日本人は、昔から身近な花や樹木の色、鳥のさえずりに季節を感じてきた

 日本人は、昔から身近な花や樹木の色、鳥のさえずりに季節を感じてきた▼解け出した雪の下からフキのとうを見つけては、早春を味わい、カッコウの鳴き声に夏を感じた。アキアカネが山から里に下りてくるころは、田んぼの稲も色づき、千鳥の声が冬を告げる。四季折々に、命の鼓動が伴奏する▼日本独自の定型詩・俳句には、季節を示す「季語」が生まれた。春夏秋冬の言葉を使わなくとも、四季が伝わる。「蛍」は夏、「送り火」は秋を表す。季語は「この列島に住み着いた人々の一縷(いちる)の思いが幾重にも絡まり」、いわば「伝承の宝庫」でもある。本紙〈おはよう名歌と名句〉の選者、宮坂静生さんが書いた『季語の誕生』(岩波新書)に学ぶ▼生き物が告げる季節が御用済みとは、寂しい。気象庁は生物季節観測を来年から大きく減らす。動物の初鳴きや初見の観測は全てやめ、梅や桜の開花など6種目に絞り込む。季節の変化に合わなくなったことや、都市化の影響で観測所近くに標本が見つけられなくなったからだという。そのこと自体が、気候の大きな変化を暗示しているかもしれないのに▼北上し続け、東京でも聞こえるようになったクマゼミの「シャワシャワシャワ」。地球温暖化への警鐘にも聞こえる。観測をやめて大丈夫かしら。
 

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