距離忘れ刻む交流 関係人口づくりオンラインで “リアル訪問”の布石に
2020年11月05日

タブレット端末に向かって地域を紹介する中村さん(中)。画面にはオンラインで参加する東京の学生の顔が映る(群馬県片品村で)
新型コロナウイルスの影響で人の往来が難しくなる中、都市に住みながら農山村に関わる「関係人口」を生み出すため、インターネットを介した「オンライン交流」から始める地域が出てきた。現地に訪問できなくても、画面上で対話し、地元の生の声や農村風景の映像を届けて愛着を深めてもらう。布石を打つことで、関係人口を確保する試みだ。(石原邦子)
川沿いを歩き、草花を見つけると立ち止まってタブレット端末のカメラを向ける。「これはタケニグサ。村の子どもが手折って遊ぶ草ですよ」。説明する相手はそこにいない。オンラインで、遠隔地にいる相手に映像と音声を届ける。
群馬県片品村で、地域おこし活動に携わる中村茉由さん(31)と地元農家の星野学さん(42)が考案したオンラインツアーの一幕だ。参加したのは、中村さんが主宰する片品村地域おこし研究会と交流する成蹊大学経営学部(東京都武蔵野市)の学生7人。コロナ禍で学生が来られないため企画した。
学生は村から100キロ以上離れた東京にいながら、画面越しに村の自然を楽しんだ。参加した佐藤魁さん(20)は「映像や会話に手作り感があって、一緒に散歩している気分になれた。早く村に行きたい」と期待を膨らませる。
村の若者の多くは高校卒業後、地域を出ていく。村の高齢化率は39・6%。中村さんは「若者がいないと地域に元気が出ない。ただ、都市から現地に来て交流するのは今は難しい。まずはオンラインで村を知ってもらってファンを増やしたい」と、交流を続けていくことを重視。今後は移住希望者向けの企画も考えている。
熊本県五木村で特産品販売などを手掛ける企業、日添は、全国の地域おこし協力隊員らと協力し、各地の特産品に地元住民とのオンライン交流などを加えた商品「#旅するおうち時間」を考案した。コロナ禍で減った観光客数を回復させるには、実際に訪れてもらわない形で地元の魅力を知ってもらう必要があると考えた。
全国6地域が参加し、これまでに600セットを販売。オンライン交流には延べ300人が参加し、実際に現地に足を運んだ人もいるという。同村は地元産の豆乳や蜂蜜などを送り、オンラインで豆乳の特徴や村の暮らしを紹介。「ミツバチの巣箱を見に行きたい」「一緒に事業をしたい」といった声が届いた。
同社代表の日野正基さん(33)は「顔を合わせて話すと一体感が生まれる」と実感。オンライン交流参加者を対象に、農業体験などを盛り込んだ地元案内ツアーを準備する。
同村は人口減が進み、現在は1000人程度。日野さんは「オンライン交流をきっかけに村を深く知ってもらい、いずれは移住する人が出てきてほしい」と期待する。
関係人口に詳しい法政大学現代福祉学部の図司直也教授は、オンライン交流について「顔を合わせた対話は、互いをよく知る機会になる」と評価。受け入れ側にはニーズを把握する場になり、訪問する側も交流のイメージがより明確になるといった利点を挙げる。「受け入れ側には、地域を客観視し、魅力を掘り起こし、伝えることができる人材が必要」と指摘する。
川沿いを歩き、草花を見つけると立ち止まってタブレット端末のカメラを向ける。「これはタケニグサ。村の子どもが手折って遊ぶ草ですよ」。説明する相手はそこにいない。オンラインで、遠隔地にいる相手に映像と音声を届ける。
群馬県片品村で、地域おこし活動に携わる中村茉由さん(31)と地元農家の星野学さん(42)が考案したオンラインツアーの一幕だ。参加したのは、中村さんが主宰する片品村地域おこし研究会と交流する成蹊大学経営学部(東京都武蔵野市)の学生7人。コロナ禍で学生が来られないため企画した。
学生は村から100キロ以上離れた東京にいながら、画面越しに村の自然を楽しんだ。参加した佐藤魁さん(20)は「映像や会話に手作り感があって、一緒に散歩している気分になれた。早く村に行きたい」と期待を膨らませる。
村の若者の多くは高校卒業後、地域を出ていく。村の高齢化率は39・6%。中村さんは「若者がいないと地域に元気が出ない。ただ、都市から現地に来て交流するのは今は難しい。まずはオンラインで村を知ってもらってファンを増やしたい」と、交流を続けていくことを重視。今後は移住希望者向けの企画も考えている。
熊本県五木村で特産品販売などを手掛ける企業、日添は、全国の地域おこし協力隊員らと協力し、各地の特産品に地元住民とのオンライン交流などを加えた商品「#旅するおうち時間」を考案した。コロナ禍で減った観光客数を回復させるには、実際に訪れてもらわない形で地元の魅力を知ってもらう必要があると考えた。
全国6地域が参加し、これまでに600セットを販売。オンライン交流には延べ300人が参加し、実際に現地に足を運んだ人もいるという。同村は地元産の豆乳や蜂蜜などを送り、オンラインで豆乳の特徴や村の暮らしを紹介。「ミツバチの巣箱を見に行きたい」「一緒に事業をしたい」といった声が届いた。
同社代表の日野正基さん(33)は「顔を合わせて話すと一体感が生まれる」と実感。オンライン交流参加者を対象に、農業体験などを盛り込んだ地元案内ツアーを準備する。
同村は人口減が進み、現在は1000人程度。日野さんは「オンライン交流をきっかけに村を深く知ってもらい、いずれは移住する人が出てきてほしい」と期待する。
地域伝える人材必要 法政大学 図司直也教授
関係人口に詳しい法政大学現代福祉学部の図司直也教授は、オンライン交流について「顔を合わせた対話は、互いをよく知る機会になる」と評価。受け入れ側にはニーズを把握する場になり、訪問する側も交流のイメージがより明確になるといった利点を挙げる。「受け入れ側には、地域を客観視し、魅力を掘り起こし、伝えることができる人材が必要」と指摘する。
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秋田ぶっかけ生姜(しょうが)大根 JAあきた白神
秋田県のJAあきた白神のブランドネギ「白神ねぎ」を100%使った商品。県産食材の商品を手掛けるフルゥール(秋田市)が開発した。細かく刻んだネギとダイコンの歯応えがや病みつきになり、食欲のないときも食が進むと好評だ。
しょうゆベースのたれに刻んだ昆布とショウガがアクセントになっている。そのまま食べても熱々のご飯に掛けてもおいしい。冷ややっこやチャーハンと合わせても楽しめる。
JA農産物直売所みょうが館や、県内の道の駅などで土産品として人気だ。1袋(150グラム)540円。問い合わせはJAあきた白神生活課、(電)0185(58)2154。
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2021年01月14日

11月 農産物輸出6%増 5カ月連続で回復 家庭需要開拓が鍵
農林水産物・食品の2020年11月の輸出額は889億円で、前年同月から6%増えたことが農水省のまとめで分かった。前年を上回るのは5カ月連続。牛肉が家庭用需要に支えられるなど新型コロナウイルス禍で低迷していた品目が一部回復に向かっている。感染再拡大で外食需要の回復が当面見込めない地域もあり、家庭用需要も含めた開拓が重要になっている。
牛肉は13%増の32億円。国・地域別では米国が2・5倍の5億円。香港、台湾、シンガポールなど主要輸出先で前年を上回った。
JA全農は、米国に現地企業と共同出資し設立した牛肉加工会社で、消費者向けカット商品を販売している。「コロナ禍で和牛の外食需要は減ったが、インターネット販売は好調」という。牛肉の輸出拡大に向けて、ステーキなどで使われる高級部位以外も含めた販路開拓が鍵になっている。
畜産物は鶏卵、豚肉の伸びも大きい。低迷していた日本酒も62%増の31億円と前年を大きく上回った。
一方、援助用を除く米は、1%減の6億円と前年を割った。アジアで業務用需要が回復傾向にあり10月は前年を大きく上回っていたが、11月は苦戦した。リンゴは15億円で34%減となった。青森県によると、最大の輸出先の台湾で南半球産の在庫が多く残っていたことなどが影響したという。
1~11月の累計額は8215億円で前年同期から0・2%減と、前年水準まで回復してきた。ただ、12月は欧州で再び飲食店の営業が規制されるなど新型コロナの影響が再拡大している。政府は30年に5兆円まで増やす目標を掲げるが、20年は1兆円の到達も厳しい情勢だ。
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2021年01月15日
豪州と米国 市民農園ブーム コロナ禍契機に 食材自給 注目集める
新型コロナウイルス禍を契機に、海外で市民農園が注目されている。物流が混乱しても自給自足をすれば食材調達が可能だからだ。政府支援が加わり、今後はさらに拡大しそうだ。オーストラリアと米国の事例を紹介する。
オーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州。広さ5000ヘクタールに上る自然保護地区ウエスタンシドニーパークランズで、市民農園が徐々に増えている。州の委託で保護地区を管理するウエスタンシドニーパークランズ財団がコロナ禍対策として推し進めていることが背景にある。
同財団は、2006年に地区内の13・2ヘクタールを農地に転用し始めた。16都市から訪れた市民がキュウリなどを栽培し、同州シドニー市内の直売所などで販売。コロナ禍の拡大以降はスーパーの品ぞろえが悪かったことがあり、近隣の消費者が直売所に殺到。売り上げは通常の20倍に増えた。同財団は今後、さらに52ヘクタール分を拡大する予定だ。
食品システムに詳しい同国メルボルン大学のレイチェル・キャリー教授は「自然災害や供給チェーンの混乱に備え、都市は保険政策として都市農業能力を高めるべきだ」と指摘する。
米国東部のシアトル市では、主に黒人と先住民族の間で都市農業が流行。失業者や生活困窮者にとっての自給自足手段として広がっている。
きっかけは、黒人差別抗議運動(ブラック・ライブズ・マター=BLM)を主導する社会活動家のマーカス・ヘンダーソン氏が、小さな野菜畑を作ったことだ。畑は、20年6月に機動隊とデモ隊の衝突が頻発していたキャピトルヒル自治区(デモ隊が自治を宣言した地域)の公園内にある。同氏はBLM問題を巡り警察や機動隊と激しくぶつかり合う暴力的な日々を問題視し「殴り合いよりも、差別や失業で苦しむ黒人を助けるのが優先だ」と行動を起こした。
同氏に賛同する黒人農家らが「本格的に都市住民のための農業を興そう」と集まり、シアトル市からキング牧師記念センター敷地内の空き地を正式に借り入れた。農機具や資材はインターネットで市民から寄付を募って購入。「自分の食料を自分の手で作ろう」をスローガンに、人種差別やコロナ禍で失業した生活困窮者の参加を呼び掛けた。現在、約1ヘクタールの作業に430人以上が参加しているという。
収穫する農産物は、参加者の家族に加え、市内の生活困窮者にも配る予定だ。同氏は「シアトル市内では9人に1人が生活に困窮している。まず畑の周辺7000戸の困窮家庭のうち約半数の3500戸に提供できる量は収穫できるはずだ」とみている。
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2021年01月17日

[未来人材] 26歳。大農家・父の背中追い若手6人で新会社設立 トマトの概念変える 滋賀県甲賀市 今井大智さん
滋賀県甲賀市の今井大智さん(26)は、同じ農業生産法人で働く20代の若者だけで会社を立ち上げ、先端技術を駆使した高糖度トマト栽培に取り組んでいる。“本業”の傍ら、早朝や夜などの勤務時間外を使って、仲間とトマト栽培に明け暮れる日々を送る。若手だけで何か新しいことに挑戦したい――。農業の魅力に取りつかれた若者が新たな一歩を踏み出した。
「これはもう、トマトの形をしたあめ玉だ」。“異次元”の甘さが特徴の自慢のトマトについて、今井さんは笑顔で話す。
実家は県内でも指折りの大農家だ。100ヘクタールを超える広大な農地で米や野菜を生産する他、市内で農産物直売所やレストランも経営する。ただ「元々農業にそれほど関心があるわけではなかった」と振り返る。
転機となったのは大学2年生の時。授業で訪れたインドだった。餓死した人の遺体が街中に横たわる光景が今でも脳裏に焼き付く。「がらりと世界観が変わった」。食のありがたみを実感した。食を供給する農業の大切さにも気付かされた。
大学卒業後は1年間、専門学校で農業の基礎を学んだ。23歳で実家の農業生産法人に就職した。
就職後は、法人の代表でもある父の背中を追うようになった。父は29歳の時には地域の後継者仲間をまとめ上げ、麦や大豆に特化した法人を立ち上げ、新たな事業を手掛けていた。「何か新しいことに挑戦したい」という思いが、常に頭の片隅にあった。
そんなとき、農産物の甘味を最大限引き出す「アイメック農法」に特化した高機能ハウスを、地域の事業者が手放すという話が舞い込んだ。
昨年10月、自身を含め法人で働く20代の若手6人で新会社「ROPPO(ロッポ)」を設立。各メンバーが踏み出す「1歩」を足した「6歩」にかけて名付けた。ハウス1棟で1200本のトマトを栽培。これまで通り法人で働きながら、勤務時間外をフル活用して運営する。
高級果実のようにトマトを箱詰めして贈答用に──。「“異次元”の甘さを武器にトマトの概念を変えたい」。販路開拓や会社運営など慣れないことばかりだが、夢に向かって突き進む。
農のひととき
新会社のインスタグラムアカウントは、ほぼ毎日更新。「消費者は生産者の顔を見て農産物を買う」との考えから、消費者への情報発信を重視する。投稿する写真は週末に撮りだめする。手描きのイラストなども織り交ぜ“映え”を意識する。
現在は、「3秒で友達になれる」といったキャッチコピーと共にメンバーを紹介、ファンづくりに取り組んでいる。
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2021年01月17日

鳥インフル対策徹底を リーフ作成 農水省
農水省は高病原性鳥インフルエンザの多発を受け、養鶏農家に注意喚起するリーフレットを作成した。今季は渡り鳥の飛来地の他、道路や公園、森などにもウイルスが多量に存在するとし、飼養衛生管理の徹底など、対策への意識を高めてもらうのが狙い。都道府県を通じて配布し、同省のホームページなども活用して周知する。
今季は昨年11月以降、過去最多の15県36例の高病原性鳥インフルエンザの発生を確認し、殺処分羽数は合計で約600万羽に上る。また死亡野鳥や、池・ダム湖の水など10道県27件の環境試料からも高病原性のウイルスが検出されている。
リーフレットでは、今季は「多量に鳥インフルエンザウイルスがあちこちに存在」すると指摘した。特にハヤブサやフクロウの死亡個体からもウイルスを検出。鳥や小動物を捕食する猛禽(もうきん)類の感染は、環境中のウイルス濃度が高まっている指標になるという。また、今季のウイルスは感染してから死亡するまでの期間が長い傾向がある。リーフレットでは養鶏農家が早期発見できるよう症状も紹介。とさかのチアノーゼや顔面の浮腫性腫脹(しゅちょう)、突然死などを写真で示した。
対策では、ウイルスを農場内に入れないことを強調。手指消毒や車両消毒、防鳥ネットの管理など全従業員による飼養衛生管理の徹底を促した。同省は「国の支援も活用し、防疫対策をより強化してほしい」(動物衛生課)と話す。
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2021年01月15日
新型コロナの新着記事

緊急事態下、切り花低迷 葬儀縮小し輪菊平年の半値
政府の緊急事態宣言再発令を受け、業務や仏花で使う切り花の相場が大きく下落している。主力の輪菊は平年の半値近くで、カーネーションやスターチスなど他の仏花商材も低迷する。都内卸は「葬儀の縮小が加速して業者からの引き合いが弱く、小売店の荷動きも鈍い」とし、販売苦戦の長期化を警戒する。
日農平均価格(全国大手7卸のデータを集計)を見ると、年明けから軟調だった輪菊の相場は、東京など4都県で緊急事態宣言が発令された後の11日以降、一段と下げが進んだ。11都府県への拡大が決まった13日には1本当たり28円と、昨年4月の宣言発令時以来、9カ月ぶりに30円を割った。15日は35円とやや戻したが、平年(過去5年平均)比28円(45%)安と振るわない。
15日の市場ごとの相場も、前市から小幅に反発した東京こそ39円だったが、大阪と名古屋で27円となるなど、大消費地を抱える宣言発令地域での低迷が目立つ。
輪菊の主産地のJA愛知みなみは「上位等級の値が付かず、平均すると平年より1本当たり30~40円安い。需要の落ち込んだ状況が続けば、来年度は定期契約で販売できる量が減り、作型の変更も検討しなければならない」と訴える。
黄菊の主産県のJAおきなわも「直近まで冷え込みが強く、例年より出荷量が少ないのに相場は上向かない」と、白菊の低迷が黄菊にも影響していると実感する。
スーパーの加工束向けも低調だ。「花持ちする時季で、店の仕入れも進まない」(都内卸)。スターチスは平年比3割安、カーネーションやLAユリは同2割安など、仏花の相場低迷が深刻だ。切り花全体の平均価格も56円と過去5年で最安水準で推移。入荷量は平年以下だが、行事の中止や縮小で需要が減少し供給過多となっている。
別の都内卸は「輪菊は供給量が落ち着けば相場をやや戻す。しかし需要は当面戻らないので、安値の展開は避けられない」と、苦しい販売環境を見通す。
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2021年01月16日
[新型コロナ] 緊急事態追加発令 7府県、栃木・福岡も 政府決定
政府は13日、新型コロナウイルス感染症対策本部を首相官邸で開き、コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象に栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県を追加することを決めた。発令済みの首都圏4都県と合わせ11都府県に拡大。発令地域の人口は7000万人超で、飲食店への営業時間短縮要請による農産物の需要減少などの影響が広がる可能性がある。
全国拡大には慎重
首都圏4都県以外の都市部でも感染拡大が止まらないことを踏まえた。……
2021年01月14日
[新型コロナ] 営業短縮飲食店の取引先 最大40万円支援
新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の再発令を受け、梶山弘志経済産業相は12日の閣議後記者会見で、営業時間の短縮要請に応じた飲食店の取引先に給付金を支給すると発表した。時短の影響などで1月か2月の売上高が前年同月比で半分以下に減った場合に、中堅・中小企業は40万円、個人は20万円を上限に支払う。JAや卸売業者などを通じて間接的に取引する農家も対象に想定する。……
2021年01月13日

緊急事態宣言 ガイドライン順守を コロナ感染防止で農水省
農水省は緊急事態宣言の再発令を受け、農家に新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた業種別ガイドラインの順守を呼び掛ける。ガイドラインは大日本農会のホームページに掲載。日々の検温や屋内作業時のマスク着用、距離の確保などの対策をまとめている。感染者が出ても業務を継続できるよう、地域であらかじめ作業の代替要員リストを作ることも求める。
ガイドラインは①感染予防対策②感染者が出た場合の対応③業務の継続──などが柱。予防対策では、従業員を含めて日々の検温を実施・記録し、発熱があれば自宅待機を求める。4日以上症状が続く場合は保健所に連絡する。
ハウスや事務所など、屋内で作業する場合はマスクを着用し、人と人の間隔は2メートルを目安に空ける。機械換気か、室温が下がらない範囲で窓を開け、常時換気をすることもポイントだ。畑など屋外でも複数で作業する場合は、マスク着用や距離の確保を求める。
作業開始の前後や作業場への入退場時には手洗いや手指の消毒を求めている。人が頻繁に触れるドアノブやスイッチ、手すりなどはふき取り清掃をする。多くの従業員が使う休憩スペースや、更衣室は感染リスクが比較的高いことから、一度の入室人数を減らすと共に、対面での会話や食事をしないなどの対応を求める。
感染者が出た場合は、保健所に報告し、指導を受けるよう要請。保健所が濃厚接触者と判断した農業関係者には、14日間の自宅待機を求める。保健所の指示に従い、施設などの消毒も行う。
感染者が出ても業務を継続できるよう、あらかじめ地域の関係者で連携することも求める。JAの生産部会、農業法人などのグループ単位での実施を想定。①連絡窓口の設置②農作業代替要員のリスト作成③代行する作業の明確化④代替要員が確保できない場合の最低限の維持管理──などの準備を求める。
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2021年01月09日

[新型コロナ] 緊急事態再宣言 1都3県、来月7日まで 飲食店午後8時まで一斉休校は要請せず
政府は7日、新型コロナウイルス感染症対策本部を首相官邸で開き、東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県を対象に、コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言の再発令を決めた。期間は8日から2月7日までで、感染リスクが高いとされる飲食店などへの営業時間の短縮要請が柱。小中高校の一斉休校は求めないが、外食やイベント需要の減少などで農産物の価格に影響が出る可能性がある。
宣言発令は昨年4月以来2回目。首都圏の感染拡大が止まらず、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)していることを踏まえた。菅義偉首相は対策本部後の記者会見で「何としても感染拡大を食い止め、減少傾向に転じさせるため、緊急事態宣言を決断した」と述べた。
コロナ対策の新たな基本的対処方針では、飲食店に対し、営業時間を午後8時までに短縮し、酒類の提供は午前11時から午後7時までとするよう要請。応じない場合は店名を公表する一方、応じた場合の協力金の上限は、現行の1日当たり4万円から6万円に引き上げる。宅配や持ち帰りは対象外とした。
大規模イベントの開催は「収容人数の50%」を上限に「最大5000人」とする。午後8時以降の不要不急の外出自粛も求める。出勤者数の7割削減を目指し、テレワークなどの推進を事業者らに働き掛ける。
宣言解除は、感染状況が4段階中2番目に深刻な「ステージ3」相当に下がったかなどを踏まえ「総合的に判断」するとした。西村康稔経済再生担当相は同日の衆院議院運営委員会で、東京に関しては、新規感染者数が1日当たり500人を下回ることなどが目安との認識を示した。
政府は対策本部に先立ち、専門家による基本的対処方針等諮問委員会を開き、西村氏が宣言の内容などを説明し、了承された。その後、西村氏は衆参両院の議院運営委員会で発令方針を事前報告した。
政府は昨年4月7日、東京など7都府県を対象に緊急事態宣言を発令し、16日には全国に拡大した。5月25日に全面解除したが、農畜産物では、飲食店やイベントの需要の激減で、牛肉や果実、花などの価格が下落した。
政府は、コロナ対策を強化するため、特措法の改正案を18日召集の通常国会に提出する方針だ。
業務需要減加速の恐れ
緊急事態宣言が再発令されることを受け、流通業界や産地では農畜産物取引への影響が懸念されている。飲食店向けや高級商材はさらに苦戦する様相。一方、家庭消費へのシフトが進んでおり、対象地域が限られることから、前回宣言時ほどの打撃にはならないとの声もある。品目、売り先で影響の大きさが異なる展開になりそうだ。
米は、春先のようなスーパーでの買いだめは現状、起きていない。しかし、飲食店の営業縮小で業務用販売は厳しさが増す見通しで、JA関係者は「今も前年水準に戻り切れていない。在宅勤務が増え、米を多く使う飲食店の昼食需要までなくなる」と警戒する。
青果物は、飲食店の時短営業で仕入れに影響が出てきた。
東京都の仲卸業者は「7日から注文のキャンセルが出た。多くの店が休んだ前回の宣言時ほどでなくても、1件当たりの注文量はがくっと減る」と懸念する。果実は、大手百貨店が営業縮小する方針で、メロンなど高級商材を中心に販売が厳しくなるとの見方で出ている。
鶏卵は加工・業務需要が全体の5割を占めるため、飲食店の時短営業の拡大による販売環境の悪化が予想される。
切り花は、葬儀や婚礼の縮小、飲食店の休業や成人式などイベントの中止で業務需要が冷え込むため、「相場は弱もちあいの展開が避けられない」(花き卸)見通し。長引けばバレンタインデーの商戦に影響するとの懸念もある。
一方、牛乳・乳製品は家庭用牛乳類の販売好調が続く。緊急事態宣言再発令で業務需要はさらに減少する恐れがある。だだ、「前回のような全国一斉休校がなければ加工処理量の大幅な増加はない」(業界関係者)との観測も広がる。
食肉は各畜種ともに内食需要の好調が継続しそうだ。豚肉、鶏肉は前回の緊急事態宣言以降、価格が前年を上回って推移しており「国産は在庫も少なく、引き続きスーパー向け中心に引き合いが強まりそう」(市場関係者)。
和牛は外食から内食へのシフトが進んでおり、「外食向けの上位等級は鈍化するものの、3、4等級は前回のような大きな落ち込みはない」(都内の食肉卸)との見通しだ。
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2021年01月08日

緊急事態宣言 再発令 感染防止徹底を 農作業 通常通り可 需要喚起の対策用意
東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県に緊急事態宣言が再発令された。農家は農作業を通常通りに行えるが、農水省は新型コロナウイルス感染防止のガイドラインの順守を呼び掛ける方針。一方、1都3県の人口は3600万人超で日本の3割を占め、政府は飲食を「急所」と指摘する。外食向けの農産物の需要減も懸念される中、同省は2020年度第3次補正予算などで対策を用意する。
1都3県を含め、農家は前回の発令時と同様、農作業を通常通りに継続できる。農家向けにコロナの感染防止や発生時も事業を継続するための対策をまとめたガイドラインは、大日本農会が定める。 同省は、これに従って3密の回避や手洗い、マスク着用などを徹底してもらいたい考えだ。
コロナ禍で売り上げが落ち込んだ農産物の販売促進のため、同省は3次補正予算で「国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業」に250億円を確保。販促キャンペーン時の食材を通常より安く仕入れられるように補助し、インターネット販売の送料も助成する。
同省は、国産農産物の需要を喚起する「#元気いただきますプロジェクト」「花いっぱいプロジェクト」も展開中だ。
一方、同省は飲食店支援策の「GoToイート」事業については一斉停止を求めず、①プレミアム付き食事券の新規販売の一時停止②食事券やオンライン予約で獲得したポイントの利用自粛の呼び掛け──を検討するよう、都道府県に要請している。6日時点で1都3県を含めて25都道府県が応じているが、期間は知事の判断となる。
前回の緊急事態宣言発令時には、外食での需要が多かった牛枝肉の価格が下落した。同省は3次補正予算で財源を確保し、経営体質の強化に取り組む肥育牛農家に出荷1頭当たり2万円の奨励金を交付する事業を21年度も当面継続する。3次補正予算では、在庫が増えている国産バターや脱脂粉乳の需要拡大に向けた緊急対策も講じる。
牛枝肉価格が再び落ち込めば、最短で6月だった肉用牛肥育経営安定交付金制度(牛マルキン)の生産者負担金の納付再開がずれ込む可能性もある。コロナ禍を受けた資金繰り対策で昨年4月から免除しているが、今年1月以降、月平均の枝肉価格が3カ月連続で1キロ当たり2300円以上となった場合、3カ月後から再開するとしている。
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2021年01月08日

[新型コロナ] 技能実習生 再就労 7割食農分野 「コロナ解雇」受け皿に
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で解雇されるなどした外国人技能実習生を対象に一度限りの職種変更を認める「特定活動」の資格へ移行した約7割が、農業や食品製造業を新たな職種に選び、就労先を見つけていたことが分かった。法務省出入国在留管理庁が調べた。実習生の再就労の実態が明らかになるのは初めてで、世界的な社会・経済不安の中でも「食」を巡る産業が雇用の受け皿となっていることを裏付けた。
外国人技能実習機構によると、政府が緊急事態宣言を発令する直前の2020年3月時点で入国していた、もしくは入国予定だった実習生は計36万6167人。……
2020年12月30日

「公園・緑地大切に」 コロナで都民の6割が実感
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、公園や緑地の重要性を感じるようになった人が6割に上ることが、東京都が都政への意見を聞くために行ったアンケートで分かった。家庭菜園や市民農園で野菜を育てることに興味を持つようになった人も2割を超えた。
調査は生物多様性への考えや新型コロナウイルス感染症拡大に伴う都民の意識の変化を知る目的で実施。都政モニター500人を対象に10月6日までの7日間、インターネットで行い、484人から回答を得た。
新型コロナの感染拡大に伴う自然環境に関する意識の変化を尋ねると、「公園や緑地の重要性を感じるようになった」が61%で最も多かった。次いで「人間と自然環境との適切な距離感を考えるようになった」(29%)、「家庭菜園や市民農園で野菜を育てることに興味を持つようになった」(24%)が続いた。
自然環境や生き物のために心掛けていることでは「マイバッグやマイボトルを利用しプラスチックごみを出さない、食品ロスを減らす」が67%で最多だった。「旬の食べ物や地元産農畜水産物などの食べ物を購入」(40%)する人も多かった。
都農業振興課は「新型コロナウイルスの影響で在宅時間が増え、身の回りの家庭菜園などへの関心や、地元産野菜へのニーズが高まっていると感じている」と話す。
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2020年12月13日
6割コロナ患者対応 経営は依然厳しく 厚生連病院
新型コロナウイルスの感染が再び拡大する中、JA厚生連病院が地域医療で奮闘している。JA全厚連によると、1月~9月末までで全国59の厚生連病院が1072人の新型コロナ入院患者を受け入れた。11月からは連日、重症患者数が最多を更新。全厚連は「受け入れ入院患者数は調査時点より確実に増えているとみられ、職員が懸命に対応している」と訴える。
全国には105の厚生連病院があり、受け入れ実績がある病院は56%に上る。また、……
2020年12月04日

コロナ第3波 年末需要に暗雲 営業縮小で家庭向け拡大焦点
新型コロナウイルス感染拡大の「第3波」襲来で、農畜産物の販売動向は不透明感が強まっている。「GoTo」キャンペーン見直しや都市部で飲食店の営業縮小が広がり、業務用の販売は再び鈍化する気配だ。年末の需要期に向けて、堅調な家庭用で全体を補えるかが焦点となる。
米
米は業務需要の低迷が大きな課題だ……
2020年11月27日