保険と異なる共済 「助け合いの心」が要 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏

 今、K生命の過剰ノルマによる利用者無視の営業問題が騒がれている。少し前、日本郵政がA社に2700億円を出資し、近々、日本郵政がA社を「吸収合併」するかのように言われているが、実質は「母屋を乗っ取られる」危険がある。K生命がたたかれているさなか、「Kの商品は営業自粛だが、(委託販売する)A社のがん保険のノルマが3倍になった」との郵便局員からの指摘が、事態の裏面をよく物語っている。

 郵政民営化を振り返ると、郵政選挙で死者まで出る悲劇となったが、その実は、米国の金融保険業界が日本の郵貯マネーの貯金と保険の350兆円の運用資金が「喉から手が出る」ほど欲しいから「対等な競争条件」の名目で解体せよと言われ、それに応えたものだった。

 そこまでしたのに、民営化したK生命を見てA社が「K生命は大きすぎるから、これとは競争したくない」と言うので、「TPP(環太平洋連携協定)に日本が入れてもらいたいなら、『入場料』として“K生命はがん保険に参入しない”と宣言せよ」と米国から迫られ、所管大臣はしぶしぶと「自主的に」(=米国の言う通りに)発表した。

 それだけでは済まず、半年後には、全国2万の郵便局でA社の保険販売が宣言された。要するに、「市場を全部差し出せば許す」というのが米国の言う「対等な競争条件」の実態だ。

 郵貯マネーにめどが立ったから、次なる標的はJAマネーの貯金と共済の155兆円の運用資金である。つまり、JA改革の目的が「農業所得の向上」であるわけはなく、①信用・共済マネーの分離②共販を崩して農産物をもっと買いたたく③共同購入を崩して生産資材価格をつり上げる④それでJAと既存農家が潰れたらオトモダチ企業が農業参入したい──。

 先方の思惑は「解体」だから、JAが自主的に推進している「自己改革」とは「峻別(しゅんべつ)」しなくてはいけない。日米貿易協定の今後の協議と絡んで事態は予断を許さない。

 また、今回の騒動で、改めて保険と共済の違いを考えさせられた。災害補償の農業共済も含め、共済はまさに相互扶助の核であり、共助・共生組織としての協同組合が頑張って、信頼を得ていることを示す重要なバロメーターである。農協・漁協・生協などの共済の普及推進でも目標を設定して取り組んでいる。

 しかし、共済は「助け合いの心」で、農家・漁家や地域のみんなの命と暮らしを守るために頑張っている、という使命と誇りを常に忘れなければ、K生命たたきのような謀略には負けない。

 米国は、日本の共済に対する保険との「対等な競争条件」を求めているが、保険ビジネスと互助の共済は原理が違うのだから、それは不当な攻撃である。命と暮らしを守る懸命の努力を国民に理解してもらえるか否か。最後のとりでは「助け合いの心」である。

おすすめ記事

コラム 今よみ~政治・経済・農業の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは