産官学+住民が法人 獣害対策教えます 猿、鹿、イノシシ…被害額8割減 三重県伊賀市

箱わなに取り付けたセンサーの説明を受ける研修会参加者(三重県伊賀市で)

 三重県伊賀市で、地域住民や行政、研究機関、メーカーが連携して農作物の獣害対策を指導する全国でも珍しい法人が活動している。一般社団法人の獣害対策先進技術管理組合で、同市阿波地域で確立した情報通信技術(ICT)などを活用した猿・鹿・イノシシ対策のノウハウを、被害に悩む他の地域に普及させることを目指している。
 
 同法人は、同地域住民自治協議会副会長の村上靖尚さん(67)を代表に、鳥羽商船高等専門学校(鳥羽市)、兵庫県立大学、獣害対策機器メーカーのアイエスイー(伊勢市)で構成。三重県と伊賀市の協力を得て、昨年11月に設立した。メンバーは10年以上、同地域の獣害軽減に一丸となって取り組んできた。「われわれが実証してきた成果を、悪戦苦闘の歴史と共に伝えたい」と村上さんは話す。

 法人はこれまで6回の研修会を開き、参加者は県内外から延べ100人を超えた。獣害対策の一つのモデルを提案している。

 同地域はかつて、猿の群れと、鹿の密度が県で最も多く、農作物被害が甚大だった。住民らが助けを求めた先が、当時県農業研究所にいた山端直人研究員(現・兵庫県立大教授)で、害獣の生息地管理と個体数管理の両方を進めてきた。

 集落全体を防護柵で囲い、それでも用水路などを伝って侵入してくる鹿やイノシシは、ICTを活用した箱わなで捕獲。スマートフォンでわなの映像を見ながら扉を閉められるシステムで、群れごと捕まえて個体数を減らした。猿の追い払いや駆除も進めた結果、被害額を8割以上減らすことができた集落もある。

 山端教授は「獣害はゼロにはならなくても、必ずコントロールはできる。だがそのためには、住民が主体となって取り組む必要がある」と指摘。阿波地域では、集落ぐるみの追い払いや、収穫残さの除去など、地域を挙げて対策を進めたことが奏功したという。

 法人は年5回ほどの定期研修会を開く他、視察研修も随時受け付けている。7月3日に視察に訪れた福島県桑折町議会の議員らには、主にイノシシ対策を指導。柵の張り方や、箱わなの効果的な設置場所などを説明した。同町でもイノシシ被害が深刻化。議員の一人は「どうにか住民を巻き込んだ対策を進めたかった。その成功例として阿波地域を参考にしたい」と話した。

 研修はいずれも有料で、同地域の獣害対策維持費などに充てる。村上さんは「獣害対策は個体数が減った後でも、続けていくことが重要だ。地域の未来のために、維持費を賄う仕組みを作っていく」と話している。

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