人口減の中山間で試行錯誤 小さな“とりで”限界 多面的機能支援を 島根県津和野町放牧で農地維持

京村さんは夏から秋にかけて山間部で放牧し、農業を守る(島根県津和野町で)

 政府が食料・農業・農村基本計画の見直しを進める中、人口減少や高齢化が進む中山間地域では、基幹産業の農業振興に向け、現状に見合った支援を求める声が相次いでいる。自治体やJA、集落では作業受委託などで農地を維持する他、新規就農者を呼び込むなどして生き残りを目指す。だが、中・小規模の農家にはできることに限界がある。条件不利地の農業現場を追った。(鈴木薫子)

 島根県津和野町一ノ谷集落。今は11戸の住民が暮らすだけで、人口は約50年で3分の1となり、空き家や雑草が生い茂った棚田が目立つ。標高約450メートルで牛200頭を飼育する京村真光さん(66)は「荒廃地が増え、田や山の境目が分からなくなった」とつぶやく。

 京村さんは12代目として先代から農地を受け継いだ。父の代までワサビ栽培が中心だったが、自ら肉牛の牧場を立ち上げた。黒毛和種の繁殖と、ジャージー種と黒毛和種を掛け合わせた交雑種(F1)の肥育を手掛ける。5~11月、計5ヘクタールに繁殖雌牛12頭を放牧し、中山間地ながら規模拡大に挑戦。牛を放棄地に貸し、農地を守るレンタル放牧に協力し、農地を守る活動もする。後継者育成や技術継承に力を入れるが、個人の地域農業の維持に限界を感じている。

 西いわみ和牛改良組合津和野支部は、京村さんの就農時の1973年に約250人いた組合員が今は14人だ。

 中山間地の農地が荒れると多面的機能が減退する。治水機能の低下などは平野部の災害リスクが高まり「災害がいつ起きるか分からない。荒廃地の整備を進めてほしい」と訴える。

 災害が多発する中、多面的機能の維持は農家だけでなく国民的な課題だ。

 「これ以上、農地の受け入れは難しい」。同町とJAしまね(旧JA西いわみ)が出資し13ヘクタールで稲刈りを受託するフロンティア日原の斎藤宣文社長は、こう漏らす。会社設立時にゼロだった利用権設定面積は10ヘクタールに増加。ワサビ加工場と水田を6人で管理するが、負担が増す。

 斎藤社長は「経営はぎりぎり。現在の人員では規模拡大は難しい」と農地集約、大規模化の限界に直面している。地域では新規就農者もいるが、「米の消費減退や米価が不安定で水稲に担い手が集まらない」という。「国の支援は認定農業者が中心で中・小規模農家への支援が途絶えているように思う」と、安定経営ができる支援を求める。

 森林が9割の同町は農地の大規模化が難しい。高齢化率は48%(19年10月)と全国平均(28%)を上回る。不利な条件ばかりだが、町とJAは、担い手育成や新規就農者の確保に注力し、未来を託す。町による生活資金や機械導入などの初期費用の手厚い助成で、12~18年度で計29人が就農。だが、それ以上に離農し、JAや町役場は「農事組合法人などの事業継承など多様な担い手への支援が欠かせない」と話す。
 

おすすめ記事

営農の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは