GM小麦認可足踏み 主力輸出先が反発 アルゼンチン

 アルゼンチン政府が世界に先駆けて明らかにした遺伝子組み換え(GM)小麦栽培認可の方針は、足踏みを強いられそうだ。8日の正式発表以来、主力輸出先であるブラジルなどから反発の声が上がり、商業栽培の見通しが立たない。トウモロコシや大豆とは異なり、人間が直接食べる小麦のGM実用化の試みは、これまでも数多くの壁が立ちはだかってきた。

 GM小麦を開発したアルゼンチン企業によると、GM小麦は、ヒマワリ由来の遺伝子を組み込んだ。干ばつ時に通常の小麦に比べて2割の増収が期待できる。世界各地で干ばつが頻発する中、小麦農家には朗報だという。

 しかし、政府の認可方針が発表されると、国内外から懸念の声が湧き起こった。同国最大の小麦輸出先であるブラジルの小麦業界団体は、正式に反対声明を出した。「調査では製粉業者の85%はGM小麦に否定的。90%は、購入先をアルゼンチンから変更すると答えている」として、商業栽培を見合わせるよう求めた。
 

国際社会への影響 限定的


 GM小麦の研究開発は、米国などで1990年代から本格的になった。当時のモンサント社(2018年にバイエル社に買収)などが試験栽培にこぎ着けたものの、商業栽培されることはなかった。家畜の餌や搾油に回ることが多いトウモロコシや大豆に比べ、人間が直接食べる小麦や米のGMは、消費者の抵抗感が強い。GM小麦の商業化に最初に立ちはだかった壁は、毎年数百万トンを輸入する日本だった。製粉業界団体幹部が03年、米メディアで「GMが安全かどうかではなく、日本の消費者が受け入れない以上、米国産小麦は市場を失うだろう」と警告。大のお得意さまからの反発で、米国内の推進熱は急速にしぼんだ。

 しかし、開発の追い風が09年に吹く。07~09年の需給逼迫(ひっぱく)で小麦など国際食料価格が大幅に上昇。米国、カナダ、オーストラリアの主要な生産者団体が足並みをそろえ「GM小麦の商業化を進めよう」と共同声明を発表した。背景には、GMが当たり前のトウモロコシや大豆に比べ、小麦の生産性向上が大きく立ち後れているという不満があった。

 日本の小麦の大半はこの3カ国から輸入している。食料危機で発言力が強まった輸出国側が、GM小麦の開発を一気に軌道に乗せようとした。研究投資を縮小していたモンサント社も、再び力を入れる方針を表明した。

 ところが、再び推進側に逆風が吹く。13年にモンサント社の除草剤耐性GM小麦がオレゴン州の農場で見つかった。05年までの7年間、同社が試験農地で隔離栽培していたものが、何らかの理由で流出したとみられる。

 モンタナ州やワシントン州でも同様の事件が相次ぎ、輸入国がそのたびに輸入停止するなど、混乱を招いた。需給の逼迫が長続きしなかったこともあって、輸出国側は態度を軟化させ、GM小麦熱は再び冷めた。アルゼンチン政府の決定も、ブラジルで認可されるまでは種子普及を認めない方針。現地報道によると、GM小麦の商業化の見込みは立っておらず、国際社会へのインパクトは限られたものとみられる。(特別編集委員・山田優)
 

おすすめ記事

経済の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは