ダウナー牛症候群 乳熱 早期発見治療を
2011年10月26日

ダウナー牛症候群のため起立不能となった牛
特 徴
乳用牛が乳熱(分娩=ぶんべん=性低カルシウム血症)を伴わずに起立不能、もしくは起立困難となった状態で、分娩後7日以内の高泌乳牛に多発する。乳熱とは異なり、カルシウム剤の投与では起立せず、検査しても特定の診断名を下すことができない。
本病は、乳熱に対する治療の遅れや大腸菌などによる甚急性乳房炎、あるいは分娩時の産道損傷、滑走や転倒による骨折、脱臼、筋損傷などによって起立困難な状態が持続し、その後の筋肉および神経のまひによって起立不能となる。
前肢に異常は見られず、後肢のまひによって脱力し、起立不能になっている場合が多い。意識は明瞭で、食欲は減退するが消失せず反すうも行う。
循環障害を伴った場合には、心拍数や呼吸数の増加、泡沫(ほうまつ)性のよだれが現れ、苦しそうな様子を示し、心臓に異常がみられることもある。牛海綿状脳症(BSE)でも末期には起立不能を起こすとされていることから検査が必要である。
対 策
多くは乳熱に続いて発症するため、乳熱を早期に発見し、治療することが予防につながる。起立困難になった場合は、わらなどの軟らかい敷料で寝床を作り、頻繁に寝返りを行うことによって筋肉の圧迫壊死(えし)を防ぐ。
また、不自然な姿勢となりやすいスタンチョンでの分娩や、滑りやすい牛床の上での分娩を避け、体に損傷を与えないようにする。分娩徴候の観察を十分に行うことが、本症の予防に重要である。
(農研機構・動物衛生研究所寒地酪農衛生研究領域主任研究員・菊佳男)
・筆者の役職は当時の役職です。
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2019年02月16日

[一村逸品] 後期優秀賞3点 日本農業新聞
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▽「JA小松市のとまとケチャップ」(石川)▽「五郎島金時いしやきいも」(石川・JA金沢市)▽「まんのうひまわりオイル」(香川・(株)グリーンパークまんのう)。
年間表彰は20日開催予定の中央審査会で、前期・後期の優秀賞から大賞1点と金賞2点を決める。
2019年02月13日
落語の「祇園会(ぎおんえ)」じゃないが
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2019年02月11日

時短需要に商機あり 国内最大級 流通業向け展示会
スーパーのバイヤーなど流通業者を対象にした国内最大級の展示商談会「スーパーマーケット・トレードショー2019」が13日、千葉市の幕張メッセで開幕した。食品メーカーやJAなど2176団体が出展。生鮮品や加工品で「時短」需要の高まりを受けた提案が目立った。15日まで。
2019年02月14日
豚コレラ防疫 息の長い 手厚い支援を
何としても食い止めなければならない。豚コレラの感染が広がり養豚農家の緊張が続いている。防疫の徹底には資金や人員、時間がかかり、中長期的な支援は欠かせない。殺処分を余儀なくされた農家の苦しみに寄り添い、経営再開に向けた息の長い支援が求められている。
「仲間の誰もが精神的にも経営的にも限界の状況だ」。岐阜県養豚協会の吉野毅会長は指摘する。現場では、外部との接触は極力避け、感染拡大の恐怖と闘いながら、想定できる限りの防疫態勢を敷いている。
だが、資金不足からシャワールームなど高度な防疫施設を整備できない農家もいる。リスクを減らすには設備投資への支援に加え、施設に入る車両を一方通行にするなど工夫も求められる。衛生管理への支援は待ったなしだ。さらに吉野会長は「今、起きている現実を見てほしい。一日でも早くワクチンを使ってほしい」と要望する。
殺処分を余儀なくされた当該農家の中には、経営再開を目指す担い手がいる。欠かせないのは万全の補償体制だ。発生農場に対し、殺処分した豚の評価額を都道府県が算出し、国が手当金として補償するといった支援策はあるが、現場からは「雇用も含めた農場全体での評価額を算出してほしい」(愛知県の養豚関係者)、「まとまって補償金が出て収入としてみなされたら、税金が払えない」(発生農場の関係者)といった声が上がる。政府はこうした声に耳を傾け、柔軟に対応すべきである。
地域の理解も必要だ。発生した養豚農家は「経営を再開したい。だが、息の長い支えがなければ、立ち上がれない」と漏らす。周辺住民から経営再開に対し不安の声が出ている場合は、県や地元自治体、JAなどの関係機関が連携して地域に説明し、住民理解につなげる必要がある。殺処分に直面する農家の苦しみや不安に寄り添う対策が求められている。
畜産は、食料を供給するだけでなく、地域産業の一翼を担っている。ふんは良質な堆肥となり、耕種農家を支え、循環型の地域づくりに貢献している。副産物は皮革製品や医薬品にも活用されている。家畜の伝染病対策は農業だけにとどまらず、国民全体の問題として捉えるべきだ。
日本を訪れる外国人旅行者は年々増加し、4月からは外国人労働者を農業現場に受け入れる新たな制度が始まる。人の往来が増えれば、さまざまな家畜伝染病のリスクが増える。外国人との共生は重要だが、これまで以上の防疫強化が必要だ。現場での対策とともに、空港や港湾など水際での防疫をさらに強化し、国内へのウイルス侵入を防がねばならない。
養豚農家は感染の恐怖と闘っている。野生鳥獣の肉(ジビエ)をなりわいとする若者たちの経営にも深刻な影響が及ぶ。現場に寄り添う長期的な政策と心の支えが求められている。
2019年02月16日
家畜疾病図鑑の新着記事

豚赤痢 迅速診断、予防が重要
特 徴
豚赤痢はブラキスピラ・ハイオディセンテリアエというらせん状の細菌が病原で、下痢を特徴とする病気。豚やイノシシの届出伝染病だ。現在は世界中の豚生産国で発生し、品種、性別に関係なく、離乳後の豚に好発する。
国内では1960年代から発生、今も多数の発生が報告されている。保菌豚の導入が主な発生原因となり、一度発生すると常在化しやすいので注意が必要だ。菌を含んだふん便を直接、または間接的に口から摂取することで感染する。潜伏期間は1、2週間で発症率は高い。
下痢の程度は、感染初期には黄灰色軟便から泥状便、次いで悪臭のある粘液・血液の混じった粘血下痢便へ変化する。感染豚は元気消失、食欲低下、脱水、体重減少、発育遅延を起こし、死亡することもある。下痢の原因は多種にわたることから発生時には迅速な診断が不可欠だ。
対 策
ワクチンはない。予防対策が重要で、消毒などの一般衛生管理に加えて、発生農場から豚の導入を控える。導入豚は3週間は隔離飼育し健康状態を確認することなどが必要だ。オールイン・オールアウト方式も常在化防止に役立つ。
治療には、チアムリン、バルネムリン、リンコマイシン、タイロシン、デルデカマイシンの薬剤が使用されている。
(農研機構・動物衛生研究所・細菌・寄生虫研究領域主任研究員・江口正浩)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2014/3/19
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2014年03月19日

牛肺疫 感染動物を摘発・淘汰
特 徴
牛肺疫は、牛肺疫マイコプラズマによる急性の致死性感染症で、牛や水牛、鹿の法定伝染病だ。現在、アフリカ大陸を中心に、中東や東南アジアで発生。日本では1940年を最後に発生していない。
急性型では、感染動物は40度を超える発熱と呼吸困難、発咳(はつがい)、鼻汁漏出などの呼吸器症状を示し、食欲や元気を失って死に至る。致死率は若齢牛で比較的高く、50%以上になることもある。
死亡動物には、胸膜肺炎が特徴的に認められ、胸腔(きょうこう)への線維素の析出や胸水の貯留が起こり、肺では特徴的な大理石模様の病変が見られる。感染動物の鼻汁や気管粘液には病原体が大量に含まれ、接触あるいは飛沫(ひまつ)吸入により気道感染するため伝染力は極めて高い。
一方、慢性型では、感染しても臨床症状をほとんど示さず、健康状態、栄養状態、飼養環境の変化などのストレスを受けた場合に発症に至る。これらは保菌動物となり、数カ月間にわたり持続感染し、他の個体へ感染を広げる。
対 策
本病の清浄国では、ワクチンによる予防や治療はせず、感染動物の摘発・淘汰(とうた)による防疫を行う。日本では水際検疫などで海外からの侵入防止が図られている。発生時には、特定家畜伝染病防疫指針に基づく防疫措置が実施される。
(農研機構・動物衛生研究所・病態研究領域主任研究員・宗田吉広)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2014/2/26
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2014年02月26日

ヘンドラウイルス感染症 輸入馬検疫、侵入防ぐ
特 徴
ヘンドラウイルス感染症は、重い肺炎や神経症状を示す馬の致死性疾患で、馬モルビリウイルス肺炎として届出伝染病に指定されている。人にも感染する人獣共通感染症で、1994年にオーストラリアで初めて発生し、同国だけでこれまで83頭の馬の感染が確認されている。
これまでに7人が感染、4人が死亡している。オオコウモリがヘンドラウイルスの自然宿主で、感染しても無症状で尿中にウイルスを排せつする。ウイルスはオオコウモリから馬、馬から馬、馬から人へと感染する。
発生はオオコウモリの生息域と馬の飼育域が重複しているオーストラリアの一部地域に限局する。感染馬は40度以上の発熱と重い急性呼吸器症状を示し、回復後に歩様異常などの神経症状を起こす症例もある。
人では呼吸器症状と慢性髄膜脳炎を主徴とする。死亡馬では肺、リンパ節、腎臓などの小血管の内皮細胞の病変と血管炎が観察される。
対 策
有効な治療法はない。オーストラリアでは馬用ワクチンの開発が進められている。日本国内の発生はないが、発生国から輸入される馬の検疫で侵入防止が図られている。オオコウモリは日本の一部にも生息、飛来しているがウイルスは証明されていない。感染馬との濃厚接触で感染することから、馬の治療や解剖に際しては個人防護具を装着して感染を予防する。
(農研機構・動物衛生研究所・国際重要伝染病研究領域主任研究員・山田学)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2014/1/22
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2014年01月22日

鳥アスペルギルス症 ほこり吸入を避ける
特 徴
鳥アスペルギルス症は、アスペルギルス属の真菌(かび)によって起こる病気。かびが体内で増える「感染型」と、大量の胞子を吸い込んで急性の呼吸器症状を示す「アレルギー型」の二つがある。
感染型は呼吸器症状を示し慢性経過をとることが多く、肺や気管、気嚢(きのう)の病巣に加えて消化器系、角膜、皮膚、脳など全身に感染病変が認められる。アスペルギルスの胞子は土壌、空気、乾草、飼料など至るところに存在しているが、健康な鳥が少量の胞子を吸い込んでも発症することは少ない。発症には不適切な飼育管理や鳥の免疫力低下が影響することが多い。
鳥類の中では猛禽(もうきん)やペンギンがかかりやすいとされるが、鶏、アヒル、ダチョウなど家禽を含めた多くの鳥類で発生している。
対 策
本病の治療は極めて困難で、「胞子の吸入防止」と「免疫力を低下させないこと」をポイントとした予防が大切である。特に、かびの胞子は静電気でほこりに付着し、そのほこりを吸入することで病気が発生しやすい。かびの発生を抑える環境管理に加えて十分な換気をし、鳥の近くでほこりが舞い立つ作業を行わないように心掛ける。
鳥の健康維持のための飼養管理、過密飼育、飼料保管にも注意が必要。同病が疑われる死体は袋に入れて口を固く縛り、胞子を拡散させないようにする。
(農研機構・動物衛生研究所細菌・寄生虫研究領域主任研究員・花房泰子)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/12/25
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2013年12月25日

結核病 定期検査で摘発淘汰
特 徴
結核病は、ウシ型結核菌による慢性呼吸器感染症で牛、ヤギ、水牛および鹿の法定伝染病だ。牛と鹿は特に感受性が高く、過去には集団発生例がたびたび報告されている。
ウシ型結核菌は、病畜との接触または汚染物を介して広い範囲の動物や人にも感染する。ヒト型結核菌とは区別され、欧米諸国では結核患者の1、2%がウシ型結核菌の感染によると報告されているが、日本では人でのウシ型菌感染例はほとんどない。
主な感染経路は菌の吸入による経気道感染。初期には肺および周辺リンパ節に限局した結核病巣がつくられる。感染が全身に広がると、肋膜(ろくまく)や胸膜に真珠様光沢を持つ結核結節が密発し、本病の特徴的病変として「真珠病」と呼ばれている。
感染動物は臨床症状に乏しいことが多いが、進行例では発咳(はつがい)、呼吸困難などの呼吸器症状を示し、全身状態が悪化して死に至る。
結核病の診断にはツベルクリン反応検査が用いられる。現在、乳牛については5年ごとの検査が法令で義務付けられ、陽性牛は患畜として処分される。国内では、感染牛の摘発淘汰(とうた)で、最近では数十万頭の検査で1頭が陽性となるレベルまで清浄化が進んでいる。
対 策
有効な予防法や治療薬はない。定期検査による感染動物の摘発と淘汰が防疫対策の基本。畜舎環境の消毒など一般的な衛生対策も万一のまん延防止に役立つ。
(農研機構・動物衛生研究所細菌・寄生虫研究領域主任研究員・川治聡子)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/11/27
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2013年11月27日

大脳皮質壊死症 チアミン製剤を投与
特 徴
大脳皮質壊死(えし)症は、水溶性ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって起こる神経疾患で、牛、メン羊、ヤギなどの反すう動物が発症、3~6カ月齢を中心に2歳まで発生が見られる。
反すう動物では、第1胃内の微生物によってチアミンが合成されるため、飼料中のチアミン不足は問題にならない。しかし、消化管内にチアミナーゼ(チアミン分解酵素)産生菌が増加すると、合成されたチアミンが分解され、さらにその分解産物がチアミンの吸収阻害を起こす。若齢動物では、第1胃内微生物叢(そう)が未発達であることに加え、離乳後の急激な飼料の変化によりチアミナーゼ産生菌が増えることがあり、これがチアミン欠乏につながると考えられている。
チアミンは糖代謝における補酵素であり、これが欠乏すると糖エネルギーに依存度の高い大脳皮質が壊死を引き起こし、発病動物は運動失調や起立不能、けいれんなどの神経症状を示す。症状の進行は早く、発病初期に治療をしない場合には死亡することもある。
対 策
治療には活性型チアミン製剤の投与が効果的だ。起立不能に陥った場合には回復は難しく、発育にも影響する。集団で発生した場合には、給与飼料の見直しや活性型チアミン飼料添加剤の添加を行う。離乳直後の子牛が下痢をしたり採食量が低下する場合は注意を要する。
(農研機構・動物衛生研究所病態研究領域研究員・尾澤知美)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/10/23
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2013年10月23日

馬パラチフス 隔離し汚染場所消毒
特 徴
馬パラチフスは、ウマ科の動物に特異的に感染する特徴を持ったサルモネラの一種である馬パラチフス菌によって起こる馬の届出伝染病。妊娠馬が感染すると胎子の敗血症死の結果として流産を起こす。
流産は同一地区や同一厩舎(きゅうしゃ)で連続的に発生する傾向があり、伝染性流産として観察される。妊娠のどの時期にも流産を起こすが、特に妊娠後期に多発する。流産に先立って39~40度の一過性の発熱、外陰部および乳房の腫脹(しゅちょう)、乳汁の漏出などの症状が多い。当歳馬では感染後数日から2週間の潜伏期を経て発熱が1週間から1カ月ほど続き、多くは敗血症で死亡するが耐過することもある。
成馬では種牡馬の精巣炎の他に関節炎、キ甲瘻(きこうろう)などの全身各所の化膿巣や敗血症など、個体によってさまざまな症状が認められる。
感染馬や保菌馬から排出された菌は、飼料や水などを介して経口感染する。また、感染牝馬との交配によって牡馬が感染することもある。日本では過去に馬産地を中心に流行したが、現在は散発的に発生するのみで清浄化達成が可能な段階にある。
対 策
発生時には、感染馬を隔離し、流産胎子や胎盤など流産馬の排出物を適切に処理するなど他の馬への伝播(でんぱ)を防止する。汚染された厩舎、通路、水飲み場、パドック、堆肥場などの消毒を徹底することが重要だ。
(農研機構・動物衛生研究所細菌・寄生虫研究領域主任研究員・楠本正博)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/9/25
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2013年09月25日

豚コレラ 管理徹底し侵入防止
特徴
豚コレラは、豚コレラウイルスの感染による豚とイノシシの法定伝染病で、高い致死率と強い伝染力が特徴である。日本では2007年に清浄化されているが、アジアや世界の多くの国で発生がある。
感染動物との直接接触、その鼻汁や排せつ物の飛沫(ひまつ)・付着物との間接接触により感染が成立し、急性から慢性まで多様な症状を示す。
感染豚は、41度以上の発熱と食欲不振や、うずくまりといった症状に加えて、発熱時には血液中にウイルスが出現し白血球減少症を起こす。
急性では運動失調、後躯(こうく)まひなどの神経症状や耳介、尾、下腹部等に紫斑が見られるようになり、数日から2週間で死亡する。慢性では、初期症状を示した後、いったんは回復するが再び発熱、食欲不振を示し、最終的には削痩し、1カ月から数カ月の経過で死亡する。
死亡豚では出血病変が特徴的に観察され、リンパ節の出血や腎臓表面や、ぼうこう粘膜の点状出血が高率に出現し、時には脾臓(ひぞう)の出血性梗塞が起こる。
対 策
日本での豚コレラ対策の基本は侵入防止と早期発見・早期摘発だ。海外からの侵入防止や農場での飼養衛生管理基準の順守が大切だ。
農場で異常豚が発見されれば、直ちに家畜保健衛生所に通報する。防疫措置は「防疫指針」に従って実施され、清浄性確認のためのサーベイランス(監視)も行われている。
(農研機構・動物衛生研究所・国際重要伝染病研究領域主任研究員・大橋誠一)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/8/21
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2013年08月21日

萎縮性鼻炎 清浄な豚導入し予防
特 徴
萎縮性鼻炎は、細菌であるボルデテラ・ブロンキセプティカと毒素産生性のパスツレラ・マルトシダの単独、あるいは混合感染による鼻甲介の形成不全や萎縮を伴う呼吸器病で、豚とイノシシの届出伝染病に指定されている。
感染日齢が低いほど強い症状と病変を示し、初期には鼻汁の漏出などの一般的な呼吸器症状の他、くしゃみが頻発すると鼻出血を起こす。鼻粘膜の炎症が涙管に及ぶと流涙が起こり、ほこりや泥などが涙で体毛に付着してアイパッチと呼ばれる黒色の斑点が生じる。重症例では上顎(じょうがく)や鼻甲介周辺の骨の発達が阻害され、鼻曲がりと呼ばれる鼻梁(びりょう)の湾曲が見られる。
本病は世界各国、日本各地に存在する。病豚や保菌豚が感染源となり、個体の接触や飛沫(ひまつ)感染により伝播(でんぱ)する。2種の原因菌は健康豚も保菌しており、単独でも軽度の呼吸器症状を起こすことがあるが、混合感染時に症状が重篤化する。
対 策
保菌豚の導入により本病が侵入することが多いため、清浄な農場から豚を導入するなどの予防対策が極めて重要である。また、妊娠豚や子豚用の種々のワクチンがあるが、分娩(ぶんべん)舎や離乳舎の消毒、衛生管理を徹底することがワクチンや薬剤による防除対策の効果を上げる。治療にはサルファ剤、テトラサイクリンおよびカナマイシンなどの抗生剤が用いられる。
(農研機構・動物衛生研究所細菌・寄生虫研究領域研究員・上野勇一)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/7/24
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2013年07月24日

伝染性ファブリキウス嚢病 徹底した衛生管理を
特 徴
伝染性ファブリキウス嚢(のう)病は、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスの感染による鶏の届出伝染病で、ウイルスは主にファブリキウス嚢(F嚢)を中心としたリンパ器官に感染して、炎症や壊死を起こす。F嚢は総排泄腔(そうはいせつくう)の背側に位置する鳥類に特有のリンパ器官で、免疫の発達に重要な役割を担っている。
2~10週齢の、特にひなの時期に発生しやすく、突発的に元気消失、羽毛逆立ち、白色~緑色水様下痢を起こす。症状は急性経過をとるが、多くは1、2週間程度で回復する。死亡例は感染3日くらいから認められ、致死率は5~20%であるが発生によっては100%に達することもある。死亡鶏では筋肉や消化管に出血が見られることもある。
感染から回復した後も免疫細胞が破壊されているため、他の病原体に感染しやすく免疫ができにくい状態になる。ウイルスは熱や酸に強く、ふん便中に排出された後も環境中に長く残存して新たな感染源となる。
対 策
治療法はない。オールイン・オールアウトおよび鶏舎の徹底した消毒により、ウイルスを鶏舎からなくす衛生管理を行う。3、4週齢時までのひなは、種鶏へのワクチン接種による移行抗体で感染を予防する。その後は移行抗体の消失時期に、ひなに複数回ワクチンを投与し免疫を保つ。病原性の強いウイルスに対しては中等毒生ワクチンが用いられる。
(農研機構・動物衛生研究所・病態研究領域研究員・生澤充隆)
・筆者の役職は当時の役職です。
・掲載日:2013/6/26
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2013年06月26日