トランプ氏珍妙人事 選挙運動の“報酬”? 特別編集委員 山田優

 今年5月、ニコラ・ブラスキーさんという人が米農務省海外農務局の海外市場開拓担当に就職した。政府の給与表では年収1000万円になる。ブラスキーさんの写真を見ると、筋肉質の白人男性だ。最強の農業大国で、農産物輸出を推し進めるのだから、「よほどの専門家なのだろう」と考えるのが普通だ。

 もしかしたら、トランプ政権が新たに採用した日本市場開拓の切り札?

 しかし、市民団体が入手した経歴書を読むと、その恐れは小さい。ブラスキーさんの専門職種と言えるのは「運転手」。2013年から16年までの間、宅配業者でトラックのハンドルを握っていた。その前は農産物運送会社で運転手も務めていた。

 「運転手」と連邦政府の高給ポストを結び付けたのはトランプ政権だ。ブラスキーさんは米大統領選挙の激戦地オハイオ州で、トランプ陣営に身を投じていた。経歴書の冒頭には16年1月から選挙に走り回った体験が堂々とつづられている。

 米メディアのポリティコが「ブラスキー氏は選挙運動の報酬として、農務省のポストが転がり込んだ」と報じ表面化した。同紙は他にも怪しい事例があるという。やはり今年同省の農業販売局に雇われた一人は、大学で歴史を学び、16年に卒業した。経歴書にある唯一の職業経験は、学生時代のゴルフ場の雑用係。16年夏からトランプの選挙陣営で活動しているのがポイントだ。

 ワシントンでは官僚の一部が、政治任用と呼ばれる仕組みで任命される。政権交代の度に数千人の官僚が入れ替わる。「過去の大統領の時もそんな話はいっぱいあった。選挙見返りはトランプだけではない」と笑い飛ばすのは経験豊富な米国の農業ジャーナリストだ。

 日本ではどうか。自らの保身のため、安倍政権の意に沿って「記憶がない」「資料がない」「問題ない」と繰り返した幹部官僚もいた。「忖度(そんたく)」がキーワードになった。トランプ政権の珍妙な人事は実害が小さそうだが、霞が関の方は深刻な影響があるかもしれない。与党大勝で総選挙は終わったが、当分、注意深く監視していきたい。

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