シークワーサー 新たな商機 認知症予防効果で脚光
2019年11月07日

人気が沸騰しているJAおきなわのシークワーサー商品(沖縄県浦添市で)
沖縄県特産のシークワーサーの人気が沸騰している。テレビ番組で機能性成分「ノビレチン」が脚光を浴び、空前の売れ行きだ。東京都内の県産品アンテナショップの棚から商品が消え、業者からJAおきなわの冷凍濃縮果汁には前年の倍の注文が舞い込む。JAなどは一過性の動きに終わらせないよう、安定供給や商品開発に力を注ぐ。
東京・銀座の県産品アンテナショップ「わしたショップ」。10月中旬、棚にぎっしりと並んでいるはずのシークワーサー飲料などが姿を消し、JA関係者らが驚きの声を上げた。前日のテレビ番組がノビレチンに認知症予防の効能があると紹介し、注目を集めた。
JAのシークワーサー果汁100%の飲料には1日で1000ケース(1ケース24本、1本500ミリリットル)以上の注文が相次いだ。青切りの果実を皮ごと搾った商品だ。ノビレチンは果実が青い時期に多い上、特に内皮に含まれるため、人気が集中したとみられる。JAが8月に発売した、100%果汁を粉末にした商品「ヒラミン」にも料理への利用などで引き合いが集まる。
JAが業者向けに販売する冷凍濃縮果汁にも問い合わせが殺到。昨年の台風で生産量が減り、果実の確保が難航していたところにブームが重なったためだ。JAは「注文数は昨年の倍だ」と複雑な心境だ。関係者は需要を逃さないよう、安定供給と商品開発に力を入れる。十数年前にもテレビ放映の効果で売れ行きが伸びたが、長続きしなかった苦い記憶があるためだ。
JAは2014年度、農家と契約取引を始め、原料を安定して確保できる態勢を整えた。その結果、昨年の台風の影響で木が弱り、果実が少ない今年も冷凍濃縮果汁を業者に供給しながらチャンスロスを防いでいる。搾りかすを使った商品の開発や、機能性表示食品としての販売も視野に入れる。JA特産加工部の新城悟次長は「ブームに関係なく健康的な食品として定着させたい」と意気込む。
東京・銀座の県産品アンテナショップ「わしたショップ」。10月中旬、棚にぎっしりと並んでいるはずのシークワーサー飲料などが姿を消し、JA関係者らが驚きの声を上げた。前日のテレビ番組がノビレチンに認知症予防の効能があると紹介し、注目を集めた。
JAのシークワーサー果汁100%の飲料には1日で1000ケース(1ケース24本、1本500ミリリットル)以上の注文が相次いだ。青切りの果実を皮ごと搾った商品だ。ノビレチンは果実が青い時期に多い上、特に内皮に含まれるため、人気が集中したとみられる。JAが8月に発売した、100%果汁を粉末にした商品「ヒラミン」にも料理への利用などで引き合いが集まる。
JAが業者向けに販売する冷凍濃縮果汁にも問い合わせが殺到。昨年の台風で生産量が減り、果実の確保が難航していたところにブームが重なったためだ。JAは「注文数は昨年の倍だ」と複雑な心境だ。関係者は需要を逃さないよう、安定供給と商品開発に力を入れる。十数年前にもテレビ放映の効果で売れ行きが伸びたが、長続きしなかった苦い記憶があるためだ。
JAは2014年度、農家と契約取引を始め、原料を安定して確保できる態勢を整えた。その結果、昨年の台風の影響で木が弱り、果実が少ない今年も冷凍濃縮果汁を業者に供給しながらチャンスロスを防いでいる。搾りかすを使った商品の開発や、機能性表示食品としての販売も視野に入れる。JA特産加工部の新城悟次長は「ブームに関係なく健康的な食品として定着させたい」と意気込む。
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傷あっても味は抜群 イオン300店応援セール
イオンリテールは13日から、全国の「イオン」「イオンリテール」約300店舗で、今秋の台風で被災した地域の農産物を販売する応援セールを始めた。15日までの3日間、台風被害のあった長野産、岩手産リンゴを中心に、各地の特産品を販売する。「傷など外観はわけありでも、味は抜群」とPRし、消費拡大につなげる。
消費者が買って応援できる「がんばろう 生産地応援セール」と題し、被災地などの農産物を販売。イオン新浦安店(千葉県浦安市)では、傷などがある各地の「理由(わけ)ありリンゴ」が並んだ。
長野産サンふじ1袋(1・2キロ)537円、「ぐんま名月」同645円、岩手産サンふじ(4個入り)429円で販売している。千葉産のレモンやキャベツなども扱う。リンゴを試食した60代女性は「傷はあるが、実際に食べてみるとおいしかった」と購入していた。
リンゴ産地のJA全農長野生産販売部の長谷川孝治専任部長は「傷みがあり市場では売れない商品を提供できる。生産者にとってありがたい」と話す。イベントを主催するイオンリテール農産商品部の石井友和統括マネジャーは「生産地応援として、多くの農産物を販売していきたい」と意気込む。
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2019年12月14日

アフリカ豚コレラ 予防的殺処分 迅速に 議員立法も視野 通常国会で先行改正
政府・与党が1月召集の通常国会の冒頭で、アフリカ豚コレラ(ASF)を予防的殺処分の対象とするため部分的な法改正を検討していることが9日、分かった。同国会で家畜伝染病予防法全般の改正を予定しているが、同病の国内侵入に早急に備えるため、この部分だけを先行する。与党は通常より手続きを早められる議員立法を念頭に野党とも調整する。
通常国会は来年1月に召集されるが、2019年度補正予算案や20年度当初予算案の審議を優先し、家伝法を含む一般の法案の審議は4月以降となる見通しだ。
だが、アフリカ豚コレラはアジア各国で発生が拡大し、国内侵入の危険性が高まっている。「予防的殺処分に関する条文だけでも、一刻も早く改正しなければならない」(自民党農林幹部)と判断した。
アフリカ豚コレラは伝染力や致死率が高いが、有効なワクチンが存在しない。このため政府・与党はこの通常国会で家伝法を改正し、一定地域内で、感染していない家畜も含めて殺処分する「予防的殺処分」の対象にする方針を固めている。現行法では、口蹄疫だけがその対象だ。
一方、政府・与党が予定する家伝法改正には、豚コレラ(CSF)対策の強化のため、①国の関与の強化②野生動物対策の法定化③検疫担当職員の権限強化──なども含まれる。政府・与党は、このうちアフリカ豚コレラの予防的殺処分に関する条文だけを先行改正し、補正・当初予算などの成立後、残る部分も改正する方針だ。
法改正について政府・与党は「委員長提案」による議員立法を念頭に置く。事前の与野党合意を前提に、衆参委員会での審議を省略し、手続きを迅速化できる手法だ。豚コレラやアフリカ豚コレラ対策を巡っては、野党も独自に家伝法の改正を検討している。別の自民党農林幹部は、予防的殺処分については与野党で一致できるとみて「今後、野党にも協力を呼び掛けたい」とする。
59カ国・地域で確認 水際に警戒感
アフリカ豚コレラは2005年以降、世界で59の国と地域で発生が確認されている(11月10日現在、農水省調べ)。国際獣疫事務局(OIE)の報告によると、発生件数は飼養豚と野生のイノシシを合わせ、少なくとも3万件を超える。日本では、飛行機で来日した外国人が持ち込もうとした肉製品から、ウイルスの遺伝子が検出された例はこの1年間で80件を超え、水際での警戒が強まっている。
アジアでは18年8月に中国で感染が確認されて以来、11の国と地域に拡大した。OIEには12月8日時点で、豚の飼養施設と野生イノシシの発生を合わせて約6500件の報告があった。直近では韓国で9月中旬に拡大。飼養豚は10月上旬で発生は止まっているが、12月に入っても野生イノシシでの発見が続いている状況だ。
アジアから日本への航空便では、旅客の持っていた肉製品からアフリカ豚コレラのウイルス遺伝子が見つかる事例が増加している。当初、摘発が多かった中国やベトナムの他、ラオスやカンボジア、フィリピンから持ち込もうとした例も出てきた。
欧州では今年、スロバキアやセルビアで新たに感染を確認した。野生のイノシシでは11月だけでもポーランドやベルギー、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニアで陽性の報告があった。ロシアでは12月にも野生イノシシで陽性が出た。
アフリカ豚コレラは、国内で発生している豚コレラと症状が似ているが、全く別のウイルスによって感染する豚やイノシシの病気。有効なワクチンがなく、発生した場合は早期の殺処分による封じ込めしか対処法がない。
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2019年12月10日

[活写] 真の白でお正月
静岡県浜松市で正月飾りなどに使われる「ウラジロ」の収穫がピークを迎えている。ウラジロ科のシダ植物で、その名の通り葉の裏が白い。JA遠州中央の「遠州・山の香部会」に所属する農家のうち10戸が出荷に携わり、各自が所有したり借りたりする山の斜面の草を刈り、自然に生えたものを収穫する。
農家は持ち帰った形の良い葉を大きさで4段階に選別。「大」は50枚、他は100枚ずつ箱詰めし、東京・大田市場や豊洲市場に送り出す。
今季は、昨シーズンの731ケースを上回る1000ケースの出荷を目指し、来年1月まで収穫を続ける予定。同部会役員の金指勝郎さん(44)は「最近はプラスチック製の葉を料理に添えることも多いが、お正月には本物で彩ってほしい」と話す。(釜江紗英)
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2019年12月15日

基盤強化プログラム 生産拡大へ数値目標
政府は10日、安倍晋三首相をトップとする農林水産業・地域の活力創造本部の会合を開き、輸出向けの産地形成や担い手不足などに対応する「農業生産基盤強化プログラム」を決定した。輸出拡大をにらんだ和牛生産の倍増や水田農業の高収益作物産地500カ所創設などの新たな数値目標を設定。2019年度補正予算や20年度予算に達成に向けた経費を計上するが、万全の財源が確保できるかが問われる。
和牛倍増 加工野菜の需要奪還
安倍首相は会合で「安心で安全な日本の農林水産物が世界に羽ばたくチャンスは今後ますます広がっていく」と強調。輸出拡大や先端技術を活用したスマート農業の推進には「しっかりとした生産基盤が欠かせない」との認識を示した。
江藤拓農相は、同日の閣議後会見で「最重要課題の生産基盤強化を目的に取りまとめた」と説明。現在検討している補正予算を含め「切れ目のない対策を講じていく」との考えを示した。
プログラムは11本の柱で構成。日米貿易協定による牛肉輸出枠の拡大などを念頭に「さらなる輸出拡大」を真っ先に掲げた。来年4月に農水省に輸出の司令塔組織を設置し、輸出拡大に向けた新戦略を定める。
和牛生産は、米国や中国への輸出拡大を見込み18年の14万9000トンから35年に30万トンまで増やす目標を設定。具体策として繁殖雌牛の増頭奨励金や和牛受精卵の利用促進などを打ち出した。
水田農業対策では、輸入品が多い加工・業務用野菜の国産化や輸出向けの果樹栽培を念頭に、主食用米から高収益作物への転換を促し、25年度までに500産地の創出を目指す。高収益作物を導入する産地に水田の基盤整備や機械・施設の導入、販路開拓などを一体的に支援する方針だ。
「中山間地域や中小・家族経営も含め、幅広く生産基盤の強化を図る」とも明記。24年度までに地域資源を活用して中山間地域の所得向上などに取り組む250地区を創出することも盛り込んだ。
他に、加工・業務用野菜の出荷量(直接取引分、18年度は98万トン)を30年度までに145万トンに拡大することや、25年までに担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践することなども目標に据えた。
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2019年12月11日
ながら運転厳罰化 年末へ 気引き締めよう
社会問題化した「ながら運転」が厳罰化された。政府は「あおり運転」でも予定する。ルール違反はあってはならない。交通事故は被害者だけでなく加害者にもなり得る。しかも人生を狂わせかねない。慌ただしい年末年始、農村では自動車が生活に欠かせない。気を引き締めてルールの順守を徹底しよう。
自動車の運転中にスマートフォン(スマホ)などを持って通話したり、画面を操作したりする「ながら運転」。同運転が原因の交通事故は増加の一途にある。警察庁によると2018年は2790件で、13年の約1・4倍になった。
ドライバーがメールの確認に意識が向かい横断中の歩行者に衝突、また携帯電話の着信に気を取られて路肩を走る自転車をはねた死亡事故の事例がある。高速道路を運転しながらスマホで読んでいた漫画に気を取られ、前方を走るバイクに追突して犠牲者が出たケースもある。
自動車の運転中に2秒間スマホに見入った場合、時速40キロなら22メートル、60キロなら33メートル進む。その間、画面に意識が集中して周囲の危険を発見できなくなる。「直線道路だから」「一瞬だけ」といった考えで運転中にスマホなどを操作すると、重大事故につながりかねない。事故防止に向けて12月から厳罰化され、違反点数は3倍、反則金も高額になった。事故を起こした場合には一発免停の場合もある。
「あおり運転」も厳罰化の動きが進む。同運転に罰則を設けるため政府は、来年の通常国会に道路交通法改正案を提出する予定だ。通行を妨害する目的で車間距離保持義務や、急ブレーキ禁止などに違反し交通の危険を生じさせた場合を「あおり運転」と定義。違反点数は15点以上で即、免許取り消しとなる。
厳罰化で事故抑止に効果があるか。それは飲酒運転で示されている。東名高速で飲酒運転のトラックが乗用車に衝突して、幼児2人が亡くなるなどの事故が発生。危険運転致死傷罪の創設や、飲酒運転とその助長行為の厳罰化などが講じられた。その結果、飲酒運転による死亡事故は1998年の1268件から、18年には198件まで減っている。
また警視庁は今月、「ながら運転」で摘発されながら、出頭要請にいつまでも応じなかった38人を逮捕したと発表した。
ただ、「ながら運転」の罰則強化について、警察庁や政府広報が特設コーナーをホームページに設置して啓発しているが、ドライバーに周知されているか疑問だ。摘発するだけでなく法制度の変更を知ってもらい、「駄目なものは駄目」と強く訴える仕掛けが必要だ。
トラクターやコンバインに乗って農作業をする場合はどうか。田畑は公道でないため道路交通法の適用は受けない。しかし、スマホを凝視するような使い方は、周囲への注意を散漫にし転落などのリスクを高めるので控えるべきだ。
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2019年12月15日
経済の新着記事
WAGYU欧州で急増 日本産の遺伝資源 流通網の追跡を 畜産技術協会調べ
和牛の遺伝子を持ち、海外で飼養された肉用牛「WAGYU」の生産が欧州で急速に増えていることが、畜産技術協会の調査で分かった。米国やオーストラリアから和牛受精卵や精液が欧州に導入され、欧州産まれの和牛の純粋種や交雑種(F1)が、国境を越えて欧州内や中東に輸出されている。輸出を狙う日本産和牛肉との競合が懸念される一方、世界的な視点で和牛遺伝資源の把握が重要と同協会はみる。
和牛の遺伝資源が、国境を越えて頻繁に往来している実態が浮き彫りになった。1976年に米国へ流出したのを契機に、米国やオーストラリアを起点に各国で急速に生産が増えてきた。
ドイツでは2014年に94頭だった繁殖雌牛が17年に282頭と3倍に拡大。英国、スペインでは、2000年代前半に米国やオーストラリアから遺伝資源が導入され、2000年代後半に動きが本格化した。オランダやニュージーランドからも精液や受精卵が輸入され、受精卵移植(ET)を利用し、急速に増えている。受精卵は1個6、7万円ほど。精液はストロー1本が1450~2900円という聞き取り調査の結果も報告する。
購入した受精卵や精液を基に牛群を造り、14頭もの優良種雄牛をそろえた牧場もある。生産したフルブラッド(純粋種)の雄牛をアラブ首長国連邦(UAE)に売る予定があるという話や、ルーマニアやポルトガルに販売したとの聞き取り調査結果も紹介する。
純粋種、F1の取り組みは多様。出荷月齢は、14カ月齢の子牛で出荷する経営体がある一方、2歳を過ぎてから1年間の肥育期間を設ける経営体もあった。
英国の生産者は、系列レストランや直売所でWAGYU肉を販売し、香港への輸出経験もあった。ロンドン市内では、スペイン産や南米産のWAGYU肉が販売されている。和牛の遺伝資源も牛肉も国を越えて動いている。調査報告では生産・改良・流通を世界規模で「把握することが重要」としている。
調査は「Wagyu肉生産・流通等実態調査事業」。日本中央競馬会の助成を受けて昨年から始まり、英国やスペイン、ドイツで現地調査した。
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2019年12月15日

傷あっても味は抜群 イオン300店応援セール
イオンリテールは13日から、全国の「イオン」「イオンリテール」約300店舗で、今秋の台風で被災した地域の農産物を販売する応援セールを始めた。15日までの3日間、台風被害のあった長野産、岩手産リンゴを中心に、各地の特産品を販売する。「傷など外観はわけありでも、味は抜群」とPRし、消費拡大につなげる。
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リンゴ産地のJA全農長野生産販売部の長谷川孝治専任部長は「傷みがあり市場では売れない商品を提供できる。生産者にとってありがたい」と話す。イベントを主催するイオンリテール農産商品部の石井友和統括マネジャーは「生産地応援として、多くの農産物を販売していきたい」と意気込む。
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2019年12月14日

花の水揚げ正確に 絵文字17種配送ラベルに印字 オークネット・アグリビジネスが開発
インターネットによる花き取引事業を展開するオークネット・アグリビジネスは、切り花の特性に適した水揚げ方法を示すピクトグラム(絵文字)を開発した。同社によると、花き業界では初の試み。商品の配送ラベルに印字し、ひと目で理解できるようにする。知識や経験を問わず、小売店の従業員が誰でも正しい水揚げができるようにし、消費者への長持ちする花の提供につなげる。
切り花に水を吸わせる水揚げは、品質維持に欠かせない工程。水や湯を使う、茎を割る・たたく・焼くなど、さまざまな方法がある。品目や品種、スプレイ咲きかスタンダード咲きかなど、商品ごとに方法も異なる。
同社は、衣服の洗濯表示マークに着想を得て、絵文字開発に着手。尾崎進社長は「正しい方法を分かりやすく伝えれば、誤った方法による商品ロスや、店員の教育負担も減る」と、ニーズを語る。
ひと目で方法を連想できる絵文字を、17種類作った。同社が扱う約140商品を対象とし、商品配送ラベルに印字する。同じく印字した2次元コード(QRコード)を読み取れば、湯揚げにかける時間、水揚げ後の水管理など、より詳しい情報を得られる。
千葉県の生花店「U・BIG花倶楽部(くらぶ)」は、絵文字を参考にブバルディアで水揚げを実験。従来は空切りしていたが、茎を焼いた上で湯に漬ける方法に変えた。「水の含み具合に差が出たためか、葉に張りが出た」と効果を実感する。
開発に当たり、札幌市で生花店「フルーロン花佳」を経営し、各地で品質管理の講習を開く薄木建友氏が監修を務めた。薄木氏は「農家も小売り側の水揚げの仕方が分かれば、出荷時の管理の参考になる」と、産地にも有益な情報となることを期待する。
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2019年12月13日

無洗米「SAKURA RICE」世界に 業務向けで高評価 全農子会社
農畜産物を輸出するJA全農の子会社、JA全農インターナショナルは、業務需要に開発したブレンドの無洗米「SAKURA RICE」(サクラライス)の輸出に乗り出した。世界で日本食の注目が高まる中、業務用を開拓、輸出拡大を狙う。日本産や無洗米による調理作業の効率化が売り。日本食店が多くあるシンガポールで今年から、複数のチェーン店が同ブランドの扱いを始め、手応えを得ている。
これまで同社の輸出米は家庭用主体だったが、業務需要に応えるブランドとして「サクラライス」を企画した。同社によると①国産のブランド価値②品質③無洗米による作業性の効率化──を売りに営業している。品質が一定化し、多くの用途に使えるようにブレンド米とした。東南アジア数カ国で販売している。
シンガポールの海鮮丼チェーン店「哲平食堂」では、現地法人の全農インターナショナルアジアの提案を受け、全7店舗で10月からサクラライスを使う。量は毎月約1トン。山下哲平オーナーシェフは「粒がしっかりして時間がたっても冷えてもおいしい」と強調する。山下シェフが展開するうなぎの専門店など、他店舗でも今後使っていく予定だ。
哲平食堂のフランチャイズを手掛けるYCPダイニングシンガポールのショーン・タン代表は「在住日本人も当地の客も満足している。無洗米は店員の作業が楽で、現地で手に入れにくいので助かる」と評価する。
シンガポールでは哲平食堂の他、日本式の焼き肉レストラン「牛角」9店舗でも、サクラライスの使用が始まった。
全農インターナショナルは「米の輸出を増やすには業務需要を取り込むことが有効。全農のルートを生かし、青果など他品目とセットで販売拡大も期待できる」とサクラライスを起爆剤に、輸出拡大につなげる考えだ。
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2019年12月12日

[活写] こんがりきつね色
北海道滝上町の農家6戸がつくる「滝上町七面鳥生産組合」で、クリスマス向けの薫製作りが最盛期を迎えている。
各農家が7カ月ほど育てた七面鳥の半身を、ハーブや塩などが入った調味液に約2週間漬けて、蒸した後に桜のチップで約3時間いぶす。作業場には、きつね色に仕上がった七面鳥が並ぶ。
同組合の農家は畑作や酪農が経営の中心で、約30年前に冬の仕事として七面鳥の薫製を作り始めた。今では町の名物になり、全国から注文が入る。今年は今月6日に作り始め、18日までに約1800個を仕上げる予定。
組合長の畑作農家、佐々木渉さん(54)は「脂がのっておいしく仕上がった。クリスマスに家族で楽しんで」と勧める。値段は1キロ3000円。(富永健太郎)
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2019年12月12日

新米販売が苦戦 10月支出額前年割れ 消費増税影響か
新米の販売が苦戦している。消費動向が分かる総務省の10月の家計調査で、米の1世帯当たりの支出額が3年ぶりに前年を下回った。米離れに加えて、消費税増税による節約志向が影響したためとみられる。現状の小売価格は前年並みだが、米卸やスーパーは売れ行きの動向を見極めながら、価格の居所を探っている。
小売 動向探る
10月の家計調査では1世帯(2人以上)当たりの米の支出額は2944円と、前年同月を3・9%(実質)下回った。米の支出が年間で最も多くなる時期に販売が鈍化した。
消費税増税前の駆け込み需要の反動によって、消費支出全体が同5・1%減と11カ月ぶりに前年割れする中、軽減税率が適用される米でも減少が見られ、増税による節約志向が影響したもようだ。
米穀機構の11月調査でも、前年と比べた現状の販売数量の指数は、小売りや中食・外食業者が42で基準点の50を下回った。「減った」と回答する業者が多かった。
現在、スーパーなどの小売価格は前年からほぼ横ばいの展開となっている。全国のスーパー約1000店の販売データに基づく農水省公表の精米5キロの小売平均価格(10月)は、前年同月比0・5%安の2031円。秋田「あきたこまち」は1・8%安の1987円、新潟・一般「コシヒカリ」は1・4%高の2202円など小幅な上げ下げはあるが、前年並みの水準が中心だ。
米卸やスーパーの対応はまちまちだ。「購入数が増えにくいので、単価を上げて売り上げ増を目指す」(東京都内の中堅スーパー)との声がある一方「これ以上の価格上昇は消費を低迷させる」と特売で集客を狙う動きがある。「安くしても、大幅には販売が伸びない」(大手卸)との見方もある。
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2019年12月11日

機能性食品 有機JAS… 日本規格を世界へ新たに推進プラン GFVC官民協
農水省やJA全農、食品関連企業で構成するグローバル・フードバリューチェーン(GFVC)推進官民協議会は、食品産業の海外展開を加速させる新たな推進プランを策定した。2020年度から5年間の計画で、機能性食品や有機JASなど日本独自の食品認証の仕組みを海外に普及させることが柱。日本の食品企業が現地で販売しやすくし、日本産の食品や農林水産物の輸出拡大につなげる。
14~19年度の推進プランでは、海外市場の調査などを盛り込んでいた。今回の新プランでは、9の国・地域別に実践する具体的な取り組みを示した。協議会に参画する企業の海外進出数を現状の1・6倍(200社)に拡大する目標も掲げた。
新プランによると、企業進出数が多いタイやフィリピンなどでは、現地で高まる消費者の健康志向への対応を強める。現地に進出した日本企業が、日本と同基準の機能性食品を流通しやすくするため、輸出先国へ、日本に準ずる基準の整備などを働き掛ける。ベトナムなどでは、農業生産工程管理(GAP)や有機JASなど日本型の規格や制度を普及して、日本食品の高付加価値化を進める。
オーストラリアでは、日本と季節が逆転する地理的条件を生かし、日本で栽培されているアスパラガスやメロンなど青果物の生産を拡大。アジア圏など第三国への農産物の通年供給を推進する。
このほか、①複数企業が連携した海外進出計画の策定②日本食材の現地での加工や料理として提供③スマート農業技術の海外展開──で取り組みを支援する。
同省は「日本企業の海外進出支援は、農産物自体の輸出拡大にとって重要」(国際部)と説明。同省では来年4月、政府の農林水産物輸出の司令塔組織となる輸出部が設置されるなど、農産物輸出拡大に向けた動きが加速化している。
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2019年12月11日

機能性に魅力 実需が国産要望 もち麦1年で3・5倍
もち性大麦の2019年産生産量が8000トンを超え、前年産に比べ3・5倍と急増した。健康食品としての認知度が高く、国産志向もあり市場が拡大。機能性成分が多く、各地の気候に適した新品種の導入が進み、実需の要望で産地が形成されつつある。急増してもなお需要が供給を上回っている状況で、国産の増産への期待が高まっている。
19年8000トン超 需要伸び品種充実 産地追い風
農水省がまとめた大麦の農産物検査結果(10月末時点)によると、もち麦の検査数量は8581トン、18年産実績を6000トン上回った。
県別で最も多いのは福井県の2357トン。機能性成分が多い新品種「はねうまもち」を導入し、約800ヘクタールを作付けた。4JAが取り組み、大手精麦メーカーに仕向ける。「メーカーの強い要望に応じ、従来の大麦品種を転換した」とJA福井県経済連。交雑や異品種の混入を防ぐため、産地を限定する。
次いで増やしたのが福岡県。九州が栽培適地の「くすもち二条」を前年の4倍、1243トン生産する。うち、JA全農ふくれんは県内の精麦メーカーの求めで試験的に約70ヘクタール栽培した。20年産はこれを上回る注文があるが、「他の麦類の要望もあり、そうは広げられない」(全農ふくれん)と悩ましい現実もある。
宮城県はもち麦「ホワイトファイバー」を前年の11トンから764トンに拡大。実需の関心が高く、県は種子の生産体制を整え一般栽培に踏み切った。今後も増やす計画だ。
もち麦の普及は、県が奨励品種にして、産地品種銘柄として流通させることが欠かせない。産地品種銘柄の採用は、この3年間で6県から18道県に拡大した。大半が、健康機能性が多い品種への転換だ。ビール麦産地の栃木県は、ビール麦から県育成品種「もち絹香」に替えた。「健康志向で今後の需要が見込まれるため」(生産振興課)だ。
もち麦品種は、3年前の5品種から8品種に増えた。国内最大面積となった「はねうまもち」は農研機構が開発、17年に品種登録を出願した。寒冷地向きで、新潟県、北海道でも展開中。暖地向けは「くすもち二条」「ダイシモチ」がある。各地の気候に適した品種開発も、産地化を後押ししている。
農林水産政策研究所企画広報室の吉田行郷室長は「需要に対応するには産地がまとまって品種を統一したり、十分な生産量を確保したりする必要がある」と指摘する。
もち麦は食物繊維の一種、βグルカンを豊富に含む。腸内環境改善や血中コレステロール低減に効果があるとされる。国内流通量に占める国産の割合は1割に満たない。
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2019年12月08日
輸出3カ月前年割れ 10月農林水産物 目標達成遠く
10月の農林水産物・食品の輸出額は751億円で、前年同月比で5・9%減った。前年同月を下回るのは3カ月連続。2019年の累計(1~10月)は前年同期比0・8%増の7396億円。水産物が落ち込み、緑茶やリンゴなど主要果実も振るわず、伸びが鈍化している。「19年に1兆円」という政府目標の達成は厳しい。
財務省が発表した貿易統計を基に日本農業新聞が調べた。
農林水産物の輸出は例年、収穫期の秋以降、年末にかけて増える傾向にある。しかし、政府目標1兆円達成には残る2カ月で合計2600億円以上の実績が必要。単月で1000億円を超えたことは近年なく、このままのペースでは達成は難しい状況だ。
輸出額の1~10月の累計を品目別に見ると、水産物は、6%減の2313億円と落ち込んだ。輸出先で他国産と競合したり、サバなどで相場が良い国内向けに販売を振り向ける動きがあった。
日本食の人気を背景に、牛肉は25%増の235億円と好調が続いている。日本酒も8%増の192億円、サツマイモは23%増の13億円と伸び幅は大きい。リンゴは8%減の82億円、ブドウは4%減の28億円と落ち込んだ。緑茶も2%減の119億円となった。
輸出額が伸び悩む背景には、最大の輸出先・香港の政情不安定化や、韓国との関係悪化などもあるとみられる。
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2019年12月08日
担い手サミット開幕 きょうまで静岡
第22回全国農業担い手サミットinしずおかが5日、静岡市で始まった。認定農業者ら2000人が参加し、先端技術の導入や、食料自給率の向上、農業の持続的発展などに取り組むとしたサミット宣言を採択した。6日まで。
県、JA静岡中央会などで組織する実行委員会と全国農業会議所が主催。寛仁親王妃信子さまが「農業に携われる方々が絆を深め、活力ある農業の実現に向けて力強く発展することを願います」とあいさつされた。
大会会長を務める静岡県の川勝平太知事は「農業を担う人材不足は全国的な課題になっている」と述べ、スマート農業の開発や普及を進めていくことを伝えた。
県内の担い手4人がメッセージを発表。直接販売に取り組み、経営改善したり、豚の人工授精液生産を続けたりする今後の経営や農業振興への思いを訴えた。事例発表では担い手らが、6次産業化や農産物の海外輸出について議論を交わした。
全国優良経営体の表彰があり、加藤寛治農水副大臣が農林水産大臣賞を受賞した12経営体に賞状を贈った。
6日は、県内7地域の38会場で現地視察と情報交換会を開く。次回の開催は茨城県。
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2019年12月06日