JAへの独禁法適用厳格化 論理矛盾 政治利用か 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏

 日本の三権分立の危機が指摘される中、会計検査院は大変な圧力の下でも「ごみ処理費用の算出根拠が不十分」と指摘し独立した検査機関としての尊厳を唯一保った。

 独立した司法機関であるはずの公正取引委員会(公取)による2013年、14年の国政選挙直後の山形、福井のJAへの査察は、稚拙な「見せしめ」「脅し」的な独占禁止法(独禁法)の政治利用との懸念が拭えない。

 さらに、17年の高知のJAへの「系統利用を強制した」との排除命令は、独禁法の適用除外(22条)がすぐに廃止できないなら、独禁法の解釈を勝手に強化して農協を取り締まり、適用除外をなし崩しにする摘発である。

 公取も共販を「競争秩序の維持促進に積極的な貢献をする」と認めている。共販が有効に機能するには共販への結集の誘因となる自主的ルールは不可欠である。共販を認めながら、共販規則が明確に合意されているのに、その規則は違反だというなら、「ただ乗り」を助長し結局共販を壊すという論理矛盾である。

 欧米の農協で全量出荷を義務付けることはむしろ普通である。例えば、米国の農協は一つの事業体として捉えられており、農協と組合員との契約関係は内部関係として、反トラスト法が適用されることはない。

 米国のサンキストは独禁法の適用除外の農協であり、組合員はかんきつ生産の全量を組合を通して出荷しなくてはならない専属利用契約を結ぶ。品質や出荷時期などに厳しいルールがあり、違反者は除名処分を受ける。ブランドを守り、組合員の利益を維持するための当然の対応であり、「不当な価格引上げ」でない限り独禁法上の問題にはならない。

 契約に同意できないならば、組合員にならずに独自に販売すればよい。もちろん、その場合はサンキストのブランドは名乗れない(農林中金総合研究所の平澤明彦・明田作・清水徹朗の各氏の著作参照)。

 欧州連合(EU)では寡占化した加工・小売資本が圧倒的に有利に立っている現状の取引交渉力バランスを是正することにより公正な生乳取引を促すことが必要との判断から11年に打ち出された「酪農パッケージ」政策の一環として、独禁法の適用除外の下、酪農家の組織化と販売契約の明確化による取引交渉力強化を図っている(木下順子農林水産政策研主任研究員)。

 片や日本は、頻発するバター不足の原因が酪農協(指定団体)によって酪農家の自由な販売が妨げられていることにあるとして、畜産経営安定法の改正で酪農協が全量委託を義務付けてはいけないと規定して酪農協の弱体化を推進している。

 海外が社会的な必要性を当然視して守り、強化しようとしている協同組合共販を執拗(しつよう)に攻撃し、崩壊させようとするわが国の世界に逆行した異常性が際立った17年であった。

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