与那国馬との共生 “在来”こそ地域の力 農業ジャーナリスト 小谷あゆみ氏

 沖縄県の与那国島に行って来ました。東京から1900キロ、沖縄本島から509キロ離れている一方で、その先の台湾までは111キロという日本最西端の国境の島です。

 島の周遊にお勧めの原付きレンタルバイクに乗って西崎灯台に向かっていると、岬の手前で小柄な馬が何頭も道路にたたずんでいます。島在来の与那国馬です。こんな公道の真ん中でまさか会えるとは驚きです。

 1969年に町の天然記念物に指定され、地元保存会などの尽力により現在130頭が、島に3カ所ある牧場を中心にのんびり自由に暮らしています。馬は道路交通法で軽車両の扱いですが、人が乗っていないのですからこれはもう、互いに身の安全を守りながら、譲り合うしかありません。徐行してすれ違っても逃げるそぶりもなく、堂々と(馬だけに!)したものでした。

 島旅で最も感動したのは、与那国馬に乗って海を渡る体験です。真っ白な砂浜、青く透明な海を馬の背に乗ってジャブジャブ泳ぐように進む爽快感は、この世のものとは思えないほど美しく夢のような世界です。馬の首に抱きつくと、しっとりした毛並みとぬくもりに、「ホースセラピー」しながらお風呂に入っているような心地よさで、海なら落馬の心配も無用です。

 こんなにリアルでエキサイティングでロマンあふれるアトラクションは、都会の遊園地では得られません。生き物のぬくもりには、言いようのない安堵感と癒やしがあり、これぞ家畜と人の新しい価値だと確信しました。人と家畜が自然に共生する島。ヤギや繁殖肉牛の放牧も見掛けました。

 それにもかかわらず、与那国の観光客は年間120万人の石垣島のわずか2%です。実は今回の旅は、ダイバーや釣り客だけでなく女子旅も増やしたいという与那国島の誘客強化プロモーションの一環で、旅ブロガーとしての取材でした。

 観光PRもインターネットの交流サイト(SNS)の時代です。個人の発信でも、#(ハッシュタグ)やワード検索により、大手メディアや有名人と同じ影響力を持つことができます。

 多様性の時代、食や旅に求められているのは、オンリーワンや特別感です。そこにしかないから旅する価値があるのです。伝統野菜や郷土料理、土地の文化こそ地域の力です。国際化の時代だからこそ、在来がかっこいいのです。島に在来馬がいてくれてよかった。この気持ちはあらゆる地域の固有の種を大切にすることにつながるはずです。

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