島根県出雲市の荒神谷遺跡から出土した銅剣を見た

 島根県出雲市の荒神谷遺跡から出土した銅剣を見た。日本書記成立1300年を記念し東京国立博物館で開催中の特別展「出雲と大和」▼紀元前2~同1世紀の遺跡から358本が発掘された。いずれも長さ約50センチ、重さ約500グラムで、一括生産とされる。特別展ではこのうち168本がずらり。圧巻である。同県雲南市の加茂岩倉遺跡から出土した銅鐸(どうたく)も展示する。史上最多の39個が確認された▼スサノオを祖とする「出雲王朝」が弥生時代に実在していた。これらの青銅器などを根拠に10年前、新たな説を唱えたのが哲学者の梅原猛氏。著書『葬られた王朝』(新潮社)では、その子孫オオクニヌシの時代には日本海沿岸から近畿、四国、山陽まで支配下に置いたとみる▼しかし内部分裂などで国は衰退、後のヤマト王権で軍事を担う物部氏の祖先に滅ぼされた可能性にまで筆が及ぶ。これが「国譲り神話」に投影されたという。疑問視する向きもあるが、大胆かつ緻密な論証にひかれ銅剣が見たくなった。梅原氏は1970年発表の論考で、国譲りなど出雲神話は架空と説いた。それを40年後に否定。「(学者は)自説といえども厳しく批判しなければなるまい」と記す。潔い▼「過ちては則(すなわ)ち改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」。政治家にも必要な資質である。
 

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