とする病気。豚やイノシシの届出伝染病だ。現在は世界中の豚生産国で発生し、品種、性別に関係なく、離乳後の豚に好発する。
国内では1960年代から発生、今も多数の発生が報告されている。保菌豚の導入が主な発生原因となり、一度発生すると常在化しやすいので注意が必要だ。菌を含んだふん便を直接、または間接的に口から摂取することで感染する。潜伏期間は1、2週間で発症率は高い。
下痢の程度は、感染初期には黄灰色軟便から泥状便、次いで悪臭のある粘液・血液の混じった粘血下痢便へ変化する。感染豚は元気消失、食欲低下、脱水、体重減少、発育遅延を起こし、死亡することもある。下痢の原因は多種にわたることから発生時には迅速な診断が不可欠だ。
対 策
ワクチンはない。予防対策が重要で、消毒などの一般衛生管理に加えて、発生農場から豚の導入を控える。導入豚は3週間は隔離飼育し健康状態を確認することなどが必要だ。オールイン・オールアウト方式も常在化防止に役立つ。
治療には、チアムリン、バルネムリン、リンコマイシン、タイロシン、デルデカマイシンの薬剤が使用されている。
(農研機構・動物衛生研究所・細菌・寄生虫研究領域主任研究員・江口正浩)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2014/3/19
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2014年03月19日

牛肺疫 感染動物を摘発・淘汰
特 徴
牛肺疫は、牛肺疫マイコプラズマによる急性の致死性感染症で、牛や水牛、鹿の法定伝染病だ。現在、アフリカ大陸を中心に、中東や東南アジアで発生。日本では1940年を最後に発生していない。
急性型では、感染動物は40度を超える発熱と呼吸困難、発咳(はつがい)、鼻汁漏出などの呼吸器症状を示し、食欲や元気を失って死に至る。致死率は若齢牛で比較的高く、50%以上になることもある。
死亡動物には、胸膜肺炎が特徴的に認められ、胸腔(きょうこう)への線維素の析出や胸水の貯留が起こり、肺では特徴的な大理石模様の病変が見られる。感染動物の鼻汁や気管粘液には病原体が大量に含まれ、接触あるいは飛沫(ひまつ)吸入により気道感染するため伝染力は極めて高い。
一方、慢性型では、感染しても臨床症状をほとんど示さず、健康状態、栄養状態、飼養環境の変化などのストレスを受けた場合に発症に至る。これらは保菌動物となり、数カ月間にわたり持続感染し、他の個体へ感染を広げる。
対 策
本病の清浄国では、ワクチンによる予防や治療はせず、感染動物の摘発・淘汰(とうた)による防疫を行う。日本では水際検疫などで海外からの侵入防止が図られている。発生時には、特定家畜伝染病防疫指針に基づく防疫措置が実施される。
(農研機構・動物衛生研究所・病態研究領域主任研究員・宗田吉広)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2014/2/26
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2014年02月26日

ヘンドラウイルス感染症 輸入馬検疫、侵入防ぐ
特 徴
ヘンドラウイルス感染症は、重い肺炎や神経症状を示す馬の致死性疾患で、馬モルビリウイルス肺炎として届出伝染病に指定されている。人にも感染する人獣共通感染症で、1994年にオーストラリアで初めて発生し、同国だけでこれまで83頭の馬の感染が確認されている。
これまでに7人が感染、4人が死亡している。オオコウモリがヘンドラウイルスの自然宿主で、感染しても無症状で尿中にウイルスを排せつする。ウイルスはオオコウモリから馬、馬から馬、馬から人へと感染する。
発生はオオコウモリの生息域と馬の飼育域が重複しているオーストラリアの一部地域に限局する。感染馬は40度以上の発熱と重い急性呼吸器症状を示し、回復後に歩様異常などの神経症状を起こす症例もある。
人では呼吸器症状と慢性髄膜脳炎を主徴とする。死亡馬では肺、リンパ節、腎臓などの小血管の内皮細胞の病変と血管炎が観察される。
対 策
有効な治療法はない。オーストラリアでは馬用ワクチンの開発が進められている。日本国内の発生はないが、発生国から輸入される馬の検疫で侵入防止が図られている。オオコウモリは日本の一部にも生息、飛来しているがウイルスは証明されていない。感染馬との濃厚接触で感染することから、馬の治療や解剖に際しては個人防護具を装着して感染を予防する。
(農研機構・動物衛生研究所・国際重要伝染病研究領域主任研究員・山田学)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2014/1/22
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2014年01月22日

鳥アスペルギルス症 ほこり吸入を避ける
特 徴
鳥アスペルギルス症は、アスペルギルス属の真菌(かび)によって起こる病気。かびが体内で増える「感染型」と、大量の胞子を吸い込んで急性の呼吸器症状を示す「アレルギー型」の二つがある。
感染型は呼吸器症状を示し慢性経過をとることが多く、肺や気管、気嚢(きのう)の病巣に加えて消化器系、角膜、皮膚、脳など全身に感染病変が認められる。アスペルギルスの胞子は土壌、空気、乾草、飼料など至るところに存在しているが、健康な鳥が少量の胞子を吸い込んでも発症することは少ない。発症には不適切な飼育管理や鳥の免疫力低下が影響することが多い。
鳥類の中では猛禽(もうきん)やペンギンがかかりやすいとされるが、鶏、アヒル、ダチョウなど家禽を含めた多くの鳥類で発生している。
対 策
本病の治療は極めて困難で、「胞子の吸入防止」と「免疫力を低下させないこと」をポイントとした予防が大切である。特に、かびの胞子は静電気でほこりに付着し、そのほこりを吸入することで病気が発生しやすい。かびの発生を抑える環境管理に加えて十分な換気をし、鳥の近くでほこりが舞い立つ作業を行わないように心掛ける。
鳥の健康維持のための飼養管理、過密飼育、飼料保管にも注意が必要。同病が疑われる死体は袋に入れて口を固く縛り、胞子を拡散させないようにする。
(農研機構・動物衛生研究所細菌・寄生虫研究領域主任研究員・花房泰子)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/12/25
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2013年12月25日

結核病 定期検査で摘発淘汰
特 徴
結核病は、ウシ型結核菌による慢性呼吸器感染症で牛、ヤギ、水牛および鹿の法定伝染病だ。牛と鹿は特に感受性が高く、過去には集団発生例がたびたび報告されている。
ウシ型結核菌は、病畜との接触または汚染物を介して広い範囲の動物や人にも感染する。ヒト型結核菌とは区別され、欧米諸国では結核患者の1、2%がウシ型結核菌の感染によると報告されているが、日本では人でのウシ型菌感染例はほとんどない。
主な感染経路は菌の吸入による経気道感染。初期には肺および周辺リンパ節に限局した結核病巣がつくられる。感染が全身に広がると、肋膜(ろくまく)や胸膜に真珠様光沢を持つ結核結節が密発し、本病の特徴的病変として「真珠病」と呼ばれている。
感染動物は臨床症状に乏しいことが多いが、進行例では発咳(はつがい)、呼吸困難などの呼吸器症状を示し、全身状態が悪化して死に至る。
結核病の診断にはツベルクリン反応検査が用いられる。現在、乳牛については5年ごとの検査が法令で義務付けられ、陽性牛は患畜として処分される。国内では、感染牛の摘発淘汰(とうた)で、最近では数十万頭の検査で1頭が陽性となるレベルまで清浄化が進んでいる。
対 策
有効な予防法や治療薬はない。定期検査による感染動物の摘発と淘汰が防疫対策の基本。畜舎環境の消毒など一般的な衛生対策も万一のまん延防止に役立つ。
(農研機構・動物衛生研究所細菌・寄生虫研究領域主任研究員・川治聡子)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/11/27
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2013年11月27日

大脳皮質壊死症 ビタミンB1製剤の投与
特 徴
大脳皮質壊死(えし)症は、水溶性ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって起こる神経疾患で、牛、メン羊、ヤギなどの反すう動物が発症、3~6カ月齢を中心に2歳まで発生が見られる。
反すう動物では、第1胃内の微生物によってチアミンが合成されるため、飼料中のチアミン不足は問題にならない。しかし、消化管内にチアミナーゼ(チアミン分解酵素)産生菌が増加すると、合成されたチアミンが分解され、さらにその分解産物がチアミンの吸収阻害を起こす。若齢動物では、第1胃内微生物叢(そう)が未発達であることに加え、離乳後の急激な飼料の変化によりチアミナーゼ産生菌が増えることがあり、これがチアミン欠乏につながると考えられている。
チアミンは糖代謝における補酵素であり、これが欠乏すると糖エネルギーに依存度の高い大脳皮質が壊死を引き起こし、発病動物は運動失調や起立不能、けいれんなどの神経症状を示す。症状の進行は早く、発病初期に治療をしない場合には死亡することもある。
対 策
治療にはビタミンB1製剤の投与が効果的だ。起立不能に陥った場合には回復は難しく、発育にも影響する。集団で発生した場合には、給与飼料の見直しやビタミンB1を含む飼料添加剤の添加を行う。離乳直後の子牛が下痢をしたり採食量が低下する場合は注意を要する。
(農研機構・動物衛生研究所病態研究領域研究員・尾澤知美)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/10/23
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2013年10月23日

馬パラチフス 隔離し汚染場所消毒
特 徴
馬パラチフスは、ウマ科の動物に特異的に感染する特徴を持ったサルモネラの一種である馬パラチフス菌によって起こる馬の届出伝染病。妊娠馬が感染すると胎子の敗血症死の結果として流産を起こす。
流産は同一地区や同一厩舎(きゅうしゃ)で連続的に発生する傾向があり、伝染性流産として観察される。妊娠のどの時期にも流産を起こすが、特に妊娠後期に多発する。流産に先立って39~40度の一過性の発熱、外陰部および乳房の腫脹(しゅちょう)、乳汁の漏出などの症状が多い。当歳馬では感染後数日から2週間の潜伏期を経て発熱が1週間から1カ月ほど続き、多くは敗血症で死亡するが耐過することもある。
成馬では種牡馬の精巣炎の他に関節炎、キ甲瘻(きこうろう)などの全身各所の化膿巣や敗血症など、個体によってさまざまな症状が認められる。
感染馬や保菌馬から排出された菌は、飼料や水などを介して経口感染する。また、感染牝馬との交配によって牡馬が感染することもある。日本では過去に馬産地を中心に流行したが、現在は散発的に発生するのみで清浄化達成が可能な段階にある。
対 策
発生時には、感染馬を隔離し、流産胎子や胎盤など流産馬の排出物を適切に処理するなど他の馬への伝播(でんぱ)を防止する。汚染された厩舎、通路、水飲み場、パドック、堆肥場などの消毒を徹底することが重要だ。
(農研機構・動物衛生研究所細菌・寄生虫研究領域主任研究員・楠本正博)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/9/25
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2013年09月25日

豚コレラ 管理徹底し侵入防止
特徴
豚コレラは、豚コレラウイルスの感染による豚とイノシシの法定伝染病で、高い致死率と強い伝染力が特徴である。日本では2007年に清浄化されているが、アジアや世界の多くの国で発生がある。
感染動物との直接接触、その鼻汁や排せつ物の飛沫(ひまつ)・付着物との間接接触により感染が成立し、急性から慢性まで多様な症状を示す。
感染豚は、41度以上の発熱と食欲不振や、うずくまりといった症状に加えて、発熱時には血液中にウイルスが出現し白血球減少症を起こす。
急性では運動失調、後躯(こうく)まひなどの神経症状や耳介、尾、下腹部等に紫斑が見られるようになり、数日から2週間で死亡する。慢性では、初期症状を示した後、いったんは回復するが再び発熱、食欲不振を示し、最終的には削痩し、1カ月から数カ月の経過で死亡する。
死亡豚では出血病変が特徴的に観察され、リンパ節の出血や腎臓表面や、ぼうこう粘膜の点状出血が高率に出現し、時には脾臓(ひぞう)の出血性梗塞が起こる。
対 策
日本での豚コレラ対策の基本は侵入防止と早期発見・早期摘発だ。海外からの侵入防止や農場での飼養衛生管理基準の順守が大切だ。
農場で異常豚が発見されれば、直ちに家畜保健衛生所に通報する。防疫措置は「防疫指針」に従って実施され、清浄性確認のためのサーベイランス(監視)も行われている。
(農研機構・動物衛生研究所・国際重要伝染病研究領域主任研究員・大橋誠一)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/8/21
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2013年08月21日

萎縮性鼻炎 清浄な豚導入し予防
特 徴
萎縮性鼻炎は、細菌であるボルデテラ・ブロンキセプティカと毒素産生性のパスツレラ・マルトシダの単独、あるいは混合感染による鼻甲介の形成不全や萎縮を伴う呼吸器病で、豚とイノシシの届出伝染病に指定されている。
感染日齢が低いほど強い症状と病変を示し、初期には鼻汁の漏出などの一般的な呼吸器症状の他、くしゃみが頻発すると鼻出血を起こす。鼻粘膜の炎症が涙管に及ぶと流涙が起こり、ほこりや泥などが涙で体毛に付着してアイパッチと呼ばれる黒色の斑点が生じる。重症例では上顎(じょうがく)や鼻甲介周辺の骨の発達が阻害され、鼻曲がりと呼ばれる鼻梁(びりょう)の湾曲が見られる。
本病は世界各国、日本各地に存在する。病豚や保菌豚が感染源となり、個体の接触や飛沫(ひまつ)感染により伝播(でんぱ)する。2種の原因菌は健康豚も保菌しており、単独でも軽度の呼吸器症状を起こすことがあるが、混合感染時に症状が重篤化する。
対 策
保菌豚の導入により本病が侵入することが多いため、清浄な農場から豚を導入するなどの予防対策が極めて重要である。また、妊娠豚や子豚用の種々のワクチンがあるが、分娩(ぶんべん)舎や離乳舎の消毒、衛生管理を徹底することがワクチンや薬剤による防除対策の効果を上げる。治療にはサルファ剤、テトラサイクリンおよびカナマイシンなどの抗生剤が用いられる。
(農研機構・動物衛生研究所細菌・寄生虫研究領域研究員・上野勇一)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/7/24
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2013年07月24日

伝染性ファブリキウス嚢病 徹底した衛生管理を
特 徴
伝染性ファブリキウス嚢(のう)病は、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスの感染による鶏の届出伝染病で、ウイルスは主にファブリキウス嚢(F嚢)を中心としたリンパ器官に感染して、炎症や壊死を起こす。F嚢は総排泄腔(そうはいせつくう)の背側に位置する鳥類に特有のリンパ器官で、免疫の発達に重要な役割を担っている。
2~10週齢の、特にひなの時期に発生しやすく、突発的に元気消失、羽毛逆立ち、白色~緑色水様下痢を起こす。症状は急性経過をとるが、多くは1、2週間程度で回復する。死亡例は感染3日くらいから認められ、致死率は5~20%であるが発生によっては100%に達することもある。死亡鶏では筋肉や消化管に出血が見られることもある。
感染から回復した後も免疫細胞が破壊されているため、他の病原体に感染しやすく免疫ができにくい状態になる。ウイルスは熱や酸に強く、ふん便中に排出された後も環境中に長く残存して新たな感染源となる。
対 策
治療法はない。オールイン・オールアウトおよび鶏舎の徹底した消毒により、ウイルスを鶏舎からなくす衛生管理を行う。3、4週齢時までのひなは、種鶏へのワクチン接種による移行抗体で感染を予防する。その後は移行抗体の消失時期に、ひなに複数回ワクチンを投与し免疫を保つ。病原性の強いウイルスに対しては中等毒生ワクチンが用いられる。
(農研機構・動物衛生研究所・病態研究領域研究員・生澤充隆)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/6/26
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2013年06月26日