豚コレラワクチン 接種と衛生管理 両輪で

 豚コレラの感染が中部から関東に広がったことを受けて、農水省は飼養豚への予防的なワクチン接種に向けた手続きに入った。いつでも接種を始められるように十分な数のワクチン確保などを急ぐべきだ。韓国でアフリカ豚コレラが確認された。水際での防疫態勢の強化や飼養衛生管理の徹底も不可欠となる。

 関東は全国有数の大養豚地帯。内閣改造からわずか2日後の13日に埼玉県で発生し、終息とは程遠い状況だ。関東で感染がさらに広がれば、国産豚肉の生産や相場にも大きな影響が生じかねない。19日時点で昨年9月以降、44事例で6県79農場、13万6000頭の豚が殺処分されている。

 江藤拓農相は豚へのワクチンについて、就任会見時から「生産者、団体、いろいろな方々から、もう一度しっかり意見を聞いた上で、私の責任で決断すべき時には決断したい」との考えを表明。14日夜に農水省対策本部を開き、全国の飼養頭数の26%を占める関東甲信地方への侵入で「ステージは確実に変わった」と危機感を示した。

 特に埼玉県初の秩父市の農場の事例では、新たな課題も出てきた。発覚の発端となった山梨県笛吹市のと畜場では、1頭が死亡し、解剖した3頭には内臓に異常があった。出荷農場には感染を示す抗体を持った豚が見つかっており、ウイルスの侵入から数週間が過ぎている可能性が高い。

 問題は侵入経路で、農場はこれまで感染拡大の大きな要因とされてきた陽性の野生イノシシから約90キロ離れていた。同省はウイルスの遺伝子配列から、これまでのものと同一とみて、発生地域から人や車が持ち込んだ可能性が高いとみる。ウイルスの拡散範囲が広がっていることに加え、農場への侵入経路も複雑化している。

 豚コレラのワクチンは国内に150万回分の備蓄がある。発生6県の飼養頭数は今年2月時点で72万5000頭で、この範囲であれば接種はできる。だが、関東での感染が埼玉以外にも広がれば備蓄するワクチンでは足りなくなる。母豚には複数回打つプログラムがある他、生まれてくる子豚に継続して打ち続けるためにはさらに多くのワクチンが必要となる。

 ワクチンの数を十分確保しなければ、接種を始めることは難しい。このため、同省はワクチンの増産を国内の製薬会社に要請することにしたが、増産には一定の時間がかかる。もっと早い時期に増産すべきだった。

 野生のイノシシ対策が進められているが、感染拡大が続く。このため、豚へのワクチン接種を始めるには、野生のイノシシの養豚場への侵入を防ぐ防護柵設置など飼養衛生管理を徹底していくことが必要となる。

 国や各県、農家ら関係者が連携して万全の防疫対策で豚コレラ撲滅に取り組むことが、韓国に侵入したアフリカ豚コレラへの備えともなる。
 

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