外国人材受け入れ 特区 特定技能に移行 来年度から 円滑な契約 課題
2019年07月20日
政府は、改正出入国管理法に基づく特定技能制度が始動したことを受け、農業分野での国家戦略特区制度の外国人労働者受け入れは2020年度以降、新制度に移行する方針を決めた。特区制度での契約終了後も外国人が働き続けるには、新制度の資格を得る必要がある。円滑な移行ができるかが焦点となる。……
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温暖化で植物適地移動 VoCCで分析 果樹転換参考に 長野県など研究
地球温暖化が現在のペースで進むと、国内の高山帯に生息する野生動植物は、21世紀末に生息適地がなくなる可能性がある──。長野県環境保全研究所などでつくる研究グループが発表した。全国1キロ四方ごとに温暖化の影響を推計したのは初めて。影響は市町村ごとに閲覧できるようにし、農業分野では作物転換の検討に使ってもらう。
推計には、気候変動速度(VoCC)という指標を用いた。現在のペースで温暖化が進むと、VoCCの全国平均は1年当たり249メートルとなる。樹木の移動は、最大で同40メートルといわれており、気候変動に追い付けない。これは、身近な自然が将来、緯度の高い所や標高の高い所でしか見られなくなるということを示唆する。
都道府県ごとに影響を見ると、沖縄が同2174・3メートルで、最も速度が速かった。次いで千葉、長崎となった。自治体ごとの影響は、環境省のホームページ内で確認できるよう準備を進めている。
農業分野では、将来の地域の気候がどの地域と同じになるのか判断でき、転換する品目・品種や転換のスケジュールの検討で参考になる。同研究所の高野宏平研究員は「果樹などの永年作物は栽培や転換に時間がかかる。苗木の準備計画に役立ててもらいたい」と話す。
<ことば> VoCC
ある地点で気候が変化した場合、将来同じ気温になる場所の最短距離を、変化した時間で割った速度のこと。例えば、年平均気温15度の場所が100年間で100キロ北上したら、VoCCは1年当たり1キロとなる。
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2019年12月10日
師走も半ばになるとそわそわとし出すが、追い詰められないと筆が進まない
師走も半ばになるとそわそわとし出すが、追い詰められないと筆が進まない▼毎年恒例の年賀状である。日頃会えない旧友、お世話になった恩人への新年のあいさつだから、印刷文字だけでなく、何か一言書き加えたい。その作業に結構手間がかかる。最近は高齢を理由に「今年限り」を伝える「終活年賀状」が増えているという。絶縁状にしないためのポイントを本紙「くらし」面が紹介していた。皆に出したことを明記することが肝心だと▼長寿社会である。失礼にならないように元旦に届く期限日ぎりぎりまで賀状を出すのを控える人も増えたと聞く。当方に届く喪中はがきも80、90代がめっきり多くなった。それぞれの精いっぱいに生きた人生と大切な人を失った家族の悲しみを思う▼アフガニスタンで灌漑(かんがい)や農業指導に尽力しながら同国東部で殺害された医師中村哲さん(73)の遺体が帰国し、故郷福岡で告別式があった。深刻な干ばつと紛争で荒れた大地に井戸を掘り、命の水を引いた。「私たちの事業は確かに、水や食糧、最低限の医療という、単純に『生きるための戦い』である」(『医者井戸を掘る』)。その地道な取り組みが、すさんだ人々の心に信頼の種をまいた▼〈緑の大地計画〉は、きっと根付くだろう。せめてそう思いたい。
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2019年12月15日

「ごはん・お米とわたし」内閣総理大臣賞 作文・長町さん(香川) 図画・清和さん(静岡)
JA全中は9日、第44回「ごはん・お米とわたし」作文・図画コンクールの審査結果を発表した。最優秀賞の内閣総理大臣賞には、作文部門で香川県の長町そよかさん(高松市立栗林小6年)の「広がれ! お米の可能性」、図画部門で静岡県の清和羽音さん(長泉町立北中3年)の「おむすびは勉強のおとも」を選んだ。
文部科学・農水大臣賞に計12人、全中会長賞に6人を選んだ。受賞者は次の通り。
◇作文部門▽文科大臣賞=青木舞桂(山形県米沢市立北部小3年)山口哲平(茨城県小美玉市立羽鳥小6年)辻紗季(福井市足羽中3年)▽農水大臣賞=桂木花音(さいたま市立大谷場小3年)園部杏莉(山形県庄内町立余目第三小6年)大貫桜和(神奈川県厚木市立相川中1年)▽全中会長賞=小濱啓太(沖縄県石垣市立登野城小3年)野元理彩(長崎県壱岐市立霞翠小4年)麦倉惟月(栃木県宇都宮短期大学付属中1年)
◇図画部門▽文科大臣賞=今鹿倉由羽(大阪府堺市立野田小3年)菊永優介(同市立東百舌鳥小5年)皆川泉(宮城県涌谷町立涌谷中2年)▽農水大臣賞=川原田すみれ(佐賀県小城市立桜岡小2年)石松祐(松江市立乃木小6年)荒木音羽(佐賀県伊万里市立国見中2年)▽全中会長賞=右近敏明(高松市立古高松小2年)白浜早也花(佐賀市立鍋島小5年)桝本陸斗(広島市立井口台中1年)
コンクールは「みんなのよい食プロジェクト」の一環。子どもに農業の学びを深めてもらい、ご飯や米の重要性を周知する。全国の小中学生から、作文5万660点と図画6万767点の応募があった。
表彰式は2020年1月11日に東京・大手町のJAビルで開く。
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2019年12月10日

片岡礼子さん(女優) 家族つなぐ 愛の手料理
住んでいる時は当たり前と思っていたんですが、故郷を離れて初めて分かることってたくさんあるんですよね。私は愛媛県松前町の出身で、本当に美しい稲穂に挟まれた道を登校していたんです。遊ぶのも田んぼ。わらを崩して怒られるのも田んぼ。東京に出てから、それが当たり前というわけではないと知りました。
父の実家は新居浜市の山奥、別子銅山の方でした。私も小さい頃、よく祖父母の家に遊びに行きました。夏休みにまるっと1カ月間、そちらで過ごしたものです。
家の裏には栗山、柿山、ビワ山があって、祖父と一緒に山に行き、川で丸一日石投げをして遊んでいました。畑で祖父と一緒に芋を掘ったりもしました。家の周りではウコッケイが自由に歩き回っていたんです。祖母が、要らない野菜の葉っぱを刻んで卵の殻とかと混ぜた餌を与えると、鶏は走って寄ってきました。
祖母はみそを手造りしていました。6畳だったか8畳だったかの座敷を二つ使って毎年大量に造っては、親戚中に配っていたんです。
おそらく自給自足に近い生活だったんでしょう。祖父母をもっと手伝って、食べ物の作り方を学べばよかったと感じています。
肉嫌いの私に…
小さい頃に大好きだった「おふくろの味」は、ささ身のフライです。私は肉が苦手な子でした。肉料理が出ると、親の目を盗んで妹の皿に載せていたくらいです。そんな私でも唯一食べられたのが、鶏肉。それを知った母が、手を替え品を替えて頑張ってくれた末にヒットしたのが、ささ身のフライ。母の愛情がこもった、大切な味なんです。
東京で1人暮らしを始めたら、その味を食べたくなって。帰省したら必ず「お母さん、ささ身のフライを作って」と言ってました。
東京での私の食生活は、褒められたものではなかったですね。コンビニ1軒あれば足りる、という感じでしたから。
和食で体調良く
20代になって良い仕事がたくさん続いたのでうれしくて、がむしゃらに頑張りました。思いっ切りダイエットをして、体も絞ったんです。そのため妊娠・出産するに当たって、助産師さんに「そんな食べ方では駄目です」と言われました。「きちんと日本の伝統的な食事を取るように心掛けなさい」と。
20代での食生活が影響したんでしょうか。私は30歳の時に脳出血で倒れてしまいました。
長い期間、リハビリを続けながら、食事の大切さについて考えました。和食をいただくようにしたこともあって体調は良くなり、大好きな女優の仕事もできるようになりました。
この5年くらいは、友達に教わった方法で、みそを手造りしています。祖母がやっていたような大掛かりで本格的なものではありません。ごく簡単な方法ですけど。その友人は赴任先のアメリカで、みそ造りを先輩から教わったそうです。大豆とこうじ、塩しか使わないので、健康的だと思います。
今年になって母の体調が優れなくなりました。父はそれまで料理をしてきませんでしたが、「お父さん、昔ながらの和食がいいよ。作れる?」「うん、やってみる」と。夜のうちにだしを取って、毎朝みそ汁を作っているそうです。最近は「こんな料理を作ってみた」と写真を送ってくれるようになりました。きちんと副菜まで作っているんです。父の愛情がこもった料理で、母の体調が良くなることを祈っています。(聞き手・写真=菊地武顕)
かたおか・れいこ 1971年、愛媛県生まれ。93年に映画デビュー。95年「愛の新世界」「KAMIKAZE TAXI」でヨコハマ映画祭最優秀新人賞。2001年「ハッシュ!」でキネマ旬報、ブルーリボン両賞の最優秀主演女優賞。映画「楽園」「閉鎖―それぞれの朝―」公開中。映画「Red」「タイトル、拒絶」が来年公開予定。
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2019年12月07日
問題 次の文はある国会議員の雑誌への寄稿である
問題 次の文はある国会議員の雑誌への寄稿である。Aは誰か。「政府答弁のうちでも、総じてA首相の答弁が不親切で、しかも抽象的である。歴代首相でこれくらい答弁に誠意を欠き~」▼答えは吉田茂。議員は河野一郎である。寄稿では、衆院予算委員会での質問にまともに答えようとしなかった吉田を批判。経緯はこう。1953年7月、河野は、米国への日本の貸金約200億円がいつまでも返済されないことを「(政府の)怠慢」と非難した。お金は、米国が朝鮮に送った物資の代金。日本が立て替えた。吉田は交渉中だと反論し、詳しい説明を避けた。『忘れられない国会論戦』(中公新書)で知った▼「無い無い尽くし」のまま臨時国会が9日、閉幕した。日米貿易協定は、野党が求めた資料は出ず熟議もなしで承認。「桜問題」は名簿がなく、政権に疑惑を晴らす気もなく持ち越した。安倍首相は一問一答の委員会から雲隠れした▼河野は寄稿にこうも記した。「最高審議機関である国会が、茶番的な論議や政府のごまかし答弁ですむようなことは(中略)国政が腐敗するもと」▼河野は当時、鳩山一郎と共に吉田と凄(すさ)まじい権力闘争中だった。とはいえ、農相や副総理を歴任した自民党の大先輩。その言葉を首相はどう受け止めるか。
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2019年12月10日
農政の新着記事
飼料米複数年に助成 10アール1・2万円、転作促す 農水省
農水省は2020年産米から、飼料用米や米粉用米の複数年契約に10アール当たり1万2000円の助成措置を新設する方針を固めた。取り組みに応じて、都道府県に対し、産地交付金を追加配分する。主食用米の需給安定に向け、転作拡大の柱となる飼料用米の作付けを促す。一方、19年産まであった多収品種への追加配分(同1万2000円)は廃止を含めて見直す方針だ。……
2019年12月15日

「森林サービス」創出 健康需要で産業化へ 林野庁
林野庁は、森林空間を活用した「森林サービス産業」の創出に乗り出した。森林空間そのものを活用し、これまでの木材生産・供給だけでなく、健康需要などを見据えて森林体験や商品開発で新たなビジネスを生み出し、山村地域に新たな雇用と収入を生み出すのが狙い。どれだけ多くの民間団体・企業の参入を促し、定着させることができるかが鍵となりそうだ。
同庁は、健康志向の高まりに加えて、企業が従業員の健康管理を考える「健康経営」の考え方が広まっていることや、インバウンド(訪日外国人)需要が伸びていることに着目。「健康」「観光」「教育」の観点で森林を活用して、新たな需要を取り込むのが「森林サービス産業」の狙いだ。子育て層を対象にした森林体験、企業の研修・保養利用などを想定する。
具体策を検討するため、同庁は有識者らでつくる森林サービス産業検討委員会(委員長=宮林茂幸東京農業大学教授)を設置。①エビデンス(効果)②情報共有③香イノベーション──の専門部会で議論に着手。19年度中に報告書を取りまとめ、20年度以降、モデル育成を本格化させる。
香イノベーション部会では、スギやヒノキなどを精油の原料として有望視。新たな市場形成を見据え、精油の効用やアロマテラピーでの使用状況などを調査する。
エビデンス部会は、森林浴などが健康に与える効果のデータを集積し、事業化を後押しする。今年度は研究成果などの情報を集める。
情報共有部会では、森林サービス産業に関心を持つ企業や団体、自治体などを引き合わせるプラットフォームの創設を構想。同庁は「Forest Styleネットワーク」を発足した。12月3日時点で63の企業や団体、地方公共団体などが加入。今後、新たな事業が生まれるきっかけを生み出す交流の場としたい考えだ。
同庁は「民間や自治体と協力し、モデル地域の育成を進めていく」(森林利用課)としている。
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2019年12月15日

農地減少 政府想定上回る 荒廃、転用2倍ペース 対策見直し必須
耕作放棄や農地の転用による農地面積の減少が農水省の想定を上回って進んでいる。2015~19年の5年間に発生した荒廃農地は7万7000ヘクタール、農地転用は7万5000ヘクタールに上った。それぞれ同省が想定した2・5倍、1・5倍のペースで増えた。農地の再生が一定程度進んだものの、新たな荒廃農地の発生や転用に追い付かない状況だ。
農地は1961年をピークに一貫して減少し、2019年は439万7000ヘクタールまで落ち込んだ。政府が15年に策定した食料・農業・農村基本計画に掲げる25年の確保目標440万ヘクタールを既に下回った。
19年までの5年間の減少面積は12万1000ヘクタールに及ぶ。同省が変動要因を分析したところ、5年間で新たに発生した荒廃農地と農地以外に転用された面積は、合計で15万2000ヘクタールに上る。一方、再生された農地面積は3万2000ヘクタールにとどまり、減少要因が増加要因を大きく上回った。
基本計画では、荒廃農地と農地転用を合計で8万1000ヘクタールにとどめつつ、2万7000ヘクタールの農地を再生することで、農地の減少を5万4000ヘクタールに抑える想定だった。
同省は、中山間地域等直接支払制度や多面的機能支払制度を使って農地保全に取り組んだ地域は耕作放棄が抑制され、農地の再生も想定以上に進み、政策が効果を発揮したとみる。一方、「高齢化の進展や担い手不足などで新たな荒廃農地の発生が大きく見通しを上回った」(農村振興局)と認める。
現行の対策だけでは、農地減少が十分に食い止められていないことが明らかになった格好。将来にわたり農地を確保するため、より踏み込んだ対応が求められそうだ。
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2019年12月14日
台風19、21号 農林水被害3180億円 営農再開に全力 農相
10月に東日本を中心に猛威を振るった台風19号の被害から2カ月がたつ中、農林水産関係被害額が3180億8000万円に上ることが農水省の調べで分かった。被災地では依然、営農再開のめどが立たない農家も少なくない。江藤拓農相は13日の閣議後会見で、現場の不安に向き合い、復旧に全力を尽くす考えを改めて示した。
江藤農相は「雪のシーズンが近づいてきていることもあり、来年のことについて、現場には大変な不安がある」との認識を示した。その上で「さまざまな手を使って、自治体との連絡を密にして農地の復旧に全力を尽くしていきたい」と強調した。
被害額3180億8000万円は12日現在で、台風21号に伴う大雨などの被害も含む。内訳は、農作物が149億2000万円、農業用ハウスが28億5000万円、農業・畜産用機械が71億4000万円、農地が771億1000万円、用水路などの農業用施設が1219億9000万円、林野関係が789億9000万円、水産関係が130億1000万円などとなっている。
一方、9月に関東地方などを襲った台風15号の被害額は5日現在で814億8000万円。これに19号などの被害額を合わせると3995億6000万円に達し、西日本豪雨の3409億1000万円を超える。
台風19号では、各地で河川の決壊が相次ぎ、水田や果樹園に土砂が堆積するなどの被害が広範囲に発生。政府は11月に復旧支援策を取りまとめた。
特に被害の大きいリンゴには、大規模な改植を余儀なくされる農家に対し、最大で10アール当たり150万円を助成する対策を打ち出した。ただ、被災地では業者の人手不足などで復旧作業が思うように進んでいないところもあるという。
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2019年12月14日

農水補正予算5849億円 政府・与党 和牛倍増へ奨励金
政府、与党は12日、2019年度農林水産関係補正予算案を固めた。総額は5849億円で、18年度に比べ152億円(2・5%)減。このうち来年1月に発効する日米貿易協定などの国内対策費は3250億円。目玉となる和牛生産の倍増に向けた「増頭奨励金」は、中小規模の農家への支援を手厚くするため、飼養頭数が50頭未満の繁殖農家に1頭当たり24万6000円を交付する方針だ。
増頭奨励金の交付単価は、50頭以上の農家が同17万5000円、都府県の乳用後継牛が同27万5000円とする。
奨励金を含む和牛・乳用牛の増頭・増産対策には243億円を計上。日米協定での牛肉輸出枠の拡大や中国への輸出解禁をにらみ、35年までに和牛生産を30万トンに倍増させる計画だ。
畜産地帯での機械や施設の整備を支援する畜産クラスター事業には409億円を充てる。規模要件を緩和し、中小農家の規模拡大を後押しする。
産地生産基盤パワーアップ事業(旧・産地パワーアップ事業)は348億円。流通拠点やコールドチェーンの整備に加え、中小・家族経営の継承の円滑化や堆肥を使った全国的な土づくりにも支援する。
担い手育成対策などには64億円を計上。40歳前後の就職氷河期世代に就農準備交付金を支給する他、50代の就農研修にも助成する。
棚田地域振興法の制定を受け、棚田・中山間地域対策に282億円を盛り込む。
公共事業費は2991億円。うち農地の大区画化・汎用化に270億円、水田の畑地化などに566億円を計上する。台風19号などの復旧対策は公共、非公共合わせて2144億円。
危害分析重要管理点(HACCP)に対応した輸出施設整備などに108億円、豚コレラ(CSF)やアフリカ豚コレラ(ASF)などの家畜伝染病予防費に57億円、先端技術を活用したスマート農業技術の開発・実証プロジェクトに72億円を計上する。
農林水産関係補正予算案は同日、農水省が自民党農林合同会議に示し、了承された。政府は13日にも補正予算案を閣議決定し、年明けの通常国会に提出する。
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2019年12月13日

「スマート」上積みへ 20年度予算 17日にも大臣折衝
政府・与党は12日、2020年度農林水産関係当初予算の詰めの調整に入った。転作助成や農地集積など重要施策の財源規模が固まる中、当初予算総額の前年度超えを目指し、「スマート農業実現」「輸出力強化の体制整備」の関連予算額を17日に予定する大臣折衝事項に設定した。予算の上積みに向けて、江藤拓農相の手腕が問われる。
農水省は同日、自民党農林合同会議で、20年度予算について、財務省との折衝状況を報告。転作助成金に当たる水田活用の直接支払交付金は当初予算比で165億円減の3050億円、人・農地プラン実質化や農地中間管理機構(農地集積バンク)による農地集積・集約の執行見込み額は212億円とした。
大臣折衝は、17日に江藤農相が麻生太郎財務相と面会する。会合に出席した江藤農相は「災害もあり、一連の経済連携協定も出そろう中、(農家に)希望を持ってもらえるよう先頭に立って頑張る」と決意表明した。
党農林・食料戦略調査会の塩谷立会長は当初予算案の内報額を「枝ぶりのいい内容」とした上で、大臣折衝事項について江藤農相に「しっかり交渉していただきたい。激励を申し上げたい」とエールを送った。JA全中の中家徹会長は「現場実態に合ったスマート農業、輸出拡大の加速化を実現してほしい」と期待を寄せた。
大臣折衝事項のうち、「スマート農業実現」については、中山間地域など条件不利地の担い手、労働力不足解消に向けて、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などの先端技術を現場で導入・実証するための予算獲得を重視する。
輸出力強化に向けて同省は、農林水産物・食品輸出促進法に基づき、今後設置される政府の司令塔組織による輸出証明書の申請・交付システムの構築などを進めたい考え。欧米への牛肉輸出には危害分析重要管理点(HACCP)の認定が必要なことを踏まえ、HACCPに対応した施設など輸出拠点の整備も課題に挙げ、予算の確保を目指す。
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2019年12月13日

イノシシ捕獲に手引 環境、農水省 ウイルス拡散を防止
環境省と農水省は、豚コレラ(CSF)、アフリカ豚コレラ(ASF)対策として野生イノシシの捕獲に関する防疫措置の手引を作成した。国がイノシシ捕獲の手引を作成するのは初めて。野生イノシシの捕獲を強化する必要がある一方で、捕獲でウイルス拡散の恐れがあることから、狩猟者に防疫の手法を徹底する。
手引では、これまで農水省がイノシシ捕獲に関して通知していた文言や特定家畜伝染病防疫指針などを踏まえ、捕獲作業の事前準備から帰宅後の対応までを写真と共に掲載した。
現地に到着し、わなの設置や見回りをする前に手袋や長靴を装着するなど、作業ごとのポイントを解説。手袋は二重に装着し、内側のゴム手袋は洋服の袖口を覆うように着用するなど詳細に注意を呼び掛けた。
防護服や靴底の泥落としに使うブラシなどの持ち物チェックリストも併記している。環境省は「イノシシを捕獲する中で、豚コレラが拡大してしまうことを防ぐため、あらゆる捕獲に関する防疫手法をまとめた。手引を参考に、各地域で必要な防疫対策をしっかり行ってほしい」(野生生物課)と呼び掛ける。
手引は、アフリカ豚コレラが発生した際にも活用できる。
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2019年12月13日
来年度予算 農水2・3兆円台で調整 閣僚折衝で上積みへ
政府は11日、2020年度の農林水産関係予算を、19年度と同水準の2兆3000億円台とする方向で調整に入った。農水省は閣僚折衝で上積みし、総額の前年度超えを目指す。転作助成金に当たる水田活用の直接支払交付金は、当初予算比で165億円減の3050億円の方向。一方、19年度農林水産関係補正予算の総額は5849億円とする方針が固まった。……
2019年12月12日

集送乳調整金5銭上げ 畜酪対策 増頭へ関連事業拡充
政府・自民党は11日、2020年度畜産・酪農対策を決めた。焦点の加工原料乳生産者補給金は、1キロ当たり8円31銭で19年度と同額に据え置き、輸送コストの上昇を受け、集送乳調整金は同5銭上げの2円54銭とした。合計も同5銭増の10円85銭で決着。増頭といった生産基盤の強化などに向け、農畜産業振興機構(ALIC)事業の関連対策も同25億円増の320億6000万円に拡充した。
主に北海道向けの補給金は、加工に仕向けた量に応じて支払う。……
2019年12月12日

基盤強化プログラム 生産拡大へ数値目標
政府は10日、安倍晋三首相をトップとする農林水産業・地域の活力創造本部の会合を開き、輸出向けの産地形成や担い手不足などに対応する「農業生産基盤強化プログラム」を決定した。輸出拡大をにらんだ和牛生産の倍増や水田農業の高収益作物産地500カ所創設などの新たな数値目標を設定。2019年度補正予算や20年度予算に達成に向けた経費を計上するが、万全の財源が確保できるかが問われる。
和牛倍増 加工野菜の需要奪還
安倍首相は会合で「安心で安全な日本の農林水産物が世界に羽ばたくチャンスは今後ますます広がっていく」と強調。輸出拡大や先端技術を活用したスマート農業の推進には「しっかりとした生産基盤が欠かせない」との認識を示した。
江藤拓農相は、同日の閣議後会見で「最重要課題の生産基盤強化を目的に取りまとめた」と説明。現在検討している補正予算を含め「切れ目のない対策を講じていく」との考えを示した。
プログラムは11本の柱で構成。日米貿易協定による牛肉輸出枠の拡大などを念頭に「さらなる輸出拡大」を真っ先に掲げた。来年4月に農水省に輸出の司令塔組織を設置し、輸出拡大に向けた新戦略を定める。
和牛生産は、米国や中国への輸出拡大を見込み18年の14万9000トンから35年に30万トンまで増やす目標を設定。具体策として繁殖雌牛の増頭奨励金や和牛受精卵の利用促進などを打ち出した。
水田農業対策では、輸入品が多い加工・業務用野菜の国産化や輸出向けの果樹栽培を念頭に、主食用米から高収益作物への転換を促し、25年度までに500産地の創出を目指す。高収益作物を導入する産地に水田の基盤整備や機械・施設の導入、販路開拓などを一体的に支援する方針だ。
「中山間地域や中小・家族経営も含め、幅広く生産基盤の強化を図る」とも明記。24年度までに地域資源を活用して中山間地域の所得向上などに取り組む250地区を創出することも盛り込んだ。
他に、加工・業務用野菜の出荷量(直接取引分、18年度は98万トン)を30年度までに145万トンに拡大することや、25年までに担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践することなども目標に据えた。
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2019年12月11日