トランプ流 通商交渉 理屈なし 破り捨て 特別編集委員 山田優

 「これぐらいでいいだろ」と宣言するや、ドナルド・トランプ米大統領は懐から出して棒読みした紙を破り捨て、頭の上に放り投げた。紙に書かれていたのは、ワシントンから大統領に同行した政治家の名前の一覧。それからは、トランプ節満開の自慢話が続いた。ホワイトハウスの動画を見ると、まるでテレビのトークショーか、漫談を聞かされているような気分になった。

 トランプ氏は今月上旬にテネシー州で開かれた米国最大の農業団体ファーム・ビューローの年次総会に参加した。現職大統領が参加するのは1993年当時のブッシュ大統領以来25年ぶりだったという。

 とりたてて農業に関心があるとは思えないトランプ氏が、なぜ農業団体の年次総会に参加したのか。「自身のロシア疑惑や移民規制などで八方ふさがり。うまくいっていないから、気分を変えようとしたのではないか」。先週末に訪ねた米国南部の農家の一人が解説した。

 総会のあいさつは、農業の規制を緩和したり、減税したりしたことの手柄話ばかり。はっきり言って中身が薄かった。参加者の多くが聞きたかった北米自由貿易協定(NAFTA)など通商問題で明確な方針を示すことはなかった。それでも参加した農家は、トランプ氏を歓迎しているように見えた。

 94年にフロリダ州で開いた同団体の年次総会を取材した時を思い出した。参加した約1000人の農家や農業関係者のほとんどが、白人男性だった。米国の農家は、トランプ氏の支持基盤とぴったりと重なるのだ。

 主要メディアからの激しい批判や西欧諸国(もちろん日本は除く)首脳などからの冷ややかな視線にさらされるトランプ氏にとって、農家は数少ない「仲間」と映る。

 牛肉の緊急輸入制限措置(セーフガード=SG)で米国産の関税を上げるのは、米国も含めた過去の交渉で決まったもの。欧州やオーストラリア産の農産物関税が下がるのは、日本との自由貿易協定で定めたもの。日本政府はこんな理屈で米国を説得する考えだが、トランプ氏に通用するとは思えない。過去の約束事など、彼にとって都合が悪ければ破り捨てれば済む話なのだ。

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