日米交渉初会合 決着急がず毅然と臨め

 日米貿易協定交渉は2日間の日程を終え、物品について、早期の成果に向けて議論を加速させることで一致した。ただ、米国に合わせて決着を急ぐ必要はない。国益を損なうことがないよう腰を据え、毅然(きぜん)とした姿勢で今後の交渉に臨むべきだ。

 初会合は15、16の両日行われ、茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が出席した。会合後に会見した茂木氏は、農産品や自動車を含む物品貿易の交渉を本格的に開始したと表明。インターネットを使った商取引など「デジタル貿易」交渉を始めることも合意した。

 早期の成果に向け、議論を加速させることでも一致。今月下旬の日米首脳会談を前に、茂木氏とライトハイザー氏による会合を来週再び開くという。

 なぜ、成果を急ぐのか。日本に急ぐ理由はなく、これは米国の意向だろう。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の相次ぐ発効で、輸出競争で不利になる米国の農業団体からは、対日交渉の早期合意を求める声が続出。来年の大統領選を控えるトランプ米政権には、こうした要望に応え、成果を示したい思いが強い。

 会見で茂木氏は「互いの立場について率直な意見交換ができ、良いスタートを切ることができた」と笑顔を見せたが、不安を抱かざるを得ない。このまま交渉が米国ペースで進み、日本側が譲歩を重ねる最悪の展開になってしまう恐れがないとも言い切れない。

 日本が受け入れる農産品などの市場開放は、「過去の経済連携協定で約束した内容が最大限」。茂木氏によると、初会合では、こうした日本の立場を尊重して交渉を進めることを確認したという。政府関係者は「下手に交渉が長引いてこじれるより、TPP水準で早期合意した方が得策」と解説する。

 だが、甘い観測と言わざるを得ない。TPP水準ですら国内農業に深刻な打撃となる上、米国が合意後に一層の市場開放を求めてくる危険も付きまとう。実際、米政権幹部や農業団体からは、日本に対してTPPを超える市場開放を求める声が相次いでいる。

 日本と同じく、対米交渉に臨むEU加盟国は15日の閣僚理事会で貿易交渉方針を承認。工業製品の関税撤廃を主な目的とし、農産品は交渉から除外するという内容だ。農産品を交渉対象とすることに異論を挟まなかった日本と対照的で、もっと日本は強気で交渉に臨むべきだ。

 初会合では、米側から「農業分野については大変関心を持っている」という趣旨の発言があったという。具体的にどのようなやりとりがあったのか、安易な譲歩を約束したりしていないか。日本政府は可能な限り国民に対し説明する責任がある。与野党は国会でしっかり議論をすべきだ。 
 

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