食料自給率が過去最低に 食支える現場直視を 民俗研究家 結城登美雄

結城登美雄氏

 2018年度の日本の食料自給率はカロリーベースで37%と過去最低水準に落ち込んでしまった。

 これまでも37%まで下がったことがあった。だがそれは、1993年の記録的冷夏による米不足でもたらされたもの。長雨、日照不足、低温・冷害などの異常気象による大凶作だった。政府はタイ米などを緊急輸入して対応するも国民は食料危機の大パニックとなった。18年度は、その時の食料自給率と同じとなった。16年度は、38%と過去2番目の低さとなっていたが、わずか2年で1ポイント減少した。

 こんなことを書くと、たかが1ポイント減ったくらいで大げさに言うなかれ、との声も聞こえてきそうだが、日本の食料自給率における1ポイント減は、126万人の国民の1年分の食料消費量に相当する。いわば岩手県民全員の食料1年分が失われたと同じである。
 

国民の命に直結


 農水省は今回の食料自給率低下の原因として天候不順による北海道の小麦と大豆の生産減を挙げているが、それだけではあるまい。こんな短期間に急減したのはなぜか。農産物価格の低下、担い手の高齢化、労働評価低さゆえの離農など、生産現場で何が起きているのか。その声をまず聞くべきである。

 私見だが、日本の食料自給問題は、もはや農林水産という産業論的領域を超え、国民の生命と生存に関わるテーマになったのではあるまいか。

 ちまたで流布されるこの議論はいつも食というモノとカネの数字ばかりが踊って、その食を支えている人間、すなわち農漁民の現場と現実を捉える視点が不足していると強く感じる。農民が土を耕し種をまき、雑草を刈り虫を払い、ようやくにして収穫するから私たちの食卓に野菜は届くのである。漁民が沖を目指して船を出し、網を入れて引き揚げるから、魚は今日もおかずになっているのである。

 「誰が私たちの食を支えているのか?」その問いを避けて私たちの食の未来はない。
 

進む基盤弱体化


 食料自給率低下が突きつける問題は異常気象だけでなく、食を支える担い手の減少と高齢化の限界がある。最新のデータでは農業就業人口は168万人で漁業就業人口と合わせても183万人。私たちの食は全人口のわずか1・4%の人々の報われない労働に支えられているのである。しかもその3人に2人は65歳以上の高齢者である。

 高齢社会日本の医療や福祉、介護や年金についての議論は極めて熱心なのに、一食として欠かせない食料を懸命に支えているのが、体力も命も限られている老農や老漁師だという事実と現実に、政治も行政も国民も、なぜ真剣に向き合わないのであろうか。

 もはや私たちはわがままな消費者ではいられない。食の生産現場の現実を受けとめ理解し、それをしっかり連携サポートする食と農の当事者になることが求められている。そのための食育を国民全体に普及しなければならない。
 
 ゆうき・とみお 1945年山形県生まれ。山形大学卒業後、広告デザイン業界に入る。東北の農山村を訪ね歩いて、住民が主体になった地域づくり手法「地元学」を提唱。2004年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。

おすすめ記事

論点の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは