コロナと地方創生 教訓生かし循環経済へ

 政府は、地方創生に向けた2020年度の基本方針を7月中に閣議決定する。新型コロナウイルスの影響で、交流や祭りなど、これまで通りの地域づくりが難しい状況にある。地域ごとに、現状把握と課題整理を官民一体で丁寧に行い、解決への取り組みを国が支援していく必要がある。

 「まち・ひと・しごと創生基本方針」の原案では、リモートワーク(職場以外での勤務)の支援などで地方移住を後押しし、東京一極集中の是正を目指すとした。新型コロナの感染拡大で農山村への関心が高まっていることを踏まえた。都市だけでなく地域経済にも深刻な影響が出ている点にも言及。地方オフィス開設の推進や、地方国立大の定員増による人材育成の強化も盛り込んだ。行政のIT化やキャッシュレス化も進める。

 情報通信技術(ICT)などインフラ整備を中心とした対策だけでは、コロナ禍の中での地方創生には限界がある。地域づくりはこれまで人と人が会って、交流を広げ、関係を育むことを基軸としてきた。新型コロナは、それを避けなければならない感染症だ。対面は、ビデオ通話などでは代替できない意義がある。ICTなどを使いこなせず、孤独を深める高齢者らがいることも忘れてはならない。

 コロナ禍でイベントや集会、祭りを断念する地域が多い。カフェや農家民宿など、人を呼び込むことで経営を成り立たせてきた事業の継続も難しくなってきている。交流を基軸にするなりわいは都会からの移住者が得意とし、各地で実践する。定住への芽をコロナ禍が摘んでしまう危機に直面する。

 一方で、感染拡大に伴って在宅勤務が広がり、農山村に関心を寄せる都市住民が現実的に移住を検討できるようになった。仕事を変えなくても移住できる可能性が高まったからだ。こうした人々を農山村が受け入れていくことが重要だ。

 「コロナ禍は地方移住を増やすビッグチャンス」(政府関係者)との声がある。しかし、地域の中には、都会からの訪問者や移住者らを歓迎する人と、感染拡大に危機感を持つ人の両方がいる。地域が抱える複雑な感情の問題を棚上げし、移住者の数の増加だけにとらわれては地方創生は一過性になる。

 コロナ禍の中での地方創生施策の検討では、感染リスクや地域経済・社会への影響などが異なり、地域ごとに実態と課題を把握することが重要だ。対処療法ではなく、コロナ禍の教訓を踏まえて、感染防止と、コロナ後を見据えた中長期の両方の視点で地域づくりビジョンの再構築を進めたい。自治体や、JAなどの組織・団体、企業が一体で考えることが欠かせない。

 「コロナだからできない」ではなく、未来への展望を考える時期と捉えたい。グローバル化や大規模化など経済の在り方を見直し、地域内での循環型経済を取り戻す契機にもなる。
 

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