スマート農業普及 課題の克服 農家視点で

 日本農業新聞の調査で、国が進めるスマート農業に対する生産現場の課題が浮き彫りになった。ロボット農機や設備、装置が高価で、中山間地など「地域の壁」も立ちはだかる。“夢の農業”への期待度は高いだけに、現場視点をしっかり反映していく必要がある。

 調査は、農水省が2019年度から始めたスマート農業実証プロジェクトに参加する全国69グループにアンケートを実施、52グループが回答した。

 実証の成果では「労働時間が短縮した」「農作業の疲労度が軽減できた」が最も多かった。北海道の大規模水田作では、自動給水栓の導入で毎日の水管理がなくなったと評価。ドローン(小型無人飛行機)防除で作業時間が短縮したとの声もあった。自動運転で常に作業に集中し続ける必要がなくなり、軽労化につながったという感想も多い。トラクターに装備された運転補助システムの効果が大きい。

 一方、思ったほどの労力軽減・省力化の効果がなかったとの意見もあった。無人運転でも安全のため常時監視が必要で拘束されるためだ。農場間の移動に人員が必要だったり、自動運転に必要な移動基地局を設置したりする手間がかかる。

 スマート農業は安倍政権が掲げる「攻めの農業」に位置付けられ、実証関連予算は初年度が66億円、2年目の20年度は実証地区を増やし予算案で80億円近い大型プロジェクトだ。現場の課題を丁寧に吸い上げ、克服に取り組まなければならない。

 課題の一つが費用対効果。収量コンバインや無人トラクターは1000万円以上、自動給水栓は十数万円、他に通信費もかかる。アンケートでは機械や資材の価格引き下げを求める声が多い。農機が高価で中山間地では導入が難しいと指摘する。リースやシェアリングなど共同利用の仕組みが求められる。

 スマート農業は作業や収量などを記録し、経営の“見える化”で増収、高品質化、作業を効率化する。アンケートでは新たに加わったデータ入力作業の負担感が強かった。音声入力など新技術の実用化が急がれる。

 農水省は、スマート農業で労力不足を解決し、熟練者や篤農家の技術を若手農家に継承でき、規模拡大と高度な農業経営が可能になると描く。しかし、技術を導入すれば現状の課題が全て解決するわけではない。先端技術の普及には大区画化などの基盤整備を進めていかなければならない。新たな技術を使いこなせる農家の育成、JAや普及指導機関の体制も欠かせない。中山間地などの条件不利地がスマート農業から取り残されないことも大切だ。

 課題は山積だが、新規就農者や多様な担い手の育成、若年世代の取り込みなど地域農業の活性化につながる技術として期待が高い。地域農業が魅力的になるよう農家は、課題や要望を行政やメーカーなどに伝え、自ら育てていかなくてはならない。
 

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